第9話 砦からの依頼と牛料理


 いくらと海についての基礎知識を学んだ翌日、マリアンヌが三人に新しい話を持ちかけた。


 「実は、皆さんにお願いしたいことがあります」


 食事の席で、マリアンヌが真剣な表情を見せる。


 「この砦の食糧庫が底をついてしまいました。特に肉類が全く残っていません」


 ガレンが眉をひそめる。


 「肉がないのか? それは確かに困るな」


 「近くの牧場で【アカウシ】という牛を飼っているのですが、最近【ツノ熊】という魔物に襲われて困っているそうです」


 マリアンヌが地図を広げて説明する。


 「牧場主のオンジさんから、ツノ熊を退治してくれれば【アカウシ肉】を分けてもらえる約束をいただいています」


 クロエが興味深そうに身を乗り出した。


 「アカウシ肉って、どんな味なんだ?」


 「とても美味しいお肉で、この地方の特産品です。柔らかくて、甘みがあって...」


 マリアンヌの説明を聞いて、リナがハッと気づく。


 「もしかして、それを使って【牛丼】も作れるのでは?」


 「牛丼?」


 三人が同時に振り返る。


 「いくら丼と同じように、丼に牛肉を盛った料理よ。きっと美味しいはず」


 フェンガルが尻尾を振りながら言う。


 『それは素晴らしいアイデアだ。いくら丼への理解を深めるためにも、まず牛丼を作ってみるのは良い練習になる』


 ガレンが立ち上がる。


 「よし、決まりだ。ツノ熊退治に行こう。牧場を守り、美味しい肉も手に入れて、牛丼まで作れるなんて一石三鳥だ」


 マリアンヌが安堵の表情を浮かべた。


 「ありがとうございます。オンジさんの牧場は砦から北に半日ほどの距離にあります」


 「ツノ熊ってどんな魔物なんですか?」


 リナが心配そうに尋ねる。


 「普通の熊より一回り大きくて、額に鋭い角が生えています。力は強いですが、鈍重なので戦術次第で勝てるはずです」


 クロエが武器を確認しながら言う。


 「よし、明日の朝一番に出発だ。久しぶりに美味い肉が食えそうだな」


 こうして三人は、いくら丼への道のりで新たな依頼を受けることになった。まさか牛丼がいくら丼理解の第一歩になるとは、誰も予想していなかった。


 その夜、三人は牛丼の作り方について夢中で話し合った。

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