7 公的情報と事実とに違いがありすぎる。
「……書類も何もかも、正式、……
国王陛下の従弟である、侯爵閣下なんだ。
セオドアが、怯えを律するように硬い口調で話す。
自分を抱きしめてくれている彼の腕に、わずかな力が込められた。まるで縋るように。
それに気づいたシャーロットは、セオドアの背中へゆっくりと腕を回していく。
何も言えない、言ってはいけない。
セオ様が話し終えるまで、粗暴で口下手な自分は何も言わないほうがいい。
思ったシャーロットの、言えない代わりになればと、セオドアを緩く抱きしめるように回した腕。
彼女が、シャルが、背中に腕を回してくれること。抱きしめてくれること。
それがセオドアへどれほどの愛おしさと勇気と安堵をもたらすか、シャーロットは気づけない。
けれども「ありがとう、シャル」と言ってくれたセオドアの声は、シャーロットの耳に先ほどよりも柔らかく響いた。
縋るように込められていた腕の力も、少し抜けたように感じられた。
セオ様のためになれたなら、良かったです。
喋ってはいけないからと、シャーロットはセオドアの背中を軽くさすった。
感謝の言葉を口にしようとしたセオドアは、ほんの
今、シャーロットへ向けての言葉を発しようとしたら、声が震えてしまう気がした。
愛おしさと、罪悪感で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます