共犯者の休符
hikari
月に二度の密やかな日常 vol.1
これは、共犯者であるひかりの日常の一コマや、優と過ごすささやかな時間を切り取った短編集です。
月に二度だけの逢瀬や、日常の些細な出来事を通して、二人の関係の温度や距離感を感じていただければと思います。
全体の物語の核心や背徳的な時間とは別の、ちょっと柔らかい“休符”のような一瞬をお楽しみください。
月に二度の逢瀬。優のためにおつまみを作って持っていく。季節ごとの味覚を楽しんでもらいたいから。タッパに詰め、ホテルに着くと二人で食べる。それが小さな喜びで、笑いにあふれる時間でもある。たとえば、タッパがひっくり返ったり、お箸を忘れてコンビニでお弁当を買ったり——そんな些細なハプニングも、私たちにとってはスパイスだ。
実家に帰ると、昔よく遊んだ公園があった。優も同じ頃に遊んでいたという。偶然なのか必然なのか、私たちは知らずに同じ場所で過ごしていたのだ。滑り台の長い公園で順番を待った思い出を優と語り合いながら、その公園がマンションになると聞いたときのショック——それは、優との共通の記憶の価値を改めて実感させるものだった。
月二度の逢瀬のうち、一度は優が夜勤の有給をとってお泊まりする。その日は作業着で来るけれど、ホテルから少し外に出ることもあるため、私は彼に似合いそうな服を持っていくこともある。けれど思いのほか小さくて、優が着るとパツパツで笑ってしまったりすることもある。そんな時間も、私たちの距離を温かく縮めるひとときだ。
ある日、私のお店で予約のお客様の名前が、偶然にも優の奥さんと同姓同名だったこともあった。思わず焦る私に、優はもちろん違うと答えてくれた。日常の小さなドキドキも、私たちの関係の一部として心に残る。
また、優が新しい靴を履いてきた日もあった。息子が履かないから回ってきただけの靴は大きく、サイズが合わない。それを見て少し悲しくなった。家にあった中敷を持参した次の逢瀬では、優が「俺の足そんなに臭いかぁ?」と「え?そんなことないよ」「だって、これオドイーターやもん」笑いと愛おしさが混ざる、日常の一コマだ。
日常のささいな出来事の中で、優との関係は静かに積み重なる。
どれも些細だけれど、優が中心にあることがわかる時間。
それぞれのエピソードは、二人だけのルーティンとして、静かに、でも確かに心に残る。
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共犯者の休符 hikari @hikari-story
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