『ギャル女神』外伝【1000文字以下で読める各話独立短編集】

千央

僕と転校生の彼女(本編第9話まで、読破後推奨)

 僕の名前は天井流星てんじょうりゅうせい。今年、中学に入ったばかり。クラスのいじめっ子は、なんて呼んだりするけどさ。

 でも、そんな時は決まって、隣の家の千秋ちゃん(10歳)が猛然とそいつに体当たりして泣かすんだよね。僕、男としての立場が全くないんだけど……。


 ま、それはそれとして、実は学校で悩みがあるんだ。それは――


「りゅうせ~いく~ん!」


 後ろから響く元気な声。先月、転校してきた女の子だ。


「もぉ!待っててねって言ったのに!」

「ごめんね。他の子と楽しそうに話してて、邪魔しちゃ悪いかなと思って」


 彼女の勢いに少し後退りながら答える。


「そんなこと気にしなくていいのに。さ、帰りましょ?」


 そう言って、当然の様に手を繋いでくる彼女。


「ちょっと、恥ずかしいよ!」

「赤くなっちゃって!か~わいい!」


 悩みはこの彼女のことなんだ。転校初日からその可愛さと人懐っこさ、それに、朗らかな性格で瞬く間に学年一の人気者になってしまった。既に上級生にファンがいるらしく、そのうち、学校一の人気者になっちゃうかも?

 そんな人気者がなぜかやたらと僕に構ってくる。席が隣だから話しかけやすいのは分かるよ。それにしたって、こう毎日、一緒に帰らなくてもいいと思うんだけど……楽しいけどさ。必ず家まで一緒に来て、その度に千秋ちゃんが彼女を威嚇するんだ。お願いだから、体当たりしないでね?

 それから、彼女は自分のことをあまり話さない。家もどこにあるのか教えてくれないし。僕が男だから警戒してるのかな?な~んてね。


◇◇◇


 とある放課後、委員会で遅くなっちゃった時のこと。あの子はさすがに帰ったかなと思っていると、校舎裏の花壇から賑やかな声がする。なんとなく近づくと、彼女が花に手をかざしていた。すると、柔らかな光が彼女を包み、花たちも輝きだす。しおれてた花がみるみる元気になっていく。

 ……!?何あれ?そう思ったその時――


「見ちゃったのね?」


 ゆっくりと振り向く彼女。その表情は中学生とは思えない程、艶っぽい。まるで、美術の教科書に載っていた美の女神のようだった。


「え?な……」


 あまりのことに声が出ない。静かに近づいてくる彼女。そして――


「今のこと2人の秘密にしてね?正体がバレちゃうの、ほんとはダメなんだから」


 彼女はそう口にして微笑んだ。不思議と恐い気持ちはなかった。ただ、彼女はいつかふいにどこかへ消えてしまう。そんな確信めいた予感だけが心に浮かんだ。

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