第3話 |ピンクの肉棒な粘体《Pink Elder Ooze》とリアル世界③

ピンクの肉棒な粘体Pink Elder Oozeとリアル世界③


[newpage]#01 奇跡のギルドAOG

 「オーバーロード」と言う作品で、一番好きだったのが、ぶくぶく茶釜である。21世紀、国家が崩壊し、貧富の差が拡大したことで、脊髄にニューロナノマシンを実装する、人体実験の素材を、企業が大量に用意することができた。


 原作やアニメの中で、主人公モモンガが追い求める理想は、人間種も異形種も許容する、度量の大きさであり、一天万乗のAOGが追い求めた、理想の世界であった。


 分断された超々格差社会・・・リアル世界の滅びは、私自身ぶくぶく茶釜にからすれば、分断されえた社会が生じさせると思っていた。持てるモノも、持たざるモノも、生きる残るのに必死過ぎて、現実と向き合うことを忘れている。


 21世紀であっても、ゴミの回収や屠殺場の仕事は、やりたがるモノはおらず、上下水道を含めたインフラ整備から、人手が無くなることはなかったが、インフラ整備の従事者は減る一方で、人材確保は倫理的に不可能となっていった。


 つまり、高給であっても、従事者が居なければ、業界を維持することができない。従事者の確保は、強制的に執行しなければならず、強制執行の対象は弱者に向かっていた。農業従事者は増加せず、収支のバランスは崩壊、ゴミ処理や上下水道管理も同じで、人材不足過ぎて、強制執行の対象となっていた。


 そして、西暦2138年のリアル世界は、世界中の何処に行っても、強制執行の弱者は、大量に生成される受精卵から、粘体粘体によって成長した、大量の孤児達であった。倫理と道徳は、知識と知恵が無ければ形成できないが、分断による対立は、倫理と道徳の形成を阻害する。


[newpage]#02 分断世界で集まった逸れモノはぐれモノ

 ギルドAOGの加入条件は、異形種であること、社会人であること、この2点であった。

 崩壊したリアル世界で、異形種を選ぶプレイヤには、逸れモノはぐれモノが多く、異形種狩りをするような人間種を、PKKするような異形種は、逸れモノはぐれモノの中の逸れモノはぐれモノであり、各自が所属するグループから弾かれる異質な、逸れモノはぐれモノ達であった。


 しかしながら、リアル世界の分断は、酷くなる一方であり、互いの格差と嫉妬は、対立を生み出すことを止められなかった。


 DMMO-RPG“YGGDRASIL”で、人間種が異形種狩りのPKをすることで、稼げるようにゲームが構築されているのは、分断された社会の象徴でもあった。異形種狩りをする人間種は、分断された異形種という弱者をいたぶって、自分の不満を解消することを楽しみにするモノ達だった。


 そんな分断社会の象徴みたいな、DMMO-RPG“YGGDRASIL”の中で、異形種による人間狩りをするような逸れモノはぐれモノは、それぞれの社会生活の中で、“人間であること”を求め、抗う逸れモノはぐれモノ達であった。多様性を主張することで、男女の性愛を求めることや美を追い求めることを否定するのは、自分自身が主張する多様性の否定である。多様性の維持というのは、すべてを許容する、人間としての度量が大きくなければ、維持することそのものが不可能になる。


 究極のポリコレは、強制によって、ポリコレそのものを破壊する、過激思考でしかない。


[newpage]#03 許容する度量・・・ギルド長モモンガ・・・

 原作やアニメの中で、主人公モモンガが追い求める理想は、人間種も異形種も許容する、度量の大きさであり、一天万乗のAOGが追い求めた、理想世界であった。


 私自身ぶくぶく茶釜は、ギルド長モモンガが好きで、彼がギルド長でなければ、DMMO-RPG“YGGDRASIL”は引退していたと思う。


 思いの形は、人によって様々であったが、ギルドメンバー全員に、ギルド長モモンガは好かれていた。

 ギルド長モモンガは、強さで言えばロマンビルドだし、ガチで強さを追い求めるような性格でも無い。思考能力が高く、魔法が好きで“YGGDRASIL”で知りうる限りの魔法知識を集積して、趣味の塊のような構築をしながら、恐ろしいくらいの汎用性を持った魔法を選択し、718という大量の魔法を、暗記するだけでなく、状況に合わせて使用する、イレギュラーへの対処能力は、圧倒的に高かった。


 自慢もせず、上には上がいると自覚し、控えめなギルド長モモンガ・・・

「もっと我儘で良いのに・・・」

ギルドメンバー全員が感じていたセリフだった。


 「盃事」を持ち出して、疑似親子関係を構築したのは、私自身ぶくぶく茶釜の我儘であり、ギルド長モモンガに、逆らうモノを否定することを、私自身ぶくぶく茶釜が霊代として、全ギルドメンバーに通達し、強制するコトだった。


 「契り盃」は、私自身ぶくぶく茶釜が霊代として、ギルド長モモンガを支え、序列を守る守護者となることだった。


 ぷにっと萌えが、

「世に抗い、水之滸みずのほとりに集いしモノ達を、束ねるのは、英雄に非ず、悪逆非道を為すモノなり」

そう言って、笑っていた。

「水滸伝」という本を、最古図書館アッシュールバニパルで読んだ後、

「モモンガが頂点で良いのね」

「あぁ、百八の悪鬼羅刹を、支配できる度量は、貴女ぶくぶく茶釜に支えられた彼にしかない」

 病気によって声を喪い、声優としての職を失った私自身ぶくぶく茶釜に残ったのは、ギルド長モモンガを支えることだけだった。

「私は優しく無いよ・・・」

「それで、良いんだよ、霊代」

 霊代は、疑似親を代行するモノであり、理想の守護者である。


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「オーバーロード」のリアル世界 Ittoh @Ittoh

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