ザ・フリーク・ブラッド

@Ink_of_Shadows

第1話


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第一章:最初の銃声


夕暮れの光に包まれた小さな家で、ユナは座っていた。

桃色の髪が光に揺れ、昼の空のように澄んだ青い瞳をした少女だった。

彼女の生活は穏やかで、姉のヒナと分かち合うものだった。


波打つ黒髪のヒナ、星のように静かな青い瞳。

夜の静けさのようだった。


しかしユナは知らなかった。

その夜が、姉ヒナの笑顔を最後に見る夜になることを。


――


早朝、ユナが学校の準備をしていると、ダークな表紙の本をめくるヒナの隣に座っていた。

ユナは軽い口調で話し始めたが、その声には悲しみと皮肉が混ざっていた。


「ヒナ、大学の生徒たちがあなたのことを話してるのを聞いたよ。

みんな『彼女は優しい』って言ってた。

でも私は本当のところを知ってる…彼らはあなたをいじめてる。」


ユナの表情が少し変わり、作り笑いを浮かべて続けた。


「どうしてそんなふうに彼らに優しくできるの?

でも、私はあなたの慈悲をよく知ってる…それは存在しないの。」


「じゃあ、今回も何を企んでいるの?」


ヒナは本を閉じ、冷たい笑みを浮かべた。


「私の考えが読めるなら、なぜ聞くの?」


今回はユナが本当の笑顔で答えた。


「分かってる…でも私は時々、ただ誰かと話したいだけ。

あなたは私が信頼できる唯一の人…たとえあなたが悪い人でも。」


ヒナは残酷さと優しさが混ざったような目で彼女を見た。


「あなたが私だけを信じてくれて嬉しい。

私はこの世界であなたのためだけに幸せを願う者よ。

答えはもう分かっているでしょ?」


ユナは同じ笑みを返した。


「分かってる…でも私は時々、答えが違えばいいのにって思うの。」


静寂の中で、ヒナの考えがユナの頭に鮮明に流れ込んだ。


「私は皆を死体に変えたい…彼らは私の手中の人形だ。

いつでも首を切ることができる。」


ユナの心は震えた。姉を恐れるだけでなく、姉を案じる気持ちでもあった。


ユナは静かに立ち上がり、落ち着いた声で言った。


「私、行くね…さようなら。」


ヒナは謎めいた笑みで答えた。


「さようなら。」


――


通学路は学生で混み合っていたが、ユナには頭の中のざわめきしか聞こえなかった。

誰かが友人に心の中で言っている。


「お前バカだ…利用してるだけだ。」


恋人の手を握る男は思う。


「もっと綺麗な女と浮気したい。」


だがユナの中の声はそれらよりも大きかった。


「その能力は…私にとって、恩恵であり呪いでもある。」


もし人々の思考が聞こえなければ、私はただの普通の被害者だっただろう。

でも時々、聞いてはいけない声が飛び込んでくる。


――


放課後に帰宅すると、ヒナはいなかった。


最初は部屋にいると思い、何度も呼んだが返事はなかった。

鼓動が速まり、胸が締め付けられる感覚がして、ユナは床に倒れて呼吸を整えようとした。


「くそ…大げさかもしれない、たぶん出かけただけなのかも。」


だが思い出した…ヒナは出かけるとは言っていなかった。


そのとき、机の横に置かれた紙に目が留まった。廃墟の住所が書かれている。

ちょうどその瞬間、テレビのアナウンサーの声が流れた。


「廃墟で火災が発生…たばこの不始末が原因と見られます。」


ユナの血は凍りついた…同じ住所だった。呼吸が速くなり、目を見開いて囁いた。


「ヒナ…あなた、本当にタバコ吸ってるの?」


すぐに理解した。すべてはヒナの仕組んだことだった。


現場に駆けつけると、炎が建物を飲み込んでいた。警察車両が川岸に並び、男たちが叫びながら屋上から人を降ろそうとしている。


屋上に立っているのはヒナだった。拳銃を持ち、微笑んでいる。


ユナは叫んだ。


「なにをしてるの?!」


ヒナは悲しみに満ちた笑みを浮かべ、痛みを含んだ声で言った。


「ユナ…あなたはいつも私が狂ってるって言った…私は聞かなかった。間違ってた、止めるべきだった…ごめんね、ユナ…あなたの信頼を裏切った。私はあなたが思っていた人ではなかった。」


ユナは屋上へ駆け上がった。近づきながら叫んだ。


「お願い!償いたいならここに残って…ここにいて罪を感じて!」


しかしヒナは冷たい声でユナの目を見つめ、囁いた。


「誰が私が罪悪感を感じたいって言ったの?私は罰から逃げたいだけ。生きることに疲れた。私の死を悲しまないで、私はそれで幸せになる。」


そして弱々しく付け加えた。


「ユナ…私の部屋のドアを絶対に開けないで。これが私の遺言。」


――そして――


ヒナは引き金に指をかけた。


銃声。


ヒナは屋上から川に落ちた。ユナは必死に手を伸ばしたが、間に合わなかった。


ユナはその場にへたり込み、涙で顔を濡らし、信じられない景色を見つめながら言った。


「これが私の恐れていたことだ…」


そして心の底から叫んだ。


「なぜぇぇ!」


濃い煙が立ち上り、息を締め付ける。叫びと炎の間で、ユナは意識を失った。



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