最終話.コウ、王様を引き受ける!?
「コウ。お主はクーデターを起こして、王国軍を掌握した。その手腕は見事じゃ。そこでだ。わしに代わってこの国を治めてみないか?」
···は?王様が本気で譲位するの?それって某竜退治の3作目と同じじゃんか!?
「ちょ!?ちょっと待った!」
「ん?どうした?そのつもりじゃなかったのか?」
「それ、マジで言ってんのかよ!?」
「冗談で言える話ではないぞ?」
「そりゃそうだけど!そんなあっさりと王位譲って大丈夫なのかよ!?」
「大丈夫じゃ。この国では実力あるものがトップに立って、民衆を率いて強国にしていったという歴史があるのを知らなんだか?」
「ぶっちゃけ言うと、オレはこの世界の人間じゃねえよ。神様に無理やり税務署長を
「なんと!?『外の
「···マジでオレが王様やんの?」
「そのつもりで軍を掌握したんじゃろ?戦力としてはこちらが圧倒的不利だしのぉ〜。情勢が情勢だけに、わしは退位間違いなしじゃし、こうやって譲位すればわしら一家は一般市民に降格し、
「最後が本音だろ!?」
「そういうわけじゃ。ほれ、王冠を渡すから、近うよれ」
「いや、さすがに···」
「まあそう言わず何事も経験じゃよ」
「いや、だから···」
「王様なんぞ、そう簡単になれんぞ?」
「ちょっと考えさせて···」
「クーデターやったんじゃから、王になって責任取らんと!」
···なんだろう?この軽いノリは。しかも『はいと言うまで続く無限ループ』だぞ!?
本気で某竜退治の3作目のロマ〇ア王やんけ!このあとカジノに入り浸るんだろ!?って、首都にカジノなかったはずだけどな。もしかして、これから作る気か?
···よし!腹くくるか!まさかこうなるとは思いもしなかったが···。
「···わかったよ。どのみちオレがやってやるかって思ってたしな」
「おお!そうかそうか!では遠慮せずに受け取るがいい!」
こうして王冠がオレの頭に載せられた。
「やったーーー!これで精神的ストレスで10ジールハゲができるほどの業務から、わしは解放されたーー!わしは自由じゃーーー!!」
「おい!?それが目的だったのかよ!?」
「当たり前じゃろうが!政策やったら一方からは喜ばれ、もう一方からはののしられ!何が正しくて何が悪いのかもだんだんとわからなくなってしまっとったんじゃ!もうそんな重圧から解放されたぞーーー!!」
···うわぁ。王様って超ブラックじゃんか。それをオレに押し付けたんかい!?
「それじゃあワシは失礼するぞ!ヒャッホーーー!!」
そう言って前王は全速力で王の間を駆け出して扉を自ら開けて去っていった···。まるで嫌な仕事から逃げ出したような···?リアルで逃げられたけど···。
こうして、オレは税務署長から王様にクラスチェンジしちゃった···。
おめでたくない!Bボタン連打してキャンセルしたい!!
しかし、現実にはリセットボタンなど存在しないのだ···。死んで時を遡る能力者でもないからリセマラもできんし···。
呆然としていると、扉の外で待っていたスタイアたちが入ってきた。
「署長。いえ王。就任おめでとうございます」
「···どうしよう?」
「は?ご自身で言いましたよね?『オレは国を相手に戦争する!!』って。この結果は分かっていたはずでは?」
「うっ···」
「なったものは仕方ありません。正式な手続きがされたようですし。これからは王様として頑張りましょう」
「ああ。···って、スタイアはもうオレの秘書じゃなくなるんだな」
「···は?」
「···は?」
コイツ···、『なにをバカな事を言ってるんだ?』って顔してるぞ!?
「署員全員道連れで王城勤務に異動ですよ?」
「マジで!?」
「王はその側近に身近な者を据えます。王の場合は前職の職員全員が側近になるのです」
「···ポーストさんも?」
「当然です」
···これ、職名が変わっただけで、これまでと大して変わんなくね?
こうしてオレは一国の王となった。せっかくなので、国の名前も変えてやった!
ホント、フザケすぎな世界だよ!だからこそこの名前がふさわしい!
『レオナード王国』
そう、レオはこの世界の神様の名前。そしてナードは『マヌケ』の意味もある『Nard』。神様に対してマヌケ!って悪口の意味をたっぷりと込めてつけてやったぜ!あの神のことだ。こんな事で天罰なんて与えんだろうから、やりたい放題やってやったぞ!
そして1年が経った···。
「おいスタイア!なんでオレが魔獣との戦闘の最前線で戦わにゃならんのだ!?」
「王は王国軍の最高司令官だからです。司令官自らが先頭に立って兵士を鼓舞するのも王の仕事です」
「司令官なら後方から指示を出すもんだろうが!?」
「最前線にいる方がタイムロスなく指示できるじゃないですか?それにリアルタイムで状況把握ができます」
「そりゃそうだけど!うわっ!?コイツ!こんくそがぁーーーー!!(ザシュッ!)はあっ!はあっ!これならどうだ!王水ぶっかけ!!」
「そうそう。その意気でやらないと、王国民が安心できませんよ」
「その前にオレを安心させんかぁーーーー!!」
···こんな調子は税務署長の時とまったく変わらなかった。ただ、肩書が『税務署長』から『王様』になっただけ。
どうも今までの王様は完全に引きこもって完全に委託状態でやってたらしい。いや、それが当たり前なんだけどな···。オレの場合はスタイアが無理やりオレを戦場に引きずり出しやがってこの状況になっちまうのだ···。
そのせいで、オレは兵士には人気が高かった。っていうか、全員がスタイアとヴェロッタ信者だったから、この二人がいたら『地獄に堕ちるのも定め!』っていう、ある意味特攻野郎チームになってしまっていたので、戦闘意欲がめっちゃ高かったのだ···。どうも軍の戦闘力は歴代最強らしい。これはあの馬車の護衛のおっさんが言ってたけどな。
この護衛のおっさんは親衛隊の隊長にしてやった。御者も政策参謀にしてやった。もちろん
ベクトさんは新たに設立した情報局局長だ。いろんな情報をかき集めてもらってる。王国全土が
タックさんは法務大臣にさせてもらった。法律めっちゃ詳しいから、非常に助かっている。
ポーストさんは···、
しかもルールにめっちゃ厳しいので、軍の規律が正されてしまった···。エロ本だけはなんとか許可得たけどな。
ヴェロッタは教育大臣になってもらった。意外と面倒見がいいし、間違ったヤツには容赦なく鉄拳制裁だ!···本当に容赦ないので回復魔法必須だけどな。
そしてスタイアは···、
『非常に不本意ですが、外堀埋められてしまったのでやむを得ません』とグチを言ってるが、毎日
そしてさらに1年後···。
「オギャー!オギャー!」
···王子が
結局は男の子2人、女の子3人産まれちゃった···。
周囲からは『仲
スタイアがベクトさんに『そういうように情報操作しておけば、あっさりと市民感情を良好にできる』って言って新聞屋に書かせたんだからな!
こいつら···、本当にやりたい放題しやがって···。
王様になってもオレは死ぬまで苦労するハメになったのだ···。
そして時は150年流れた···。
レオナード王国中興の祖とも言われたコウ王は、税金を調整して健全な国家運営を行い、エロ本を用いた政策によって性犯罪を激減させて人口爆発を引き起こし、国力を一気に上げた賢王(『エロ王』の名称はいつの間にか削除)として歴史に名を刻んだ。
レオナード王国は、今やボルタニア大陸の半分を勢力下に収め、近隣諸国とも友好的な関係を結ぶ大国家となっていた。国力で対等にのし上がってきたピムエム皇国とも関係は良好だ。
どうしてそこまでの国力がついたのか?多くの歴史学者が研究したが、真相は不明のままだった···。
ただ、王族は『即断即決!』『失敗しても前を向け!希望はその先にあるものさ!』という家訓をもとに強気な政治を行なった。その強気な性格が、この国の原動力となっているのだ。
『ちっがーーう!!スタイアの性格を受け継いだだけだーー!!』
賢王のリアルな魂の叫びは、生きているものに届くことはなかったのだ···。
税務署長は忙しい!〜なんでオレが魔獣退治までやらにゃならんのだ!?〜 完
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
完全にギャグ路線にひたすら突っ走った作品になりました。前作ライくんがお真面目なお話だったので、今度は逆に振り切れてこんな意味不明な作品になっちゃいました(笑)。
一番意味不明なのは演説でしょうね(笑)!元ネタに沿わせるとああするしかなかったんですよね。
こういった短編···、と作者は感じておりますが、ここまで短いお話は初めてでした。当初の予定よりは文字数が多くなりましたが、50万字以上の長編ばっかり書いていた作者としては楽しく書くことができましたね〜。
さて、明日以降はまたまた代表作であるアキくんの話に戻ります!番外編2ということで、今回はアキくんの孫のモンドくんとフーちゃんが大暴れするお話をお届けします。完結済の『アキの異世界旅行記 すぴん・おふ!』の後ろに投稿します。新作扱いではなくて連載再開という形です。
それでは引き続きぷちきゅう劇場をお楽しみください!
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