3-5.オレは···!悪に堕ちる!
「これはクーデターの一環です」
スタイアとヴェロッタが悪質なデマを流していたおっさんを
「これは完全に税務署の業務範囲外ですが、このままでは税収が落ちますし、何より徴収した税金が良からぬ使われ方をされてしまいますね」
「あたいが頑張って取り立てた税金がこんな事に使われるのかよ···?やる気失せるじゃねえかよ···」
まぁ気持ちはわかるけどな。オレもこんな連中に税金使われたらたまらんわ。
ここでこの憲兵のおっさんから聞き出した情報を公開しよう!
なんと火事場泥棒は王国軍と憲兵だった!スタンピード自体ウソで、避難と称して全員追い出したあとに王国軍と憲兵総出で片っ端から火事場泥棒やったんだとさ。あの時見た王国軍の重装備の応援は完全にパフォーマンスで、しかも全員が泥棒だったんだよ!
そして軍を送った馬車の帰り荷がこの周辺に住む人たちの金品だったってことだ。『魔獣が一部中に入り込んで暴れた』って言ってたけど、あれは家の中を荒らされているのを見た住人たちへの言い訳で、あらかじめ用意されてたんだろう。
さらに証拠隠滅のために北門を封鎖してスタンピードで襲われたふうに装って、急ピッチで工事をやってるんだとさ。土をいっぱいほじくり返して『魔獣の攻撃だった!』『倒した魔獣を埋めた』って言い張るんだろうなぁ〜。
あの壁の外から上がった煙もカモフラージュだったってわけだ。大規模に演出しやがって!!
さらに悪質なのは、自分たちの悪事がバレた時用にスラムに罪をなすりつけようとしたってことだ。
しかもこれやったのが憲兵と王国軍。通報する先がねえんだよなぁ〜。やっても揉み消されるのは間違いない。
ちゃんとスラムのみんなはあの時避難していた。これはレイ組長にも確認したし、なんとにゃんこ亭のミケちゃんも見ていたとの情報があったのでアリバイは十分確立されている。
とりあえず作戦会議だな!今後の事を考えると、第2第3のデマを流されちまうからな!
ちなみに
···ヴェロッタの胸は
「さて···、これで
「これ以上は我々業務範囲外です。静観するしかありませんよ?」
「でもよぉ〜、あたいのお気に入りのワンちゃんサイフをあいつらに盗られたんだぜ?取立人としては取り返したいんだけどなぁ〜」
「私のヘソクリもやられましたし、
「ヴェロッタって見た目によらず、そんなかわいいサイフだったのか。スタイアの下着って···?」
「「···あぁ?」」
「すいません···。何でもないです」
「とにかく、この件はスラムに申し訳ないですが、手を引くことを進言します」
「ええ〜〜!?署長はどうなんだよ!?」
「···う〜む」
はっきり言ってうちの業務範囲外だ。ヘタに手を出せばこっちがやられるのは間違いない。
しかし、ヤツらの行為は許せん!目的はクーデターのための資金稼ぎとのことだが、みんなお金ないからただでさえ悪い治安がさらに悪くなっちまうし、税収もほとんど取れなくなっちまった!
さらにはみんなお金盗まれてるのに納税しろって国が言っている。泥棒にさらに金与えるのと同じじゃねえかよ!?
どうする?このまま指をくわえて見てるしかできないのか···?
決断に迷っているその時だった!
「署長!お客さまですよ〜!」
タックさんから声がかかった。
「いいよ!カギはかかってな〜い!」
そして入ってきたのは···、『ドゥー・スケスケ出版社』の社長であるエイヂさんだった。
「署長!大変です!」
「どうしたのさ?予約してたアレの発売日が延期になっちゃったとか?」
「違います!出版社が···、出版社が···。全焼してしまいました···」
「なっ!?なんだと!?」
「幸いな事に従業員と原本は無事でしたが、魔道具と印刷した本が···」
「犯人は!?」
「わかりませんが、怪しい動きをしている男を見かけたぐらいで···」
···ほう?今度は言論封鎖を目論んでるのか?出版社が生まれ変わる前は軍に協力していたのに、生まれ変わってからはそういった関係を絶って純粋にファンのためのマニアック路線に切り替えて業績を伸ばしてると言うのに···!
···決めた!オレは···!悪に堕ちる!エロ本のために!
「よろしい。ならば
「は?何を言ってるんです?」
「スタイア。オレは国を相手に戦争する!!」
「ついに頭がイカレポンチになりましたか。明日から有休消化に入るよう手続きしておきますね。そのまま
「ちょっと待てや!オレ有休ったって10日しかねえよ!すぐに無職になるだろうが!?」
「署長の職務放棄ですよね?公務員が反乱を起こすということは懲戒免職ですから、退職金もありませんし、もう仕事にありつけませんね」
「大丈夫だ!問題ない!王国軍や憲兵も犯罪行為やってるだろうが!?失われた税収を取り戻すためなら業務
「おっ!?なんか面白そうだなー!あたいのお気に入りのワンちゃんサイフを取り戻すためなら喜んで力を貸すぜ!!」
「よし!だったら急いでスラム行って作戦会議だ!」
「はぁ···。仕方ないですね。私も同行しましょう」
「え?スタイア?本当にいいの?」
「良くないですよ。ちゃんと養ってくれるなら生活に問題ありませんから」
「さらっととんでもない事言うな!それってまんま告白じゃねえかよ!?」
「はぁ?バカにしてるんですか?誰も好き好んで署長に告白などしませんが?たっぷり
「そっちの方が怖ぁ〜!」
「でも、スタイアがいればまたあの
「···あ〜、コスチュームあるから、人数減ったらリストラされたって思われるなぁ〜。んじゃあ、ちゃっちゃとやるか!」
「さっさと終わらせて屈服させて業務に戻りましょう」
「王国軍や憲兵相手にたっぷりと取り立ててやるぜ〜!」
こうして、王国軍や憲兵が起こし始めたクーデターは、オレを始めとした税務署員とスラムが共同で起こすレジスタンスと対立して内戦が幕を開けるのであった···。
後の世でこの内戦を『無血エロ紛争』と呼ばれることになるとは、当時の誰もが思わなかったのだ···。
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