最終章 税務署長から叛逆者、そして王様へ···!?

3-1.署長会議

「おはよう〜!」


「おはようございます、署長」


「休みの間、なんかあったか?」


「ヴェロッタがカゼ引きました」


「···あいつ、カゼひくんだな」


「失言ですよ?本人に聞かれたら大ハンマーでぺしゃんこですね」


「そういう意味じゃねえよ!あんだけ大ハンマーぶん回すほど体力あるのにって事だよ!」


「どんなに強くても病気はかかるときはかかります」


「まぁな···。もう大丈夫なんだろ?」


「ええ。復帰してますよ」


「そりゃよかった。しばらくは病み上がりだから仕事量減らしてもいいぞ」


「いえ、倍以上やってます。本人の希望で」


「大丈夫かよ···?まぁ、会ったら話しとくわ」



 6日も休みをもらって仕事に復帰した。3泊4日で王都をぐるっと1周したな。なかなか有意義な旅だった。


 今日のオレの仕事は税金を国に納めに行く事だ。ついでに署長会議もあるから、城に行く手間が省けてらくちんだよ。


 というわけで城から重装備の馬が引く荷馬車が裏に着いた。署員で現金を運び出して積込み、いつもの御者と護衛が乗って最後にオレが乗り込んで出発だ。



「最近襲われねえから殺せねえし、つまんなくなったなぁ〜!」


「以前だったら轢き殺せたのに、最近はないですね〜」


「···あんたら、それが目的でうちに来てるんじゃねえよな?」


「とんでもねえ!護衛は何もないのが一番だぜ!···腕がなまっちまいそうだが」


「いやいや!安全運転が一番ですよ〜!···あのクレイジーなスリルが味わえないかぁ〜」


「本音出てるぞ?まったく···」



 こいつら、それが目的でうちに来てたんだな···。しかも引いてる馬までもがやる気ナッシングなオーラが出てたわ···。馬もクレイジーな性格だったか···。


 でも、もうそんな心配はないからな。うちはスラムとタッグ組んで治安向上に努めてるからな!役所や憲兵よりも頑張ってんだぜ?


 荷馬車は順調に進み···、御者と護衛は暇すぎてやる気なしモードだけど、無事城に入った。


 そのまま荷馬車は国庫担当のところへ直行して窓口に横付けしてから現金を運び出した。


 ホント、銀行は何やってんだよ···?振込できたらこんな苦労ねえんだけどなぁ〜。どうやらこの世界の銀行はサラ金並みの利率で借金させて、それで儲けてるようだ。怖ぁ〜!


 オレが荷馬車から降りると、国庫担当のカインさんが出てきた。



「コウさん、お疲れ様でした。最近は襲撃ないようですね」


「ええ、おかげさまで」


「何をされたのですか?税収も上がってますし」


「大したことはしてないですよ。すべて署員の頑張りのおかげです」



 そう、主にスタイアとヴェロッタがな。あいつらの調教・・のおかげでスラムの連中は品行方正···?まではいかないものの、ちゃんと更生しちゃってるからな。かなりなドMな性格に洗脳されてしまってはいるが、それも副作用だと最近は割り切ってる。最近はさらに進んで信者化・・・してきてるが···。



 会議は昼からだったので、王城内の従業員用レストランでお昼を食べることにした。ここのレストランもなかなかおいしいんだ!やはり城の中だけあるな!だから毎週の納金の際に訪れてるのさ。



「あら!コウちゃん!いらっしゃい!今日のランチは前に聞いた『はんばーぐ』よ〜!」


「おばちゃん!?もう再現したのかよ!?」


「そりゃ、新しいレシピ知ったらやりたくなるじゃないのよ〜。王様にもお墨付きもらったから出したのよ〜」


「王様に毒見させたのかよ···?怖ぁ〜!」


「ははは!宮廷料理長も絶賛だったし、食べておいき!」


「じゃあそれいただくわ」



 このおばちゃんが従業員レストランのコック長だ。狂ったぐらいに新レシピに貪欲で、オレが変わった料理知ってると知った以降はこうやって実験···、ゲフンゲフン!研究しているんだ。


 そしてその毒見役が王様なんだよ···。どういうセキュリティなんだよ?この国は···?


 さて、おばちゃんのハンバーグランチをいただくと···?



「めっちゃおいしー!!」



 デミグラスソースなんて説明しきれてないから別のソースかかってるが、ナニコレ!?肉汁と合わせていい味になってるぞ!?


 とてもおいしゅうございました。昼からの会議もこれで頑張れそうだぞ〜!



 そして会議室にやってきた。まだオレだけだな···。まぁ、納金で早めに来てたからな。


 しばらくすると、1人やって来た。



「おや?城北の坊やが一番乗りか」


「こんにちは、ベスケッタさん。いい加減坊や呼びはやめてくれません?」


「ほっほっほ!署長の中では一番若いんだから、坊やだよ」


「それじゃあいつまでたっても坊やじゃねえかよ?そろそろ引退したらどうなんだよ?」


「そうしたいんだがなぁ〜。なかなか後進が育たなくてなぁ〜」


「どこも一緒だよなぁ〜」



 このベスケッタさんは城南税務署の署長だ。気さくに話しかけてくるじいさんで、いろいろ指導してもらったんだ。結構話が合うんだよ。



「···フン」


「おお、フォロス。いい加減愛想よくしたらどうだい?」


「俺の勝手だ」


「やれやれ···。頑固なところは変わらんのぉ〜」



 次に入ってきたのがフォロスさん。西城イワイ署の署長だ。愛想悪いゴツい体形のおっさんだな。


 オレが話しても言葉を返さないから、オレもあいさつはしない。だからベスケッタさんが話してる。ベスケッタさんでも当たりはキツイけどな。



「ごきげんよう〜。もう東西南北そろってるのね〜」


「ごきげんよう、マリアットさん」


「ほっほっほ。マリーちゃんも元気だなぁ〜」


「···フン」



 続いて入ってきたのがマリアットさん。城東税務署の署長さんだ。シルクハットかぶってドレス着ている、いわゆる貴婦人の格好のマダムだ。


 そしてその後に4人入ってきた。こちらが北西、南西、南東、北東地区の署長だ。


・北西:アーギフさん

・南西:スカフさん

・南東:タッサさん

・北東:トゥレスさん


 以上、これで全員揃ったのでこれから会議が始まる。


 まさか今回の会議でとんでもない事態になるとは誰も思いもしなかったのだ···。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る