2-14.恨んでた西城イワイ税務署!

 夕方になり、オレは西城地区にやって来た。今日はここで1泊とする!


 まずは宿の確保だ!某旅番組でもまずは宿の確保が重要だと教えてくれたしな。


 西城地区の大通りに出た。ここはうちよりも道幅が広く、多くの荷馬車が路上販売したり行き交っていた。活気があっていいなぁ~!


 この地区から西へ行くと、壁の外に出て他の国への大きな街道に繋がってるらしい。東西南北それぞれに門はあって、それぞれ街道が繋がってるんだが、この西門は隣の国が比較的近く、交流が活発のようだ。


 そんな大通りだから、宿も簡単に見つかった。結構大きいぞ!?4階建ては初めて見たなぁ〜!お城以外でな。


 宿の名前は『百代はくたい亭』。···この世界って漢字っぽい文字が多いんだよなぁ〜。まぁ神様が元日本人だしな。


 しかしいいセンスしてる名だな!『百代』って『奥の細道』だろ?『月日は百代の過客にして、行き交う人もまた旅人なり』ってやつだな。旅人が行き交う宿という意味なら最高じゃんか!


 よし!気に入った!そんじゃあチェックインするか!



「すいませ〜ん!1人1泊だけど泊まれる?」


「いらっしゃいませ!空いてますよ〜。部屋タイプはこの5種類ありますけど、今ならどれも空いてますね。もう少しすると埋まってしまいますからね〜」


「じゃあ、ダブルの部屋で!」


「かしこまりました。8500ジールですね」


「じゃあこれで」


「ありがとうございます。では部屋は223のお部屋ですね。夕食は22時まで、朝食は6時からですよ」


「おう、ありがとな!」



 どうやらもう少し後から混むようだ。だったら早めにメシにするか!結構歩いたから腹減ったしな!


 そう思って荷物を置いて酒場に行った。カウンターの端が空いてたのでそこに座り、まずはビールだ!



「お待たせしました〜!」


「おっ!?ここも瓶ビールか!にゃんこ亭のビールとは銘柄が違うな···。なになに〜?」



『水トリー ザ・エクセレントォ!モルツ』



 ···ホント、この世界って元の世界にケンカ売ってんな。怒られないのかよ!?神様よぉ!?


 まぁ、言ったところでどうにもならんな。どれどれ〜?



「飲みやすい!!」



 ホント、この世界はおいしいもの多いよなぁ〜。にゃんこ亭のパンドラ御膳は除くけど···。


 そしてオススメ定食をいただき、その後はつまみも注文してお酒を楽しんだ。


 たった1人だけで飲んで寂しくない?だって?ここで飲んでる目的は情報収集だ。


 酒場は行商人が結構多かった。となると、国の外の状況とかの話も小耳に挟めるもんだよ。この世界ではこうやって情報収集するんだよ。スマホなんて使えないから、こうして人づてでの情報しかねえんだよ。


 さてさて···、オレの耳に入った情報は···、


・入国税が来月から倍以上の大幅値上げ

・壁の外で魔獣の活動が活発化

・壁の外のスラムの治安がさらに悪化

・次回来た時は城北地区の出版社から発売されるヌード肖像画集を買い占めて他国で販売

・2丁目にできたパン屋がめっちゃおいしいし売ってる子がめっちゃかわいい!

・隣国の政情が不安定化してて、近くクーデター起きるかも?



 なるほどなるほど〜。入国税上がるのは知ってたけどな。オレ税務署長だし。ただ、うちの地区には行商人はあんまり来ないから関係ないな。


 魔獣が活発化ねぇ〜。以前冒険者から税金取り立てるのに壁の外に出たけどさ···。あれよりたくさん出るの?そんじゃあ国外には出れそうにないわ。いくら水魔法得意でも、魔力に限度あるからなぁ〜。ちょっと自信ないわ···。


 そしてそんな状況で壁の外のスラムの治安悪化か···。場合によっては壁の下にトンネル掘られて侵入なんてのも考えてくる可能性はあるわな。そんな情報があったら中の住民も不安だろう。うちの管轄のスラムは今のところ関係は良好だけどな。


 あのヌード肖像画集、国外にも人気あんのかよ···?株主になってて良かったぁ〜!予約枠とは別で株主優待枠・・・・・あるから、確実に入手できるしな!増版したらさらに売上上がりそうだな!社長にも伝えとこう。


 そしてかわい子ちゃんのパン屋ね!これは明日行ってみよう!昼飯にはもってこいだろう。


 最後は隣国でクーデターねぇ〜。魔獣多いこの世界でそんな余裕あるんだな。まぁ、これもうちには関係ないね。



 さて、情報もそこそこ集まったしいい酔い加減だし、そろそろ帰ろうかな?と思ったその時だった。オレが座っているカウンターの隣の席に客がやって来た。しかも···、泥酔してた。



「うぃ〜、ひっく!酒だ酒だ!もっと飲ませろぉ〜!」


「おいラスティ!いい加減にしないか!最近のお前は酒グセひどすぎるぞ!」


「うるせぇ〜!いいから酒だぁ〜!」


「ダメだダメだ!酒におぼれると、余計に仕事できなくなるぞ!」


「仕事なんてもうダメなんだよ!なんで!なんでうちがワースト1に転落したんだよぉ〜!?こんなに頑張ってるのにぃ〜!それもこれも、城北税務署のせいだ〜!」



 はぁ!?うちのせいだと!?って事はコイツ、西城イワイ署のやつだな!?


 確かにうちはオレが来るまで万年ワースト1だった。スラム抱えてたし、ギャングにしょっちゅう襲われてたからな。


 今はスラムからの税収もあるし、ギャングに襲われなくなった。それだけ今まで鉄球付き・・・・の下駄履かされてたんだから、解消したら状況は変わるわな。


 それにしても、なんで西城イワイ署はワースト1なんだ?こんなに活気ある大通りあるのに税収がうちよりも少ないってのが気になるな···。なにかあるのか?


 ここでつい気になったのがいけなかった。本来ならよその署長が別のシマの件に関わるのはご法度なんだが、好奇心が暗黙のルールを右ストレートぱーんち!でノックダウンさせてしまった!



「どうした?よければ話を聞いてやってもいいぜ?」


「あん?なんだよ?てめぇは?」


「悩みがあるんだろ?だから荒れてる。そうだろ?」


「そうだが···?」


「あんたの状況はよくわからんが、わからんなりに話は聞けるぞ?もしかしたら、いい案が出るかもしれんぞ?金取らねえからさ」


「ふ〜ん?そこまで言うなら···」



 釣れたな!せっかくだし、よその税務署の話でも聞いてみましょうかね〜?

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