2-12.スケスケ出版社の裏側
先日の税務調査を行なって追徴課税で倒産したスケスケ出版社。
現在ではクラウドファンディングによる共同出資で、社名も新たに『ドゥー・スケスケ出版社』と変わり、共同出資の代表者が社長になって動き始めた。
元からいた従業員も戻ってきて、事業は再開できたのは嬉しいものだ。住民税と売上税も入るからな。
それに!発売中止となっていたヌード肖像画集も、発売日はそのままで予約を再開した!ヒャッホウーー!!
今度の社長は元のスケスケ出版社の熱烈なファンだった事から、今後は安泰だろうな。
さて···、そんな素晴らしい出来事の裏側に、オレたちは挑むことになったのだった···。
「ベクトさん···。それってマジですか?」
「おれっちも信じたくないっすよ···。でも、事実っすよ」
「そうか···。厄介だな···」
「そうですね。このままだとうちに圧力がかかりかねません。しかし、事前にこの事実を
「ああ。こんなのが大っぴらになったら国がひっくり返るぞ···。慎重に動く必要があるな。新社長にも手を回しておくわ」
「そちらはお任せします。しかし署長?なぜ潰した出版社に個人的に出資したんです?場合によっては査問くらいますよ?」
「構わねえよ。今はダメな行動に思われるだろうが、時間が経てばオレの行動は正しかったと証明されるさ」
「何カッコつけてるんですか?今のルールではダメです。我々は公務員ですよ?汚職を疑われます」
「経営権ねえし、発言権ねえから経営に直接関与してねえよ。金出して『株主優待』が欲しかっただけだ」
「『株主優待』とはなんですか?」
「出資者に対してお礼をする事だよ。配当金とは別に品物をくれるんだよ」
「では署長はどういった品物をいただくのですか?」
「そりゃ決まって···!?い、いや!なんでもない。もらうわけねえだろ!?」
「そうですね。公務員として立派な心がけです」
···スタイア、貴様!気づいてるな!?
オレがヌード肖像画集をもらうと気づいて敢えて聞きやがったな!?直接言わずに外堀を埋めてきやがった!
ホント、スタイアはドSだわ···。
さて、ベクトさんが隠し部屋で発見した裏帳簿。これがとんでもない爆弾だった!
帳簿上に出てくる社名は一見変哲もないものだ。金の流れもバッチリ
そしてベクトさんが裏帳簿に載ってた会社を調査したところ···、王国軍と繋がっていた。その会社を訪問したら、ペーパーカンパニーだったんだよ。
そう、王国軍はスケスケ出版社を使って、エロ本出版を通じて
それを知ったオレは、直ちに古本屋へ全速力で走った。過去に出版したエロ本を調査するためだ!早く
そしてあるだけのエロ本を買い漁った!もちろん領収書は書いてもらったぞ!
ハハハ!見ろぉ!経費で堂々とエロ本が買えたぞーーー!!
大変満足顔で署長室に戻ると···、
「おかえりなさい、署長。証拠物は手に入ったようですね?」
「ああ。···ここからは男だけで精査する必要がある。スタイア、悪いが出てもらえるか?」
「いえ、私も精査します」
「···えっ!?マジで!?」
「なに驚いてるんですか?早く精査しないといけません。早く出してください」
「ちょっと見るにはマズイんですけど···?」
「どんな本か知りませんが、男だけでというのは性差別では?さっさと出しなさい」
「ちょ!?おい!放せって!あっ!?」
ドサドサ!!
オレが持っていた紙袋が破れてしまい、エロ本が床にばら撒かれてしまった···。
そして1冊拾い上げるスタイア。表情はまったく変わらずだった···。
「···ほう?なるほど。そういう事ですか」
「···そういう事です」
「
「···え?『この程度』?も、もしかしてスタイアさん?」
「なにか?」
「い、いえ···。なんでもないです。応援呼んできます···」
エロ本に全く動じなかったスタイアさん···。しかも『この程度』って、あれどういう意味だ?もしかして、あれよりもスタイアはすごいって事か!?
まぁ、それは後にしよう。事前に声かけた男だらけで署長室に向かった。みんな鼻の下を伸ばしただらしない顔してたんだが、署長室に入ってスタイアの顔を見てびっくりしていた!
その後は一切会話などなくなり、非常に静かな環境でエロ本内の調査が始まった。···ところどころですすり泣く声が聞こえたが、オレだって泣きたい!スタイアがいなかったら、ここはさぞかし天国だっただろう!もちろん仕事だって!!
「予想通りでしたね。王国軍を礼賛する記事が要所要所にありましたね」
「国を批判する内容もこっそりあったな。まぁ、グラビアアイドルの背景だからほとんど見られないだろうけどさ。言論の自由があるからって、あからさまだな」
「クーデターを企んでるって事っすね···。まさか税務調査でこんなヤバい事が明るみになるとは···」
「だが幸いな事に、これはエロ本だ。成人男子しか購入しないし、オレらのような見方をしないと気づきもしないだろう。これが普通の新聞とかだったら大問題だな」
「スケスケ出版社は広告も出してましたね」
「新聞広告も調べるか!」
はい、ありましたね。広告欄に小さな文字で『王国軍入隊募集中!
これ、普通に読めばただの募集だ。ただ、国の平和を乱すのが国としたら···。
「スラムの件も、王国軍に従えっていう圧力だったのかもな」
「そういう考えもできますが、これ以上は
「そうだな···。ちょっと国の情勢が不安定になりつつあるって事だけにしておくか」
「はい。これ以上首を突っ込むと、余計な
「そっちかよ···。でもまぁ、そうだよなぁ〜」
「はい。では、この証拠物も処分しましょう」
「ちょっと!?それはダメだって!」
「なぜです?知られてはマズイ情報は消すに限ります」
「それはうちの経費で買ったんだ!簡単に処分するわけにはいかん!」
「では、経費精算書を持って総務部へ今から行きましょうか」
「···え?スタイアが処理してくれないの?」
「早期の処理ですから、署長が説明してください」
「···オレ、生きて帰ってこれるかな?」
「ポースト次第ですね」
「···やめときます」
結局は買い占めたエロ本はオレの自腹となり、スタイアの手で処分されちゃいました···。焼却炉に放り込む姿を、オレは血の涙を流しながら見つめていました···。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます