2-11.にゃんこ亭でパンドラ御膳を食す!

 スケスケ出版社を脱税で追徴課税し、自らの手で出版社を潰してしまい、楽しみにしていたヌード肖像画集が発売中止になってしまいました···。


 仕事とはいえ、あまりにもひどい状況になって落ち込んでしまいました···。


 しかも、さらに追い打ちをかけたのが···!



「税務署のバカヤロー!!」


「楽しみにしていたエロ本を発売中止に追い込みやがってーー!!」


「税金払わんぞゴルァ!!」



 市民の皆さまよりそれはすさまじいほどの抗議デモがありましたよ···。エロの力は恐ろしいと実感しましたとも。


 もう収集つかなくなってしまったので、本来はやっちゃダメなんだがオレが表に出て弁解した!



「皆さんのおっしゃることはごもっともです!オレだって···、オレだって直接出向いて予約したんだよぉ!!『見る用』、『飾る用』、『保存用』の3冊欲しかったのに!1冊しか予約できないって言われてショックだったんだぞ!それに···。オレだってこんなことしたくなかったんだ!でも出版社が税金払ってなかったから仕事上、取るしかなかったんだよぉーー!!ちゃんと払ってくれてたらこんなことに···、こんなことにぃーーー!!うぅ···。うわぁああああーーーー!!」



 そう言ってオレは大声あげつつその場で泣き崩れて慟哭どうこくした···。見た目は土下座したような状況になってしまった。それを見た市民たちは、『こいつもオレたちと一緒だったんだな···。オレたち以上に仕事でつらい思いしたんだろうなぁ~』って思われてあっさりと解散してくれたんだよ···。


 中には『あんたも大変だったな···。嫌な世の中になったものだな···』って励ましてくれた、杖をついたヨボヨボのおじいちゃんもいた。···その歳で頑張るんですか?元気だなぁ〜。


 こういう時は酒だ!明日休みだし、思いっきり『にゃんこ亭』で飲みまくってやるーー!!



「いらっしゃ~い!あら?コウさん?今日は冴えない顔してますけど、何かあったんですか?」


「仕事上でつらいことがな···。今日はヤケ酒しようかと思ってるんだ。ミケちゃん?悪いけど、度数高いお酒くれる?」


「悪いと思ってるなら出しません!そんな飲み方したら体に毒ですって!」


「そんな事言わないでくれよ~!」


「何があったのかは知りませんし聞きませんけど、まずはお食事したらどうですか?」


「そうだなぁ~。じゃあ『パンドラ御膳』で」


「それいっちゃうんですか···?相当お疲れなんですね···。お酒は最初はお気に入りのビールにしますからね」


「うん···」



 そうしてまずはお気に入りのビールを飲み、それから出てきた夕食であるパンドラ御膳が出てきた。


 このパンドラ御膳、元の世界にあった『開けてはいけないパンドラの箱』という、災厄がしこたま封印されていた箱の話をオレが酔った勢いでしちゃったために、ミケちゃんが考えた料理だ。


 そうそう、ミケちゃんはこのにゃんこ亭の猫獣人のかわいくてきれいなおかみさんだ。おかみさんって言ってもまだ17歳と非常に若い!『おいおい!』って言っちゃダメだぞ!本当の実年齢なんだから!


 従業員の皆さんもみんな猫獣人のかわいこちゃんばかりだ!ホント、癒されるわぁ~。職場では性格のきつい女性ばかりだからなぁ~。ポーストさんは見た目もきついけど。これ、本人には絶対に言うなよ!?


 さて話は戻って、このパンドラ御膳だ。不穏な言葉であるが、重箱風の箱に入った料理だ。ぶっちゃけ、中身は『昨日の余り料理の詰め合わせ』なのだ。


 どこが災厄なんだって?余り料理の組み合わせが良ければ『希望』なんだよ。そうじゃなかったら『災厄』なんだよ。


 過去に組み合わせとしてあったのは、『干し肉プリン』だったな···。干し肉の強烈な塩辛さとプリンの超甘さが合わさってわけわからん味だった···。プリンにしょうゆかけたらウニになるらしいけど、この世界にしょうゆないしなぁ~。


 さて、今日の御膳は···?


 ぜんざいの具がおでんでした···。これは見た目も強烈だなおい!名古屋の某喫茶店で本当に出した『アンコ入りパスタ』の方がまだマシだぞ!?



「一応止めましたからね?作る方は何も考えずに詰めちゃってますから味はどうなのかわかんないですけど」


「···うん。頼んだからには覚悟はできてるさ。いただきます!」



 頑張って食べました···。ちょっと気分悪くなったので、ヤケ酒は物理的にできませんでした···。もしかして、ミケちゃんの作戦だったのか?


 ゆっくり食べてると、後ろからいきなり呼びかけられた。



「あんた、税務署長さんだよな?」


「あぁ?そうだけど?今食事中なんだけど?」


「ちょっと悪いな。一杯おごるから話聞いてくれよ。ミケちゃーん!この人の一番好きな酒、おれにつけといて〜!」


「は〜〜い!ビールにしときますよ〜!」


「···んで?オレに話したいことって?」


「あんた、スケスケ出版社を潰したんだってな?」


「仕事上、成り行きでな」


「相談ってのはな?あの出版社をみんなで助けないか?って事なんだよ」


「で?税務署は援助できんぞ?」


「税務署じゃなくて、あんた個人に出資してほしいのさ。···あれだけの高度なヌード肖像画集を出せる実力があるんだ。他に流出させるのはもったいないと思わないか?」


「クラウドファンディングってか···」


「くらう···?よくわかんねえが、みんなで金出し合って再建しようって考えてんのさ。この金額で···、ヌード肖像画集を特典って事で募集してんだけど、どうだ?」


「···5口乗ってやる」


「そんなにか!?やっぱあんたに声かけてよかったよ!」


「ちょっと待て!寸借詐欺の可能性もあるんでな···。元締めは誰だ?ちゃんと監視体制は整ってるだろうな?」


「さすがだな!監視をあんたに頼みたいのさ。税務署長なら不正はしないだろ?」


「そういう事ね···。いいだろう!オレも多少の責任は感じてるからな。その話、乗った!」



 というわけで、スケスケ出版社はクラウドファンディングによる共同出資という形で翌週復活することになった。


 出版中止になってすぐに出せる作品から発売して運転資金を確保していく方針だ。


 そして、出版社も生まれ変わったということで、名前が『ドゥー・スケスケ出版社』に変更となった。『2』ではなくてフランス語の『ドゥー』にしたのはオシャレのつもりだったんだが、意図せず省略されて『ドスケ社』って言われることになっちまった···。


 以前の名前よりエロさが増えてしまったのは完全に想定外だったが···。

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