2-8.ちょうど予約に行こうと思ってたから、オレも税務調査に行く!
「署長!署長!これ見てくださいよ!」
「タックさん?出勤していきなりなんなんです?」
「今朝の新聞ですよ!」
「ん〜?おっ?こ、これは···!?」
スラム防衛戦を昨日終えて、今日は通常出勤だ。昨日も就業時間内でギリギリ終えたけどな。防衛戦も
署の勝手口から入ると、タックさんがオレに今日の朝刊を見せてきた。
この世界では一応活版印刷技術はあるようだ。さすがにコピー機ないから、うちで使う申請書とかは国が印刷所に依頼して大量に印刷してコストを抑えてる。
とはいえ、紙はこの世界では結構高い!だから朝刊は新聞紙1枚の4ページしかなく、税務署で1部だけ取ってる状況だ。
さて、タックさんがオレに見せた記事は···?
「『肖像画アイドル『パッド・シリコン』のヌード肖像画集を完全受注生産で12月24日に発売!○○○もあるよ!?』···だと!?おぉ〜〜!!あの異常にバストサイズがデカい娘だな!これは朗報だな!昼休憩に予約しに行こうっと!」
「署長!?どこ見てるんですか!?でもその肖像画集はちょっと私も気になりますけど···。そうじゃなくて!一面記事ですよ!」
「···はっ!?ああ、悪い悪い!つい新聞の下の広告集が目に入ってな。どれどれ〜?」
『スラムに強制捜査入るも妨害される!奇抜な格好をした謎の
···あ〜。これ、オレらだな。正体バレてなくてよかったわ〜。謎の秘密結社ねぇ〜。税務署の公務って知ったらびっくりするだろうなぁ〜。いろんな意味で。ってか情報早いな!あの現場にブンヤいたのかよ!?ってか、もしかすると新聞社と王国軍や憲兵がつながってるかもしれんな。
「これ···、署長とスタイアさんとヴェロッタさんですよね?」
「え?違うよ」
「ごまかさなくてもいいですよ。コソコソと何かやってるのはみんな知ってますし。しかし···、こんな大それた事もやってたんですね···」
「あ〜。まぁな。今まで住民税払えなかった人たちが働いて住民税が入るようになったし、人材派遣会社から売上税も入るようになったからな。犯罪で稼いだ金なら問題だが、正当な労働で正当な報酬を得てるんだ。そんな人たちを拘束されたら税収落ちるだろ?」
「まぁ、そうですけど。もしこれ、バレたら···」
「大丈夫だ!···もしそうなったらオレは国を潰してやろうと考えてる」
「マジですか···?」
「まぁ冗談だけどな!ははは!まぁ、安心して業務してね〜!」
「は、はぁ···」
というか、半分本気だけどな。最近、やっとこさこの国の事情がわかってきたんだよ。
この国は内陸にある国だ。めぼしい産業は林業と製紙業ぐらいだな。
大きな川と湖があってきれいな水だし、切り出した木の跡は住宅街や畑などに再利用されている。もちろん植林もして定期的に手入れもしてるそうで、確かに周囲の森はまっすぐ伸びた木ばかりできれいだな。
輸出は紙と木材と農産物、輸入は鉱物系が多いようだ。
だから工業系がちょっと弱い。一応紙は外交などに使えるような高級なものからトイレットペーパーまで作れるんだが、いかんせん工夫の余地が少ない。だから活版印刷にも力を入れてるというわけだ。
オレは税務署長という権限を用いて、先日の税務署長会議の席上で国に歳入と歳出の一覧を要望したんだよ。税金徴収なんてやってて税収上げることばかりしか言わないもんだから、国の懐事情を知りたかったんだが···。そしたら···、
『国家機密ですが?なぜ税金を搾り取···、ゴホン。税金徴収業務に必要ではないでしょう?』って国庫担当に言われたんだ。
つまり、
確かに王国なんだし、税金の使い道は王様が最終承認するもんだ。
だが、それの案を作るのは官僚だ。貴族なんてのはこの世界ではいないらしい。ほかのファンタジー世界だと貴族が領地で稼いだ税金で守るってのが多いが、このエーレタニアでは
ここ首都ではオレら税務署員が税金徴収業務をやって国庫に納める。じゃあ地方は?
···そう、官僚が好きにできるんだ。重税にして上級官僚どもが散財してるところもあるらしいぜ。一応監査あるんだけど、どうも買収されてグルになってて機能してないらしい。
地方や監査がそんなだから、国庫担当も見せたくないんだろうなぁ~。汚職だらけって事だ。というか、国庫担当もネコババしてる可能性もあるな。
こんなのは元の世界でも往々にしてあったが、異世界でも変わらんようだ。まぁ、同じ人がやってる事だしな。よく今まで国が成り立ってたなぁ〜。まぁ、いつまでも隠しとおせんだろ。国防費ケチってたとして、もし魔獣が攻めてきて軍が機能しなかったら国が滅ぶぞ?
まぁ、そうなったら逃げるけどな!署員全員で脱出する
とまぁ、正攻法では情報収集はできなかった。となると···、ここからは情報収集がもっと大事になるってわけだ。
「というわけで、ベクトさん。王城行って情報集めてもらえます?」
「ムリっす」
「即答ぉ!?ベクトさん、潜入得意でしょ?」
「得意じゃないんすけどね···。それに完全に
「いや、そこをなんとか···」
「さすがにこれはムリっすよ···。勘弁してくださいって!今はちょっと大きな会社の税務調査やってるっすから、そんな余裕はないっす!」
「え?そうなの?ちなみにどんな会社?」
「7丁目にある『スケスケ出版社』っすよ」
「···え!?年末にあのヌード肖像画集を発売する会社じゃんか!?ちょうど予約に行こうと思ってたから、オレも行く!」
「へ···?予約···?」
「···あ!?ゴホン!そんなに大きな会社ならオレも行ったほうが威圧になるから、はかどるんじゃね?」
「なんかとってつけたような理由っすね···。まぁ、別にいいっすけど···」
「よし!決まりだ!」
税務署内の廊下でベクトさんを見つけて壁ドン状態で極秘業務をお願いしたら、拒否られてしまいました···。オレとしては非常に優秀な
それに大きな税務調査をやってる最中とのことだったが、なんとその会社が朝見た新聞の下段にある広告にあったヌード肖像画を出版予定の会社だったんだよ!ちょうど昼休憩に予約しに行こうと思ってたから、同行を申し出てついでに予約しよう!
「スタイア。今日はベクトさんと一緒に税務調査に向かうからな」
「そうですか。確かベクトはスケスケ出版社を調査中でしたね。では私も同行しましょう」
「えっ!?い、いや···、そのぉ~。人材派遣会社はいいのか?」
「最近しつけを完了した人が自ら講師を名乗り出てまして、その人に任せられるようになりました。だから今後は署長に同行できます」
「···え?そこまで人材が育っちゃった?」
「はい。きっちりと
「怖ぁ~!だ、だったら!今まで忙しかったから休暇取ったら!?」
「
「い、いえ···」
「それでは行きましょうか」
···こいつの前でヌード肖像画集の予約はできんな。もしかして···、見抜かれていたのか?
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