2-5.すべては税収を上げるため!?
「へいらっしゃい!お嬢さん!今日はどんな御用で?」
「えっ!?え、え〜っと···、夫がぎっくり腰になってしまって店を開けられないんです···。売上税の納付を待ってもらえないかと相談で···」
「だったら6番窓口っすね!63番で呼ぶんで、この番号札持ってそこのベンチで待っててくだせえ!」
「は、はぁ···。どうもありがとう···」
2か月前、いつも
手っ取り早いのは『人材派遣会社』だ。
勝ち組という組織はレイ組長を頂点に、幹部、そして部下という序列が決まっている。決まりはうちよりも厳しいみたいだな。
一応スラム全員が何かしらの形で所属してるらしい。しかし、全員が管理できてるわけではなく、言う事を聞かない連中も多くいるようだ。
その言う事を聞かない連中がうちに集金に来ていたらしい。集金に失敗して警戒していたのに、大金に目がくらんで言う事聞かずに来ちゃったらしい。
レイが言うには『自業自得』とあっさりと切り捨てたのは意外だった。さすがにそこまで面倒見れる余裕はないって事だな。
というわけで立ち上げた人材派遣会社。
もちろん、今うちの受付で働いてる、
···怖ぁ〜!人格まで変わってるんですけど?もはや洗脳に近いんじゃないです?
「失礼ですね?しつけがされてなかったから粗暴だっただけです」
「単にそれだけとは思えんが···」
「今日は人材派遣会社で
「ああ。···ほどほどにしておけよ?」
「ほどほど?人様に失礼のない程度ですが?」
うちでは現在3人雇っている。もちろん全員矯正済みですよ?
第1号のスイさんはうちのVIPルームでしつけがなされた···。その
ただ、このしつけが行われると、もれなく全員ドMな性格になってしまっているようだ。スタイアやヴェロッタを見かけたら『姐さん!もっと踏んで下さい!あっ!?そこぉ!気持ちいいっす!!』『姐さん!一発殴って下さい!ごふっ!?あ、ありがとうございます!』ってあいさつをしているのをよく見かけるんだよ···。
今日受付にいる人体実験第2号のモクさんも同様で、さっきスタイアに『みぞおちぱーんち』を食らって喜んでいたわ···。
「いやぁ~、署長!仕事がはかどりますよ〜!事前に仕分けして用件まで準備してくれるから、たらい回ししなくて済みますよ〜!」
タックさんが満面の笑みで言ってきた。今まで来客があっても、どの窓口に相談かわからずに適当に並んでたんだ。
それを種別ごとに窓口を分けた。場合によっては空いてる別窓口を使うけどな。
やるまでに署員の得手不得手を調査した。その結果、得意分野3つまでの窓口番号を名札の横につけた。これで誰に何を聞いたら即答するかと、どの窓口に入れるかがみんなに理解してもらえた。
これによって窓口業務は効率化されて業務処理に大幅な余裕ができたんだ。
この方法は当たりだったな!効率化によって余裕が増えたので、残業代削減にもなった。そのため、王様から表彰されちまったんだ···。王様に直接会ってないけどな。
『キミの方針は素晴らしい。ほかの部署でも可能な限り採用することとする』
との言葉と署員全員にボーナスいただきました。皆さんから『また来年の住民税上がるじゃねえか!?』とクレームもらったけど、『このままだと基本給も上がるぞ!』って言ったら手のひら返されて協力的になりましたとさ。
そりゃ公務員であっても金が目的で働いてるわけだしな。スポット収入よりも定期収入の方がいいに決まってるもんな。
こうしてオレが始めた共同事業は少しずつ市民にも受け入れられ始めた。人材派遣会社も着実に大きくなっていった。
なんで税務署が事業に参入してんの?って思われるだろうなぁ〜。元の世界では考えられん話だろう。
こうすることで雇用が生まれる。すると、労働者には給料が入る。すると、住民税を納めてくれるだろ?
さらには人材派遣会社の売上税も入ってくる!めっちゃオトクなんだよ!もちろん勝ち組にも派遣元としての定期収入が入る。
スラムで遊ばせておくぐらいなら、活躍できそうな場所があれば提供する。治安も良くなって税収も入っていいことばかりだ。
まさに錬金術だな!今までお金が産まれなかったところからお金を産み出すことに成功したんだ。これを錬金術と言わずに何と言うんだ?
まぁ普通なら一筋縄ではいかないし、元の世界でも失敗が多い。ただ···、あんまり大きな声では言えないけど、スタイアとヴェロッタのしつけがめちゃくちゃ効いてた。これがなかったら失敗だっただろうなぁ〜。
今日は打ち合わせでまたまた勝ち組の本部にやって来た。こうして定期的に話し合いと状況の確認をしている。
「あんたのおかげで結構な額の定期収入ができたのは大きいな。まだまだ人数は少ないものの、希望者が少しずつ増えてるぞ」
「そいつはよかった。いきなり全員は難しいが、立ち直るきっかけになってくれれば嬉しいものさ」
「どうやったんだい?うちでも持て余してた連中だ。人格まで変わってるぞ?」
「そ、それは···。ちょっと企業秘密って事で···」
さすがにしつけでこうなりましたって言ったって理解できんわな。オレも理解できてないし。
「まぁいい。ところでだ。最近表の連中がスラムに入り込んでくる事例が増えている。何か知ってるか?」
「いや?どういった連中なんだ?」
「組員が向かった時にはもう外に出ちまってる。ちょいと不気味でな···。もちろん被害はねえけどな」
「何か良からぬ事になりそうな気配がするな。こっちでも調べておくわ」
「そうしてくれ。もしかすると、この仕組みが気に食わねえ連中がいるのかもな」
「あ〜、結構うまい話だからなぁ〜。聞きつけて妨害ってのもあり得るな。何かあれば連絡するよ」
「ああ。引き続きよろしく頼む」
気になるな···。妨害って、一体誰がするんだよ?まさかとは思うが···。ちょいと調査の必要があるかもな。
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