第2章 税務署長の日常
2-1.今日も税務署は平和だなぁ〜(大惨事の予感?)
「全員動くなぁ!金庫にある有り金全部出しやブゲェ!?」
今日も予想通りギャングがやって来た。やっぱりオレらが徴収した税金を国への搬入する日が事前にわかってるから、その直前はこうしてギャングが
まぁ、オレがいるから水魔法でお帰り願うけどな。憲兵も搬入直前はこうしてギャングを逮捕するべく、事前に待機してるんだよ。『どうせ呼び出されるなら最初からいれば楽ちん!』だそうだ。それもどうかと思うけどさ···。通報しなくて済むのはこっちも助かるけど。
一方の署員は強盗が来てもまったく動じなくなった。『署長が片付けてくれるから楽ちん!』だそうだ。
···おいお前ら?なんでも署長に頼り切りはいかんぜよ?オレがカゼひいて休んだらどうする気だ?
でもなぁ〜。これってある意味嫌がらせの側面もあるんだよなぁ〜。最近はそっちの目的が主になってきてる気がするぞ?
「スタイア。うちに来る
「はい。『
「···は?」
「ですから『勝ち組』です。質問の回答、聞いてました?まだ耳が悪くなるような年ではないと思いますが?」
「いちいち口撃してくんな。なんだよ?『勝ち組』って···。ふざけてるとしか思えんけどな」
「どこにふざけてる要素があるかわかりませんが、『勝ち組』は王国軍ですら手出しが厳しい集団です。名前の通りかと」
「国軍相手に立ち回れるのかよ···。もはやスラム街自体が独立国並みになってんなぁ〜」
「ですので、一斉検挙となると確実に
「マジヤバだな···。よりによってうちの管轄にそいつらの本拠地があるんだよなぁ〜」
「ですので、現状維持でいいんじゃないですか?」
「···え?」
「何を驚かれてるのです?」
「いや···、スタイアのことだから『勝ち組が隠してる所得を暴き出して追徴課税しましょう』って言うかと···」
「その気持ちは山々ですが、我々税務署の
「···結局は残業代なのね」
あの税金にはドSなスタイアがこうまで言わせるギャング集団『勝ち組』···。だからと言ってこのまま放置してたら税務署がもっと過激な襲撃に遭う可能性があるしなぁ〜。
なんとか話し合いできないものかなぁ〜。話が通じるとはとても思えんが、うちのスタンスを明確にしたいってのもあるんだよなぁ〜。
「···よし!」
「どうしました?まさか勝ち組のアジトにカチコミに行こうと言うんじゃないでしょうね?」
「半分当たりかな?」
「一応止めましたからね。裁判になっても私は無罪だと主張する重要な証拠になりました」
「···悪いのはオレだけかよ?」
「悪い事企んだのは署長ですから」
こいつ···!自分だけ助かろうって気だな!?ちゃんと巻き添えにしてやるから安心しろ!
さて、まずはエサを仕掛けておくぞ。まぁ、エサは用意しなくても勝手に食いつくけどな。
1週間後···。
「オラァ!!有り金出ガハッ!?」
···こいつら、本当に学習能力ねえのかよ?これまで散々失敗してるって勝ち組の連中も知ってるだろうに···。
おそらく使えないヤツを
今日は憲兵がいない。というか、お帰り願った。今日はコイツに用があるんでな。
「タックさん。コイツを縛って『VIPルーム』に押し込んでおいて」
「はい、署長!いやぁ~、最近ドンドンやることが過激になってきましたね〜!次はなに企んでるんです?もうここ最近仕事が楽しくなってきましたよ〜!」
タックさん···?なんでそんなに笑顔なんです?企むだなんてとんでもない!ちゃんと清く正しい税金徴収するためですってば。
ただタックさんの言う通り、最近のオレは行動が前に比べて過激にはなってんな···。この世界に毒されてきたのか···?
さてと···。VIPルームにはオレとスタイア、それとさっき釣り上げて縄でぐるぐる巻きにしてイスに座らせたギャングの男がいる。
もう少ししたらお昼休みになっちまうな···。とりあえずこの男が起きない限り、先に進まねえからなぁ〜。ここで食事するしかなさそうだわ。
「スタイア。オレの行きつけの『にゃんこ亭』にカツ丼の出前を頼んどいてくれるか?ここで食うわ」
「了解しました」
スタイアが出ていってすぐに戻ってきた。どうやら暇な署員に向かわせたな?楽しやがって···。
10分後···。
「···ん。···え?ここは···?」
「ようやくお目覚めか」
「···なっ!?これは!?おいゴルァ!これはテメエのシワザか!?」
「ああ。ちょっと聞きたいことがあるんでね。この部屋にご招待したんだよ」
「何が招待だぁ!?拉致監禁じゃねえかよ!」
「まぁ、考え方からしたらそうなるかもな。ただ、これも
「大ありじゃボケェ!!」
「ちゃんと答えたら解放するからさ。いつもは憲兵がいるけど、今日はお帰り願ってるから
「そんな話、信用できるか!」
「そりゃそうだろうなぁ〜。なんせお互い信用してないもんな。まぁ、それはどうでもいい。こちらの質問に答えてくれるかな?」
「はっ!誰が答えるか!」
はい、予想通りでしたな。じゃあここからはスタイアに任せるか。どちらかと言えばオレよりもスタイアの方が適任だ。
「じゃ、スタイア。任せた」
「はい、署長。
「物騒な事言うなよ!?あくまで業務の一環だから!ちゃんと手加減しろよ!?」
「はい、はい」
「違う!もっと真剣に尋問するんだぞ!?」
スタイアのドSな性格だと、こういった尋問は得意だろうと見込んでたんだが···。ちょっとこの先にこの部屋が惨事になりそうな予感がビンビンしている。
でも、オレだったら口割らないだろうからなぁ〜。そういう意味も込めて、これから
「な、なにするつもりなんだよ···?なにもしゃべらねえからな!」
「その強がり、果たしてどこまでもちますか?だいたいそう言ってるヤツほどすぐ吐きますけどね」
「面白え!やれるものならやってみやがれ!」
···あ。言っちゃった···。その言葉を聞いたスタイアが不気味な笑顔になったのを、オレは気づいてなかった。オレはスタイアの後ろにいたんでな。
···今日も
そう、自分から企んでおいてるのに現実逃避の準備にオレは取りかかったのだ。
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