1-3.税務署での初仕事はギャングにお帰りいただくことでした
「あの〜、人質って事は身代金を払ってもらったら無事に帰してもらえるんですよね?」
「あたぼうよ。ただし、期限までに身代金が支払われなかったら首ちょん切って入口に野ざらしにしてやるけどな!期限って言っても今日の昼までだけどな!はっはっは!」
税務署へ初出勤したら、ギャングに襲撃されてました···。そしてオレはなんと人質として囚われてしまったんだよ···。
この時、オレは税務署の中に入った。こんな形で初出勤なんてオレだけだろうなぁ〜。
中にいた職員は全員『え?あれ、誰だ?』って顔をしてるよ···。そりゃそうだ。オレもここの職員が誰かなんて知らんし。
「あの〜、なんで期限が今日の昼なんです?いくらなんでも早すぎません?」
「···お前、ここの人間じゃねえだろ?昼過ぎたら取立人が帰ってくるだろうが?」
「へっ?取立人···?」
「本当に世間知らずだな···。取立人ってのは、税金を滞納した連中に対して問答無用で税金を搾り取る悪党だぞ!?」
「いや、あなたギャングなんだからあなたこそ悪党じゃないんです?」
「悪党じゃねえ!ここの連中と同じにすんな!オレらは義賊だ!スラム街の連中を飢えさせずにさせてんだよ!」
「あっ、そうっすか」
このギャング、意外と親切にいろいろと教えてくれたぞ?こいつらも怖がる取立人ってのがいるのか···。取立人がいない時間を見計らって襲撃しやがったんだな···。
さてどうすっかなぁ〜。お昼まであと1時間しかねえぞ?ということは···、オレの命はあと1時間しかない!?
マズいマズい!ここの職員たちもオレを助けようとは考えてなさげだぞ!?
どうすんだよ···?相手はごっつい剣をもってやがるし、オレは丸腰だ···。完全に不利だぞ···。
いや、待てよ?確かオレって魔法が使えるようになったんだよな?ここで魔法を使って追い払うってのはできるのかな?
本当はちゃんと練習してから魔法を使いたかったけど、そうも言ってられない状況だ!やってやる!やってやるぞーー!
え〜っと?確かイメージしたらいいってことだよな?まずは水かな?水鉄砲でギャングを外へ押し出すようなイメージで···!
そんなイメージをして右手を前に出してこう叫んだ!
「ウォータースプラッシュ!!」
「へっ!?んがぁっ!?」
オレの右手からものすごい量の水が勢いよく出た!まるで消火栓から水を出したような感じだな!大した反動もなかったぞ?魔法だからか?
ギャングはオレが出した水の勢いに負けて外にふっ飛ばされて···、あっ!?頭から落ちたぞ!?だ、大丈夫か···?
身動き一つしてなかったので確認しに行くと、ギャングは気絶していた···。とりあえず縄でグルグル巻きにしておくか?
「あの~、縄ってあります?気絶してるようなんで縛っておきたいんですけど···」
「···え?あ、ああ!すぐに持ってくるよ!」
一番手前のカウンターにいたおっちゃんに話しかけたら縄を取りに行ってくれた。そしてギャングは縛られて駆け付けた憲兵によって連行されたんだ。なんだか嫌々な顔でやる気のない憲兵だったけどな。大丈夫か?
「え~っと、あんたは誰だ?何しにここに来たんだ?」
落ち着いていろいろと考えてたら、さっきのおっちゃんに話しかけられたんだ。そういえば今日からここのお世話になるんだったんだ!本来の用件に戻らないと!
「オレはここの税務署長を頼まれた者なんだけど、担当の人っている?」
「···は?署長?あんたがかい?」
「ああ。ものすごく不本意ではあるんだけど···」
「名前は?」
「コウってんだけど」
「···ほ」
「···ほ?」
「本当にキターーーーーー!!」
「···え!?どういうこと!?」
「先月に飲み会の席で『神様!署長やってくれる人が欲しい!』って適当に言ったら本当にキターーーーー!!」
「···は?もしかして、あんたが神頼みして···?」
「神様なんか信じてないけど!言うのはタダだからなぁ〜!ははは!」
···こいつ!こんな願いをしなけりゃ、オレが拉致されなかったんじゃね?そんな願いを聞くあのバカ神もそうだけどよ!
ちなみにこのおっさんはタックというそうだ。ここの署で一番勤務歴が長いそうだ。
というわけでオレは署長室へ案内された。されたんだが···。
「············」
「ちょっと汚れてるけど、気にしないで!」
「気にするわ!この
「あ〜、それは先代署長の遺産だね」
「へ···?遺産?」
「そう。襲撃されてここで亡くなったんだよ。その黒ずみは先代所長がここで襲われて
「清掃しろよ!?なんで殺人事件現場になってんだよ!?」
「そりゃ、ギャングに狙われる立場だからね〜。取立人以外は全員無力な公務員だから。ははは!」
「···って事は、次に狙われるのは、オレ?」
「············正解!!」
「某クイズ番組みたいに溜めるなぁーーー!!やってられるかぁーーー!!」
「そう言わずに!うちの署は取立···、ゲフンゲフン!税収ワースト1で王様からいつも怒られてるんだ!頑張ってワースト2にして下さいね!」
「そこはトップじゃねえのかよ!?目標ちっちぇーー!!」
「ははは!トップなんてムリですって!順位一つ上げるくらいで十分ですから」
「···だめだこりゃ。抜本的に見直さねえとオレの身がヤバそうだわ」
とんでもねえ職場だったわ···。普通に仕事して命狙われるなんてな。
まずは状況確認して、改善できるところからやってくしかねえな···。そんな事を考えてると、扉がノックされた。
「はい!どうぞ。カギはかかってないから」
「失礼します」
入ってきたのはめっちゃ美人の女性だった···。いわゆるクールビューティーってやつ?
「あなたが新しい署長ですね?私はスタイアと申します。今後は秘書として税の搾取···、ゴホン。失礼しました。正しい納税を国民にしてもらえるようサポートさせていただきます」
こいつもか···。税務署って、国民から税金を搾り取る場所って意識がありやがるな···。国を発展させて国民をより幸福にするために、正しく納税してもらうように働きかける役所だろうが。元の世界でも、もしかしたら同じ考えのヤツがいそうな気はするが。
まずはこいつらの意識改革からだな。
「オレはコウ。ワケアリでここの署長をいきなりするハメになった。よろしくな」
「コウ、ですね。それではこれからよろしくお願いします。さっそく何をやりますか?」
「全員で署内の清掃だ!」
「···は?我々は国民から税金をふんだくる···、ゴホン。失礼。税金を納めてもらう役所ですよ?清掃するところではありません」
「誰も来やがらねえじゃねえかよ。どうせ仕事ないだろ?まずはキレイにして、来やすい環境にする!異論は認めん!」
「···わかりました。この役所では署長が絶対的な権限を持ってます。全員で清掃をします」
「よし!まずはイメージが大事だからな」
「では署長も一緒に始めますよ」
「···え?オレも?」
「先ほどご自身の口から『全員で』っておっしゃいましたよね?署員の模範となるべく、署長から率先して清掃しましょうか」
「············」
「何ボサッとしてるんです?早くしないと日が暮れますよ?さっさと準備して下さい」
こいつ···、ドSだわ!!
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