小豆
タピオカ転売屋
第1話
私の友人の話である
彼とは親子ほども歳は違うが中々にウマが合い
彼の若さを羨ましがったりバカにしたりしていた
ある日、彼から相談があるから聞いて欲しいと持ちかけてきた
彼が一人暮らしをしているアパートの部屋の事だと言う
彼の住んでいるアパートは築年数こそ経っているものの、中々に小綺麗なアパートである
彼は私とウマが合うようないわゆる社会不適合者なので自炊など、そんなシャレたこともしない
せいぜいコンビニ弁当をレンチンするか、カップ麺のお湯を沸かすぐらいである
そんな彼の部屋に不思議なモノが落ちていた
小豆である
ひと粒の小豆が部屋の隅に落ちていたのだ
なんで小豆がこんな所に…
訝りながらも彼は、小豆をゴミ箱に捨てた
幾日か経った日のこと
彼は、また部屋の隅に小豆が落ちているのに気付いた
彼は、少し怖くなって今度は捨てずに取っておいた
また幾日かすると
部屋の隅に小豆が落ちている
さすがに恐ろしくなって私に相談しようと思ったとの事
「あの部屋に引っ越してから一度も自炊なんかした事もない、ましてや小豆なんて買った事もないんです…なのに部屋にポトッって落ちてる
なにか小豆に纏わる怪異みたいなモノってありましたっけ?」
と私に聞いてきた
私は、じっくりと考えるフリをしてこう言った
「小豆の赤い色は、陰陽思想で太陽や生命を象徴する陽の気とされ邪気を払うとされているし、祝い事…御赤飯などにも使われているが怪異となるとひとつしか思いつかない」
小豆洗い…妖怪だ
すると彼は、聞いた事はあるが何をする妖怪なのか知らないとの事
川辺で「ショキショキ」「サラサラ」といった小豆をザルに入れて洗ってるような音が聞こえる
何かと思った人が近づくと川に引き込まれるそんな妖怪だと説明した
しかし今回そんな音は聞いていないしそもそも彼の住んでいるアパートは川辺でもない
そうなると考えられるのは、ひとつだけ…だ
ソレはなんですかと急かす彼に私は、その時の小豆はまだ取ってあるのかと聞くとまだあるとの事
私は出来るだけ深刻に見えるように眉を寄せて
「いいかい、今から言う事を必ず実行して欲しい。
まず、ソレは今すぐ処分する事
出来れば二重にしたビニール袋に厳重に梱包して油性ペンで『蜚蠊』と書いておく
後は塩水で口と手を清めるがいいよ」
彼は、ビビりながらも今から帰ってやると言って帰って行った
…私はソレが、ゴキブリの卵である事は、彼には黙っていた。
小豆 タピオカ転売屋 @fdaihyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます