17. 途絶えた連絡

 私、宵闇あるまは、SHRを終えた後、みりの用事が終わるのを、校門の前で待っていた。みりから『やること終わらせたら行く』と来た。終わったら改めて連絡するとのことだったので、私は待つ事にしたのだが…


 30分経っても連絡が来ない。用事が長引いているのかな?、と思って、少し学校の方に戻って探してみるものの、その姿は見えない。


 1時間経っても連絡がない…おかしい、みりは仮に遅れるとしたら

『ちょっと手間取ってる』とか『遅れそう』と、そういうメッセージを送ってきてくれる。ただ何もない、というのはこれまでで一度も無かった。


 あるま:ねぇ、どうしたの?、遅れてるの?

 :大丈夫?

 :何かあったなら教えてほしい、

 :ねぇ、なんで何も送ってこないの?


 そして1時間半が経過…なんで?、もしかして忘れて家に帰ってる?。そう思った私は、みりの家に電話をかける事にした。


 プルル、プルル


『はいもしもし、藍星ですけど』

「あ、みりのお母さん?、みりはもう家に帰ってますか」

『え?、帰ってないから、てっきりあるまちゃんと二人でどこかいってると思ってたんだけど…どうかしたの?』

「その…学校が終わってから、連絡が、着かないんです」

『…そう…私からも、連絡してみるわね、後でまた折り返すかもだから』

「はい…わかりました。」


 ……なんで?、なんで?、どうして?、どうして居なくなったの?、私と一緒にいたくなくなったの?、それとも…


「どこかで…事故でもしたんじゃ…?」


 私は恐怖で押し潰されそうになった。公園の水飲み場で少しだけ水を飲んで落ち着こうとする…。


「どうしたの?、お嬢ちゃん、良かったら俺と遊ばない?」


 なんだ、ナンパか…


「うるさい!!!、今それどころじゃないの!!!、話しかけてこないで!!!」


 私の気迫に気押されたのか、ナンパはすごすごと帰っていく。


 そして私は雫ちゃんと、みちるちゃんにも連絡を入れて、どこに行ったか知らない?、と聞いたのだが…


 雫:先輩がどこに行ったか…私は聞いてないですね

 みちる:そうね…授業が終わって、SHRが終わったら足早にどこかに行ってたわね、どうやら何か用事があるみたいだったわ

 あるま:なんの用事か…わかる?

 みちる:直接聞いた話じゃないからわかんないんだけど…靴箱にラブレターが入ってたらしくて、その告白を断りに行っていくみたいなことを言っていたような…そんな気がする。


 ……もしかしたら、その告白の場で何かあった可能性が高い…?…まさか!


 最近、みりを尾行していた不審な人物の存在。同じく最近になって、入ってきた転入生。みりと関わりがあって、みりのことを特別視している可能性が高いということ…それに…


「あの人…どこか私に似ていた…」


 私は、自分自身が重いことを自覚している。ヤンデレなんで呼ばれ方をするのはちょっと不服だけど、それでも愛してくれるみりが大好きだ。だけどもし、みりのことが大好きなのに、相手に拒絶されたら?、気持ち悪いと一蹴されたとしたら?…私はどうするだろうか。


 いつも冗談みたいなノリで、縛るとか監禁とか言ったりしているけど、私もわかっている。これは今、私が幸せだからこそ、ネタで済んでいるんだってことを。もし、黒百合さんがヤンデレで、みりの事が好きで、告白を断られたのだとしたら?、私だったらどうするか?


「………みりが危ない」


 その答えに辿り着いたあるまは、大急ぎでみりの家まで走る。家についてインターホンを鳴らして、お母さんと話をする。


 夜の七時になっても家に帰ってこないみり。いまだに私も、お母さんも、そして雫ちゃん、月乃ちゃんも…誰も連絡がついていない。


「警察に相談した方がいいかもね」


 みりのお母さんはそう言って、近場の交番に向かうことにした…私はその間、家に居させてもらうことに…


「……なんで、なんでこんなことに…!」


 あるまは、みりの居ない部屋で一人泣いていた。


「私がなんの用事なのか聞いていれば!、どこにいくのか聞いていれば!、私が一緒に行くって言っておけばこうはならなかったのに!」


 今の彼女を埋め尽くすのは、大きすぎる後悔の念と、もしみりが帰ってこなくて、また一人になってしまったら、という底知れぬ不安。


 彼女は、みりの母が帰ってくる1時間後まで、身体中の水分がなくなるんじゃないかと思うくらいに泣きじゃくっていた。

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