15. 行き過ぎた感情
「やぁ!、最近どうだい?」
「このやかましさ、柊だな」
学校に着いて、ちょうど廊下に居た柊と話していた。なんだかんだ隣のクラスなので話す機会もそこそこある。
「彼女とはうまくやってる?」
「いつも通り、微笑ましくやってるよ、自分で言うことじゃないのかもしれんが」
「なら良かった…それで、あの転入生は大丈夫なのか?」
「というと?」
この時期に転校するということ自体がかなり珍しく、特殊な事情があるんじゃないかと言うことらしい…なので俺はわかってる範囲で話すことにした。
「もしかしたら…昔会ったことがある…かもしれん、確証はない」
「関わりがあったのか?」
「小学生の頃に印象に残ってる子がいてな、その子と雰囲気も似てるし…その子と下の名前は一緒なんだ」
「下の名前は?、そう言うってことは、苗字が違うってことか?」
「そう、だからおそらくはなんらかの事情があって変わったのか、もしくは全くの別人なのか」
98%くらいの確率で同一人物であるとは思う。本当に確証がないだけなのだ。
「人間嫌いで周りと関わらず、たまにご飯を食べない日もあって、でも勉強はできる、それで、藍星にだけ普通に接すると…何か理由はあるんだろうな」
それこそ昔から知ってる人だから、と言うのも中にあるのかもしれないが…。
「本当のところはよくわからんな、」
気になることがあっても、今はそれを確かめる術がない。だから柊にも、
「何かわかったことがあったら、また教えてくれる?」
「いいぜ、また今度ジュース奢ってくれ」
「それくらいなら」
「俺がクラス全員に配る40本分」
「はっ倒すぞ」
いつもの冗談を交えたやりとりも終わり。毎日を観察しながら、情報を集めながら過ごす毎日…相変わらず、黒百合に見られているような、そんな気がする。普通の視線じゃないというか、妙に気になる粘りつくような視線を感じるのだ。
そのことについてあるまも…
「もうその黒百合って人と関わらないで!」
この怒りようである。流石にここまで視線を向けられてしまうと俺でも気づく。というか本人に隠す気がないように思う。
それに…この前学校から帰る時も、
「なぁ…なんかずっと後ろから視線を感じるんだけど…」
「そうだよね?、やっぱり後ろに何かいるよね?」
誰かに後をつけられているようにも感じる。流石に段々と怖くなってきたのだ。
だから翌日、流石に話を聞いてみることに、
「………」
「………………」
…なんで見てきてるの?、しかもめっちゃ朝早いよ?、黒百合さん、ちょうど俺が来た30秒後くらいに教室に入ってくるんだよね。早く来ても、時間ギリギリに来ても。狙ってるよね?、狙ってやってるよね?
今教室に居るのは、俺と黒百合さんと、毎日爆速で学校に来ている月乃の三人だけ。月乃にはこのことを相談しているし…聞かれても問題はあるまい、だから、話を…
「なぁ…黒百合さん」
「…?、どうかされましたか?」
「…最近…そっちからずっと視線を感じるんよね…もしかして、勘違いだったらごめんなんだけど…ずっとこっち見てる?」
「…なんのことですか?」
いや気づいてるよね、そっちにチラチラ視線を向けると、決まってこっちのことを見ているんだもん。
「いや流石に無理がある、そっちに視線を向けると大体こっち向いてるのは何?」
「いや、あの、それは、その…」
明らかに返答に困っている。
「…その…迷惑でしたか?」
「迷惑かそうじゃないかって言われたら、そうではないんだけど…」
直接的に迷惑をかけられているわけじゃない。ただ、黒百合さんがこっちをずっとみることによって、クラスの人の間であらぬ噂が立つ事によって、間接的に迷惑がかかるのだ。
「クラスの人がそう言うことに敏感なんだ、だからあらぬ噂が立てられたりするし…これからはそう言うことをやめてほしい」
「…わかり……ました……」
彼女は、目を見開いたまま、俯いて、そこから受領が始まるまで、何も喋らす、動くこともなかった。なぜ?、なぜこんなことに?
「…わからないなぁ……」
俺には到底理解することはないであろう相手の行動心理に頭を悩ませながら、今日も授業を受けた。
〜〜〜
『…そう言うことを言うんだ、私にとって、最後に残った希望だったのに…なんで…なんで……なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで〜(略)〜なんでなんでなんで』
彼女の心の中には、闇という言葉すら、通り越してしまうような、歪んだ感情が渦巻いていた。
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おしらせ
※ここから10話ほどかなりシリアスなパートです。その中でラブコメ漫画としてはかなりハードな内容も含んでいます。この先を読み進める場合はその点に注意をしてください。特にその傾向が強いお話は、一番最初の段階で警告文を記載します。
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