11. 看病
「最近は本当に考えることが多くて困る、」
進路のことといい、あるまとのことといい…黒百合のこと。
「最後のが、やっぱ一番大きいかもしれん」
にしても今日は夜の気温が高い。まだ初夏という季節でも無いのに、
「最近の季節の変化は目まぐるしいからな、常識を当てはめてちゃダメか」
そう思った俺は、暑さを緩和するため、窓を開けて寝ることにしたのだが…
「あれ間違いだったなぁ…」
朝目覚めたら、めちゃめちゃに冷え込んでいて。この寒暖差で、俺は風邪をひいてしまった。
「熱は…37.6、薬飲んで寝てたら治るだろうけど…」
「今日はゆっくりしときなさい、学校には休みの連絡を入れておくから」
「ありがと」
そう言って、お母さんは降りて行った…あ、そうだ、あるまに今日は学校休むってことを伝えとかないと…
「これで…よし、」
一通り連絡を終えたところで、急に体のだるさがきた俺は、眠りについてしまうのだった。
「…っと……」
…ん?
「…ちょっと」
誰か居る?
「ちょっと熱出たみたいだね、大丈夫?」
「…あるま?」
あるまが家に居た。あれ、学校があるはずじゃ…
「あれ、学校は…」
「もう午後の四時半、学校終わって帰ってきたところ、朝はびっくりしたんだからね?、せっかくいつもみたいに二人分のお弁当作ったのに、雫ちゃんに食べてもらっちゃった」
もうそんなに寝ていたのか…
「…またお礼言っとくか…って、なんで入ってきてんの?」
弁当のくだりでスルーしそうになったが、なんで病人の部屋に入ってきているんだ?
「恋人が風邪ひいたら看病したいって思うのは普通のことじゃないの?」
「確かにそうかもしれん」
愚問だったか。だけど…
「そんな近くで話してたら風邪がうつっちゃうよ?、そうなったらものすごく申し訳ないから、出来ればすぐ離れてくれると嬉しい」
「え?、一緒にいたくないの?、私は居たい」
「あのなぁ…」
こっちが忍びないというか…いや、もうこれは何を言っても無駄だな。
「…もう煮るなり焼くなり好きにしてください」
「わーい!、じゃあ晩御飯作ってくるね?、朝もお昼も食べれてないんでしょ?、何かお腹に入れなきゃ薬も飲めないし、おかゆでいいよね?」
「…それで大丈夫」
そういうと彼女は足早に階段を降りていった。そして待つこと約20分。
「できたよ〜」
彼女は小さめのお鍋に入ったおかゆを持ってきた。
「味がつきすぎてると今の弱った体にあんまり良くないから、ちょっとだけしか塩入れてないよ、多すぎると食べれないかもだし」
そうしてレンゲで一口分をよそって、
「はい、あ〜ん」
むしゃ、
「…うん、美味しい、ありがと」
「なら良かったよ〜」
口の中にしっかりお米の味が広がる。意図的に冷まされたのだろうか、温かくはあるが熱くはない。しっかり食べやすい温度に調整されていた。
「ちょっと時間がかかってたのはそのせいか」
「熱いまま持っていって、食べる前に、私はふーふーして冷ましても良かったんだけどね〜、毎回やるのは大変かな?、って思ったのと…」
あるまは一息ついて、
「今はみりのことをドキドキさせるんじゃなくて、ゆっくり休んで欲しいって思ったから…ね」
その言葉を聞いて、ちょっとビクッとしてしまう。
「あのなぁ…そういうことを言ってくる方がドキドキするってものじゃないか?」
「それはドキドキっていうより安心感だと思うよ、なんかこういう看病してる時って母性が湧いてくるからさ〜、ほらほら〜調子が悪い時はもっと甘えてくれてもいいんだよ〜」
そういって、あるまは俺が起き上がっている上半身に、優しくハグをしてきた。
「よーしよーし、ゆっくり休んでね〜」
それから自分の部屋の整理整頓と、食べ終えた食器の類いを持って降りていく。
「それじゃ!、また明日学校でね〜、元気になってきてね!」
「ありがと、何から何まで」
彼女は帰って行った。
その段階で、薬が効いて熱が少し下がったのか体が少し楽になったので、お風呂に入って体を洗ってから、明日学校に元気に行くために、布団に入る。
「また、改めてお礼しないとな」
学校終わってからの自由時間を全部こっちに回してくれているのだ。おかげで寂しくなかったし、改めてありがたみを感じることが出来た。何をしてあげるかは、また考えることにして深い眠りについた。
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