10. 過去と今の交わり
なぜ俺は黒百合さんから存外に扱われないのか?、そう不思議に思った俺は、今引っ掛かっている唯一の手がかりになりそうなことを探っていた。
「…少し前に見た…『過去の記憶』」
名前を思い出せない少女。その名前を、小学校時代のクラスアルバムを見ればわかるんじゃないかと、そう思って探しているのだが…
「これマスクしないとホコリやばいな…、鼻が詰まりそうだわ…」
かなり奥底に眠っているのか、取り出すのが難航していた。
「うーー…よいしょっと!」
やっと出てきてくれた。この中を見てみればわかるだろう。
1年ではない、2年でもない、3年…でもない…4年…これか?
俺の夢に出てきた記憶の中に少女、綺麗な黒髪に、きりっとした顔。名前は…
『
下の名前は一緒だ…だが名字が違う?、名字が変わるケースなんてあるのか?。
親が離婚したりすると、親が旧姓に戻ることはあるだろう、だが子供の名前も同時に変わるケース…はあるみたいだな、家裁が絡むけど。
「……苗字は違うが、俺の記憶と一致するところがとても多い…」
つまり…俺のあの記憶の中の少女は…
「…今の…黒百合…美波?」
なぜ彼女は人間嫌いに陥っている?、その中でなぜ俺だけ普通に接する?、正直よくわからない。細かい点を言えば他にもあるが、人間嫌いのことと被るのでここでは割愛する。
「あれは…仮にそうなのだとしたら…いや、まだ決まったわけじゃない、」
俺の中では99.9%答えは出ている。だがそれを確実なものにする…証拠がない。
「第一仕事の都合で引っ越して行ったはず…確かお父さんは結構忙しいくて、都会の方に全員で移ってるはず…なぜこっちに帰ってくる?」
まだ確証がない…もう少し調べられればいいのだが…方法がない。だから俺はそこで情報収集を断念する他なかった。
〜〜〜
翌日、
「さて、今日も昼飯を…ん?」
隣の席の黒百合さん、今日は弁当を持ってきていない。珍しいな、ちゃんとした弁当を毎日持ってきていたのに…何かあったのかな?
「………お腹すいた」
!、とても小さな声だったが、俺が聞き逃さなかった。小さな、微かな声だったが、確かにお腹すいた、と呟いたのを耳にした。
…どうする?、どうするのが正解だ?…
「…こうするか」
俺は財布を持って購買に行って、おにぎりを二つほど購入。味は大体の人が好きな鮭と塩おにぎりだ。これを持って戻って。
「…弁当持ってきてないんだな、これあげる」
「!?、いえ、こんなの貰えませ…」
「いい、別に返さなくても、恩を売りたいわけでもないし、ただ見てられなかっただけ」
そう言って、屋上に足早に向かった。
「あら、今日は遅かったじゃん?」
あるまが俺の分の弁当も持って待っていた。
「すまん、ちょっと授業終わるのが遅くてさ」
「ならまぁ仕方ないね〜」
そうして食べ終えて戻って、普通に授業を受けて…と思っていると…
「…あの!、すいません」
「ん、どうかしましたか、黒百合さん」
黒百合さんが話しかけてきた。
「おにぎり…ありがとうございました、また今度、この分のお金はまた今度返します」
「いや、別にいい、さっきも言ったけど、見てられなかっただけだし、俺が勝手にやったことだ、気にしないで」
「でも、私の気が済まないので!」
そう言われてしまったら受け取らないわけにはいかない…
「いつでもいいから、余裕のある時にでも」
授業終えた時に月乃が、
「ねぇ、みりってそう言うことするタイプだったっけ?、あーいうイケメンムーブ」
「何回も言ったけど、お腹すいてそうにしてるところが見るに堪えなかったからだ。優しくして恩を売ろうとか思ってるわけじゃないし、他意はない」
「でも本人はそう言っても、周りの人はどう受け取るかわかったもんじゃないけどね?」
「………」
周りから向けられる憎悪の視線には正直慣れてしまった感じがあるのだが…、流石にこうも集中狙いされているのはいい気分じゃないな…まぁ俺が悪いんだけどね。
「なぁ月乃、この場、どうにか出来る?」
「うーん、私には無理」
「そこを何とか!」
「無理なものはムーリー」
なんでこんな視線を学校にいる間浴び続けなきゃならんのだ。
そんなことを話しながら月乃は
(まぁこんなことを話してる間もずっと、黒百合さんはこっち見てるんだけどねぇ〜、多分だけどあるまちゃんも教室出たところに居るし、みり、大丈夫かなぁ?)
教室を出たところに、隠れてあるまがスタンバッてることに未だ気づくことはないみりなのであった。
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