9. 天然タラシ

翌日、学校に着いて、


「はい、今週末までに提出だぞー、書き終わったやつはHRまでに出すか、終わり次第出しに来ーい」


俺は昨日書き終えたその紙を、先生の元まで持っていく。すると先生は、


「おぉ、あそこにいくのか…確か先輩の中で何人かだけいたような気がするんだよなぁ…進路資料室に行って探したらおそらく出てくると思う、また放課後にでも行ってみると良い」

「ありがとうございます」


そうして出し終えた後に…


「やっと、決心したのね」

「あぁ、ちゃんとこの道に進むってね」

「ふふ、昨日はまだ迷ってたような顔だったのに、一段といい顔つきになって…昨日何かあった?」

「うん、ちょっとね」


月乃との談笑をして、またいつものように授業を受ける。


どこか窓から見える外の景色が、いつもより綺麗に見えるような、そんな気がする。


「やっぱ進むべき道を据えて、それに向かって進んでいくってのは、いいものだね」

「おい、藍星、次の問題、お前の番だぞ」

「あ、ありがと」


やっべ外の景色を眺めててなんも聞いてない…どうしよう


「ここは、この定理を用いて、こういうふうに計算すれば解けるわよ」

「あ、ありがと、マジで助かる」


隣の席の黒百合美波が解き方を教えてくれたおかげで、なんとか事なきをえる。


「ふふ、大丈夫よ」


…!?、なぜかはわからないが寒気がした。授業中だからあるまが居るわけがない。だからこの寒気の正体は?…周りに視線を向けられているわけでもない…なぜ?、今考えても仕方がない。後で考えよう。


「…にしても本当によくわからん…」


なぜ俺には普通に接するのか?、何か特別な理由が?…そしてまたお昼ご飯の時間


「……最近あの転入生と仲良さそうじゃん」

「なんでかな、理由がマジでわからんけど」

「みりって結構天然タラシなところあるから気をつけた方がいいよ?、その内刺されちゃいそう、私以外から」

「…怖いこと言うなって…縁起でもない」

「そうだよね!、みりのことを刺すのは私だけだから!」

「刺す前提で話進めないでもらえるかな!?」


油断も隙もないというか、なんというか。日常会話がこれなんだがら恐ろしい限り。でもこうは言っても、実際にしてきたことはないし、本人も傷つけたくはないと言っているから、多分大丈夫だろう…うん、多分。


「でもみりと話して好きになりましたって人、結構多いと思うよ?」

「え、そんないなくね?」

「まずみちるちゃんでしょ?、あと雫ちゃんも、最初は何でもなさそうだったのに、どんどん好きになっていった感じだったし、」

「…自覚はないんだけどなぁ…」


本当に、意識してやってはいないよ?、本当に、


「だから天然タラシなの!、もうちょっと抑えて!」

「やろうとしてやってるわけじゃないものを、どうやって抑えろと」

「他の人と喋らないで!」

「そんな殺生せっしょうな」


それは無理があると言うものだ。


「はぁ…これ以上他の人がみりのことを好きになっちゃうと困るの!、私が、私だけが彼女なのに!」

「別どこもいく気なければ、あるま以外にこんな大事にしようと思える人は出てこないと思うよ」

「!!、もー!、そう言うところがずるいしタラシだって言ってんじゃーん!!!」


何だか今日はずっと怒っていたなぁ…とか思いながら教室に戻ると少しざわついている。そうして俺をみるなり、


「「おい、藍星、どう言うことだ!」」

「え、いきなり何?」


クラスの人数名に問い詰められた。


「お前、黒百合さんと知り合いなのか!、面識があるのか!」

「月乃さんといい、宵闇さんといい、なんでお前の周りには可愛い女子がついてるんだこのハーレム野郎が!」


?????


「待て、状況が飲み込めん、一体どうした」


一旦状況を整理しないとわかったもんじゃない。


「教室で一人で弁当を食べていた黒百合さんが、お前の名前を呟いていたんだよ!、あの誰とも喋りたがらない黒百合さんが!」

「というかお前だけ普通に応対できてるのは何なんだ!、俺たちは話しかけようとした瞬間、恐ろしい目で睨まれたんだぞ!」


「それはお前らに下心があったからじゃない?」


「「うるさい!!!」」


事実を言ったまでじゃないか。


「と言っても覚えてないんだよ、これまで関わりがあったのかも、何も、つまりあったことがないと言うことだ」


そう言うと悪態をつきながら帰っていった。なんでコイツばっかり…と呟いていたが…もうちょい自分磨きしたらいいんじゃないの〜、という言葉は内に留めておいた。俺偉い。

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