8. 進路希望調査②
家に帰ってから、臨床心理士について調べたりしていた。
「臨床心理士になるために一体どこに進学すればいいんだ?」
臨床心理士の仕事、役割、なるまでの道筋。
「どうやら近くに、医療福祉大学があるっぽい、その辺の情報をしっかりとっておくか…」
もうあと一年しかない。あまり余裕はないんだってことはわかっているが、
「自分の将来を決める選択、ここで失敗したくはないなぁ…」
情報収集は大事って言うし、どうしても不安になっちゃうことは、誰にでもあると思うんだよね、でも…もし自分に合わなかったら…
「ん?、携帯が振動してるような?」
あるまからLAIN電話がかかってきている。
『あ、やっと出た!、1コール以内には出てよ!、5コールも待たせて!』
「すまんすまん、考え事してた」
お昼に色々話をしてもらったけど、やっぱり自分の心から不安が消えず、迷っていることを伝える。
『みりならきっと、どこに行ってもやって行けると思うんだけどなぁ…それに、』
「それに?」
『みりがどこに行こうと、私はついていく、どこに行っても逃しはしないんだから、絶対離さないって決めたんだから』
そりゃあまた、重たいんじゃないか?、俺がこの深い愛を求めていることから、お似合いなのかもしれないけどね。
『どこに行こうと応援するし、なんならフリーターの引きこもりになっても一緒にいてあげる』
「そうなったらいっそのこと捨ててくれよ、多分そっちの方がお互いのためだと思う」
『やだ!』
世に放ったらダメ人間を量産するか、重すぎて離れられるかの二択だなこれは。
『私だって重い自覚あるもん…でもそれをぶつけてもみりはいつでもそこに居てくれる…知ってる?、重い子ってあんまり好かれないんだよ?』
「人によるとしか言えないと思うんだがな…って、なんの話してんだ」
思いっきり話が脱線したなこりゃ、
『まぁ私は、みりが頑張って前に進んでいくところを、ずっとそばで、一番近くで見守ってるからね〜』
「それは、うん、ありがとな、なんか、ちょっとだけ決心出来た」
『それなら良かったんだよ〜、進路希望調査って言っても、これで決定なわけではないと思うし、でも今後のことを考えなくちゃいけないのって大変だよね〜、だから私は全力で応援する!』
……本当にあるまには助けてもらってばっかりだな。少しでも感謝を返せてるといいんだけどな。
「そろそろご飯よ〜」
おっと、もうそんな時間か。
「それじゃ、もうご飯みたい」
『わかった、また明日ね〜!』
お母さんとの晩御飯。
「なぁ、母さん」
「ん、どうかしたの、そんな顔して」
「…将来って、どうやって決めたらいいと思う?」
普段はご飯中あまり喋らない。だけど今日は、聞いてみたいことがあった。
「そうねぇ…ありきたりな答えになっちゃうけど、まずは自分が後悔しない選択をってね。自分のやりたいことがあるのに、それを抑えて別の道に進んでも、後々こうすれば良かったのかなとか、そうやっていつまで経ってもウダウダ悩むことになるのよ、それに若いうちはなんでも出来るんだから、出来ることは全部チャレンジしときなさい!、お母さんみたいな歳になったらもう新しいこと始められなくなっちゃうから、青春も、進路もね」
…そっか、言われてみればそうだよね。どこに行ってもまず言われるのは『後悔しない選択を』。そう言われてもピンとこない自分が居た。何が自分にとって後悔しない選択なのかが、わかんなかったから。でも、ちょっと今の話で伝わってきたのは、
「…自分のやりたいことをやる…」
「そうよ、若いうちは失敗を恐れず挑戦、次があるんだから、失敗を恐れて何も進めない人間になるより、たくさん失敗して経験を積んでいく方が、よっぽど立派な人間になれるってもんよ」
…今まで自分は、「俺にはこんなこと…」とか「もっといい人がいる…」とか言って、自分が挑戦しないでいた。自分に自信がないからなのか、はたまた挑戦できない理由を探していたのか。
でも、自分には守りたいものがある。進むべき、光に満ちた未来がある。そして、そこに寄り添ってくれる人がいる。
「なら…挑戦してみるよ、この先の未来のために」
「その意気よ」
お母さんが強く背中を押してくれたような、そんな感覚がした。俺は、自分の住んでる県にある、医療福祉大学に目指すことを決めた。
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