7. 進路希望調査
「よしお前らー、三年生になってすぐだが、進路希望調査を配布する。|希望までしっかりと書いて、来週金曜日までに提出しろよー」
朝のHRにて担任がそう言って、進路希望調査の記入表を配布してきた。
「進路…か」
高校三年生。それは青春を謳歌する最後の年である他に、次の人生の道筋を決める重要な年でもある。と言っても俺は、将来やりたいことがはっきりと決まっているわけではない。
〜〜〜
お昼の時間。今日はあるまと月乃と三人で一緒に食べることに、なんだが…
「なんでみちるちゃんがいるわけ…」
あるまは心の底から不満そうである。
「仕方ないじゃん、進路のことで聞くってなったら同年代に頼らなきゃなんだし」
「でも!、私でもいいじゃん!、なんで私じゃないの!」
ぷんぷんと言う効果音が似合いそうな怒り方をしている。
「やっぱり見てて微笑ましいねぇ〜そこのカップルは」
「茶化さないでもらってもいい?」
月乃は月乃で変なことを言ってくるし、そんなこと話してたらあるまが口の中に唐揚げを押し込んできた…
「モガ、ムグ」
「ほら!、美味しいでしょ!」
「ホイヒイ、ホイヒイハラ」
ちょっとちょっと、押し込んでこないで喋れないから、
「ぷはぁ…なんかものの数分でぐっと疲れた…」
疲れすぎて本題を忘れるところだったよ…、でも話をするために一緒にご飯食べてるんだし、それについての話をしなければ、
「なぁ、月乃、進路希望調査の紙もらったけど、何書くか決めてるん?」
「んー、私は勉強したいことあるし、大学行く予定なんだよね〜難しいところは無理そうだけど」
「決まってるんだ…」
「何かやりたいことってのがあったらそこから考えて決めてけると思うんだけどな」
自分のやりたいこと?、なんだ?、自分のやりたいことって。俺はここまであまり考えてこなかったから、あまり浮かんでこない。するとあるまが、
「私はみりと一緒の大学行きたいんだけどなぁ…」
「流石に学力に差がありすぎる、どう頑張ってもあるまに適正の学力の大学には絶対行けない」
そんなところに入ったとてついて行ける気がしない。
「ねぇみり…本当に周りにしてあげたいってこと、ない?」
「…ちょっと思いつかないかも」
うーん、と思い悩んでいると、月乃が、
「みりって、心が弱ってしまった人に手を差し伸べるのが得意なように思うんだよね」
「…ふむ?」
「クラスで困っている人がいたらどうする?」
「できる範囲のことを手伝いながら助ける」
「目の前に泣いてる人がいたら?」
「話を聞いてあげる」
「もうここから動きたくないって思うような、心を塞ぎ込んでしまった人がいたら?」
「傍にいてあげる」
助けられる人がいたら、助けるのが普通じゃないか?
「うん…やっぱり、そう言う方面の仕事に適性があるかも」
「そう言う方面の仕事?」
「臨床心理士、わかりやすく言うとカウンセラーの人とか」
「あー…」
臨床心理士…誰かを支える仕事。確かに自分は、身近にいる人が落ち込んでいたりしたら支えてあげたい、助けてあげたいと思う。だがそれを、不特定多数の人にできるのかと言われたら、正直自信がない。
「……自分には、正直できる気がしない…」
「今は出来なくたっていいの、今出来なくても、いつか人を助けられる人間に、ちょっとずつ成長していくから」
この会話を後ろから静かに聞いていたあるまが、
「私以外の人を、助ける???、私だけを見ててよ」
「…あ、あるま?」
「冗談だよ〜、流石にそこまで束縛するような人じゃないよ〜私は」
何が冗談で、どこまでが本気なのか判断に困るところが本当に怖い。
「でも、みりは本当に、困った時にいつでも傍にいてくれて、助けてくれて、だからこそ、私はみりのことを好きになったんだよ?、だからそんなに心配することもないと思うんだけどなぁ〜」
「そうは言っても、やっぱり難しいものよ」
「もー!、私が言ってるんだから、みりはすごいってことでいいの!、これ以上うだうだ言ったら私怒るよ!!!」
あぁ、そうか。やっぱり俺って、
「幸せ者なんだなぁ…」
「なんで急にそう言うこと言うの!?、私は怒ってるんだよ!」
このやりとりを見ていた月乃は、また微笑みながら、温かい目で、こちらを見ていた。
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