6. 紐解けぬ謎
普通に考えれば、黒百合さんの視点で俺に普通の対応を取る理由がない。やっていることは周りの普通の男子と変わらない。人間嫌いであることから、まず初対面の人に優しくされたところで信用するわけがないのだ。自分も人を信用するにはそこそこの時間がかかる。
(それでも昔よりマシになった)
なんとなく相手の行動の真意が理解できるだけに、今のことがよく理解できない。なぜ?、どうして?。
「……こーれ、考えてもどうにもなんない気がする」
一旦思考を放棄して、授業に集中することにして、あとは帰ってからどうにかするとしよう。
「…さて、今日も授業が終わったな」
SHR…もとい、帰りの会が終わり、俺はとある人物に連絡を入れて、図書館で落ち合うことに。
「先輩…相談したいことがあるってなんですか、私だってそんなに暇じゃないんですよ?」
「どうせ家帰ってゲームするだけの人が、よく言うよ」
"
「今日私がやってるゲームのアプデの日なんですよ!、だから忙しいんです!」
「あれアプデ明けるの夕方の六時だぞ、今四時だからあと二時間もあるぞ」
「うっ…それは……仕方ないですね、不甲斐ない先輩のために話を聞いてあげましょう」
なんだかんだこいつはこうやって話を聞いてくれる優しいやつだと言うことを俺は知っている。そして俺は転校生、 黒百合のことを話した。人間嫌いなのになぜか俺には普通の対応をとってくることも。
「そうですね…こう言っちゃうとあれですけど、先輩ってなんだがナヨナヨしてるじゃありませんか、無害そうというか、自分から仕掛けてこなさそうというか」
「誰がナヨナヨしとるじゃ…言うほどナヨナヨしてない…よな?」
自分のことは自分で判断できないと言うし、実際のところどうなのかはわからないが、
「他の人と違って、自分から仕掛けてくるとかじゃなかったから、冷たく対応じゃなくて、普通にしたんじゃないんですか?」
「いや、だとすると、普通に話しかけてきてくれたクラスの女子を無言で圧かけて追い払う説明が付かない」
言い寄ってくる人が嫌いならそういう男だけを追い払ってたらいいはずだし、人間嫌いなら俺に普通に対応する理由がない。どこか別の理由があるはずなんだが…
「うーん…難しいですね…どこか接点とかないんですか?、その黒百合さんとの」
「ない、記憶の限りでは」
「だとしたら本当に分かりませんね…、原因を突き止めるのに必要な情報がないので、現状で理由とかを説明することはできませんね」
「雨笠でも無理かぁ…」
わからないものは仕方ないのかも知れない。
「んで、私も久しぶりに話すので、結構言いたいことがたまってたんですよ」
「何かあったん」
「その…男子に…今度一緒に遊ばないかって誘われてまして…」
「あぁ、なるほど」
確かにあれ以来、雨笠は可愛くなって、周りの男子から人気を得ている。あるまの協力も相まって、周りの人とうまく関わる術も身につけつつあるようだ。そんな中で、遊びに誘ってくれる人が居たと。
「チャラいやつとかでは…」
「ありません、絶対に」
「一回あるまにも意見を聞いた方がいいと思うけど…変なやつじゃないって思えたなら俺はいいと思うで、ただ、本性を隠してるやつもいるから注意はした方がいいぞ」
そう言うのを見抜くのが上手いのがあるまなんだけどね。だからこそ、一緒にいてもらってるわけだし。
「そう…ですね、気をつけてみます」
ちょっとシュンとしてしまった。
「そういや友達とか増えたんよな、無理して俺の話を聞きにくる必要はないんやで、こっちとしてはありがたい話やけど」
「そんなことないです!!!」
「びっくりした、図書館なのに声大きいって」
気になることをもう一つ聞いたら、図書館で出す声ではないほどの声で反応してきた。
「話すの楽しいし、結構気が楽なんですよ!、先輩と話すのは。だからなにか話すことがあればいつでも呼んでください、飛んでいきますから!」
「…それでいいのかよ」
「それがいいんです、友達より先輩の方が重要ですから」
そう言ってくれる分にはとても嬉しいんだがね。俺なんかより友達の方を優先してほしい、としみじみ思う。
「ま、今日はありがと、また何か話があれば聞いてもらうよ」
「いつでもいいですからね!、メッセージとかでも!」
「OKOKわかったわかった」
熱烈なアプローチ(?)だったな。いい感じの人ができそうなら、そっちの方で頑張って欲しいものだがね。
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