4. 転入生
翌日、新しいクラスに向かい、早くから来ていた月乃と話をしていた。
「なぁ月乃、いきなり見た昔の記憶の夢に、意味はあると思うか?」
「え、いきなりどうしたの?、遂にスピリチュアルなものに目覚めた?」
失敬な、
「いや、実は昨日な…」
俺は昨日みた夢のことについて話した。小学校時代によく話していた女子がいたこと、その子との記憶が、今になって夢として出てきたこと。
「あー…というかその話して、あるまちゃんに何かされなかった?」
「大丈夫」
「なら良か…」
「もうお仕置き喰らった後だから」
「全然良くないじゃない!」
まぁあるまにそう言う話をした時点で何かされることは織り込み済みではあるし、そこまで言うほどのとこでもないだろう。
「でもいきなり夢を見た…と言うのも…話を聞いてる感じ、その子、どこかに転校して行ったのよね?、名前とか覚えてるの?」
「なんか名前だけ思い出せないんだよ」
「そんな名前だけ都合よく忘れてるなんてことある?」
都合よくも何も、
「それ言ったら、こんな夢を見ることの方が都合がいいと言えると俺は思う」
「確かにねぇ…」
これはまた、他の人の意見も聞いてみる必要がありそうだな…
「ただ、私にはその夢に何か意味があるように感じる、転校して行ったその子が帰って来てて、もうすぐ再開する流れだとか、そう言うやつ!、あるじゃん、帰ってきて、再開して、ラブコメが始まるっていう、そう言う作品」
「仮にそうなったとしたら俺はあるまに刺されるんですが」
ここから新たなラブコメを盛り込まれても困ってしまうと言うものだろう。俺にはもう彼女がいるんだからな。
「あ、そろそろHR始まりそうだな、ありがと、話聞いてくれて」
「いいよ〜、後でジュース奢ってね〜」
「!!…いい性格してやがるな本当に」
俺と別れた後からの方が生き生きしてるんじゃないか?、と思った。
そうしてHR。先生が最初に、
「はいじゃあ今日は、今年からの転入生が来てくれているので、昨日来てないこともあって、自己紹介からお願いしようかな」
そういうと、彼女はドアを開けて入ってきた。
「…
それだけ言って彼女は、自分の隣の席についた。50音順での出席番号で最初は席が割り振られているため、まぁそんなもんかと思い納得しておくことにする。
最初の印象として思ったのは、とても暗い。だが俗にいう陰キャのようなものではなく。心の底から周りの人を軽蔑するような、それで周囲の人を寄せ付けないような、そんなオーラを放っている。綺麗でサラッとした黒髪ロングで、しっかり手入れも行き届いていて、容姿も悪くないように思う、まぁそんなジロジロ見たわけではないから細かいところはわからないが。
ただ、一目で気づくくらいには、目が死んでいる。この目は…
「多分、この人は自分以外の誰も信用してないな、これは」
だが一応隣の席ではあるので、挨拶だけはしておく。
「俺は藍星みり、よろしく」
そう言うと彼女はこっちを向いて、一瞬ちょっと驚いたような、そんな表情を見せたが、すぐに戻して、一言だけ言葉をこぼした。
「よろしく」
っと。
昼ごはんの時間。あるまが忙しくて一緒に食べれないと言うことで、事前に弁当を貰っていたので、それを月乃と話しながら食べることにする。話したいこともあったし。
「来たね、黒百合さん」
「そうだな、だがあれは…」
あの虚ろというか、冷たいというか、見る人全てを凍りつかせそうなあの目。
「現に今、一緒にお昼ご飯を食べようと声をかけた男子が三人も撃沈してる。声かけてきた相手を容赦無く言葉で破壊してるというか…なんか恐ろしいな」
「そうだね〜、あれ、男子だけなのかと思ったら、女子にも同じような対応取ってるから、多分人間が嫌いなんじゃないかな?、って思う」
それはあるかもしれない。
「あー…もしかしたら、転校してくる前に何かあった?、よっぽどの理由がない限り、この時期に転校してくることってないと思うんだよね、親の都合とかなら知らないけど」
「そういうの聞けたらいいんだけど、多分自分からは話さないだろうし、聞いても冷たい対応されるだろうし、一旦様子見でいいと思う。だがあれは…」
全員にあの対応をしていると…いつかクラス、いや学校に敵を作りまくることになるぞ?…ちょっと動向を観察しないと行けなさそうだな…
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