姉さん女房
@19910905
第1話
第一話:些細な贖罪(初夏)
美咲は今日も悩む。結婚前に夫を少し騙した罪悪感は、十年経っても胸にくすぶる。
だが、何でもない今日、夫が小さなペンダントをくれた。花を模した可憐なデザイン。
「ありがとう……」
一瞬だけ、優しさに心が満たされ、罪悪感は和らぐ。
第二話:雨の朝(梅雨)
雨音に包まれた朝、夫が出勤前に「傘、持っていきなさい」とささやく。
いつもなら当たり前のことだと思うが、今日は特別に心が温かい。小さな気遣いが、罪悪感の影を押しのける。
第三話:台所の奇跡(夏)
夕食の支度中、夫が「手伝おうか」と声をかける。
美咲は一瞬躊躇する。かつての策略を思い出し、申し訳なさが湧く。
でも、二人で鍋を囲み笑い合う時間が、罪悪感を柔らかく包む。
第四話:深夜の手紙(秋)
寝室で夫の机にそっと置かれた手紙。
「いつもありがとう」
文字は短いが、心を伝える力は大きい。美咲は涙ぐみ、胸の重みが軽くなる。
第五話:小さな誕生日(冬)
誕生日の朝、夫は大きな贈り物ではなく、手作りのカードを差し出す。
「これだけで十分」と微笑む夫。美咲は、罪悪感を一瞬忘れ、喜びを素直に受け取る。
第六話:春の散歩(春)
公園を歩きながら、夫は手を差し出す。美咲はためらいながらも手を握る。
小鳥のさえずり、花の香り、風のそよぎ。何気ない一瞬が、心の奥の罪悪感を少しずつ溶かしていく。
第七話:雨上がりの虹(梅雨明け)
庭先に虹が架かる日、夫婦は肩を寄せて見上げる。
「君が笑うと、僕も幸せだ」と夫が言う。
言葉は短いが、心に深く響き、過去の贖罪を包む。
第八話:初雪の朝(冬)
雪が静かに降る朝、窓の外を眺める美咲。
手にしたココアの温かさが、胸の痛みを和らげる。
夫はそっと肩に手を置き、言葉はなくとも寄り添う。小さな奇跡の瞬間だ。
第九話:夏祭りの夜(夏)
夏祭りの夜、夫婦は浴衣を着て、屋台の光に包まれる。
肩を寄せ、花火を眺めながら、過去の罪も小さな笑いに変わる。
「こんな日々がずっと続けばいい」と美咲は思う。
第十話:十年目の奇跡(総括)
結婚十年目の今日、夫はいつも通り些細な花束を手渡す。
美咲は微笑み、胸の重みを感じながらも、罪悪感が少しずつ溶けていくのを知る。
「ありがとう……」
日常の小さな奇跡が、愛と贖罪を静かに包み込み、二人の時間を豊かにする。
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