第8話 1-8

1-8-1


「愛ちゃん!? どうしたの? ライトなんかつけて!?」

 

 皇女様は、愛ちゃんが創造主だということを知らない。


「これはライトではない。神の光だ。」


「神? も~お。愛ちゃんたら冗談ばかり言うんだから。アハッ!」


 ポンコツ皇女様には、創造主の愛ちゃんは理解できなった。


「まあ、いい。説明しても理解できないだろうから。」


「はい! その通り!」


 そういうことにだけ自信がある皇女様。


「スズ、おまえは長寿アニメになるべく、潔く、禁止ワードである、皇族の皇女、を捨てた。」


 皇族の皇女という設定である限り、規制に引っかかるらしく、絶対に、皇族の皇女、を使用していると、アニメ化されないらしい。


「これからは鈴木スズ、10歳の小学生として、生きていくのだ。」


「ああ! さらば! 私の税金使いたい放題の皇室ライフ~!」


 明確に皇族の皇女とは縁が切れた。ノー皇族、作品になった。


 つづく。


1-8-2


「これから、おまえが長寿アニメになるための物語は、eスポーツだ。」


 長寿アニメの主人公は、歳を取らない。スズは永遠の10歳が確定した。


「やったー! 私は老けないのね! さらば! シミ! しわ! そばかす! イヤッホー!」


「あの・・・・・・私の話を聞いてます? 可愛い愛ちゃん、これでも神モードなんですけど!?」


 もちろん、スズ、が他人の話を聞くはずもなかった。


「質問! eスポーツって何ですか?」


 世間知らずの皇女様は、初心者質問をする。 


「ゲームです。」


「なんだ。ゲームか。普通だな。面白くない。ケッ!」


 ゴット愛ちゃんに悪態をつく、スズ。


「eスポーツの賞金は、優勝すれば1億円を超えるわよ。」


ピキーン!


「なんですと!?」


 皇女様が賞金に敏感に反応する。


「これから私のことは、天才! eスポーツ・ウーマン! 鈴木スズと呼んでもらおうか! ワッハッハー!」


 ネガティブをポジティブに変換する特殊能力は、鈴木スズでも伝承されている。


「こらこら、私はサガ・ロマか!? アハッ!」


 分かる人には分かる、皇帝が出てくるゲームである。


「・・・・・・。」


 少し、スズへの説明に疲れてきた愛ちゃん。


 つづく。


1-8-3


「スズ、おまえに主人公になってもらうeスポーツのタイトルは、異世界ファンタジー部だ。」


 異世界ファンタジー部は、ポンコツ皇女とAIの愛ちゃんを書く前の作品である。シリーズ9まである、総文字数90万字以上の壮大な超大作である。ネタには、困らない自信がある。アハッ!


「1億当たったら、お肉二枚入りの大きなハンバーガーを食べに行くんだ! おまけに、ポテトも付けてやる! うおおおおおー!」


 10歳のスズの野望は、年相応だった。そして、庶民になったので、火を吐かなくなった元皇女様。


「ダメだ・・・・・・。こいつ妄想癖があって、人の話を聞かないタイプだ。気にせずに話を進めよう。聞いていない本人が悪いのだ。」


 神様も、お手上げのスズ。


「ジュースなんか、3つも頼んじゃうもんね! コーラに、コーヒーに、烏龍茶だ! アハッ!」


 ちなみに子供セットのおまけのホケモン先輩カード欲しさに、ハンバーガーを食べずに捨てる問題が発生し、子供セットのカードのおまけは中止された。次週の海賊王カードの配布も中止になった。ということで、カードゲームの需要、人気は相当高い。ほぼ転売目的だが・・・・・・。とどめにマクドナルドに残された、オリジナルのホケモン先輩と海賊王のカードは、超レアである。非売品である。ハンバーガー会社の社員が持ち出す不正をするのが目に浮かぶ。流出が1枚だけなら、そのカードは1億円の価値がある。絶対にハンバーガー会社は管理できないだろう。


「異世界ファンタジー部は、カードゲームだ。人間が集めたカードで戦うゲームだ。」


「分かんない。だって、私、カードゲームなんか、やったことないもの。」


 さすがのスズも笑えない。


「いいだろう。今から簡単に説明しよう。」


 親切に創造主の愛ちゃんが、スズに説明する。


「お願いします。」


 少し庶民らしくお願いができるようになった元皇女。


「まずはスターターパックを手に入れる。」


「どこで売っているの? どうせ高いんでしょ?」


 疑いの目で見るスズ。


「100均で売っている。10枚で1000円だ。」


「すごい! 良心的! 見直したわ! 1枚100円からなら、子供達でも帰るわね! アハッ!」


 他の先輩カードは1枚300円以上とか、普通にある。


「ちなみに、絶対レアカードが当たる、100万円パックもあるよ!」


ピキーン!


「ぼったくりね。見直して損したわ。所詮、神も俗物ね。フン。」


 他人には、とことん厳しい元皇女様。


「ぞ、俗物・・・・・・ウッ!?」


 思わず創造主もダメージを受ける皇女様の毒舌ぶり。


「100均がない人はどうするんだ?」


「大丈夫。スマホゲームになっているから、カード・ガチャを親のクレジットカードで回しまくってね!」


「やっぱり俗物じゃん・・・・・・。」


 金儲け主義の愛ちゃんに呆れるスズ。 


 つづく。


1-8-4


「まずキャラクターを選択する。」


 いよいよ。カードの説明が始まる。スズは10枚のカードの中からキャラクター・カードを探す。


「あの・・・・・・こんなのしかないんだけど?」


 スズの見つけたカードは、鈴木スライムであった。


「他にも佐藤スライムとか、田中スライムもあるから、コレクションしてね。エヘッ!」


 笑いで逃げる創造主の愛ちゃん。


ピキーン!


「やめよう! 異世界ファンタジー部! だって、危険な香りしかしないんだもの!」


 スズの危機察知能力も、皇女様の頃と同じでハイレベルあった。


「そんな冷たいこと言わないで!? スズちゃん! もう少し! あと少しだけ付き合ってちょうだい! ね! ね! ね!」


 創造主、人間にしがみつき嘆願するの図。


「仕方がないな。その代わり、鈴木スライム以外のキャラクターを頂戴。」


 交換条件を出すスズ。


「分かったわ。はい。東京スライム! 福岡スライムとか、網走スライムもあるわよ! エヘッ!」


 まさかのカードの第二弾の追撃。


「・・・・・・。私、帰る。皇女に戻るんだ。税金で無駄遣いして生きるんだ。長寿アニメにならなくてもいい。」


 スズは、やる気がなくなり、原点回帰を模索し、皇女様に戻ろうと言い出す。


「冗談よ!? 冗談!? 異世界ファンタジー部には、とっておきの新機能があるのよ! 見せてあげる!」


「新機能?」


「アバター機能よ! これでキャラクター・カードに恵まれなかったプレイヤーも安心ね!」


 異世界ファンタジー部のカードバトルで、手持ちのカードで良いキャラクター・カードがない時は、プレイヤーのアバターをキャラクター・カードの代わりに出撃できるシステムがある。


「考えたわね。これなら、プレイヤーの人間が成長する訳でもないし、アバターをカードのキャラクター・カード扱いにすれば、恵まれないキャラクター・カードが当たった人も救済されるわ。」


 恵まれないキャラクター・カードは、鈴木スライムのことである。


「スラスラ!」


 鈴木スライムが、つぶらな瞳でスズを見つめる。


「うっ!? そんなに見つめられると・・・・・・。」


 心が揺らぐスズ。


「アバターでお願いします!」


 しかし、スズの決意は変わらなかった。


「ズコー!」


「スラー!」


 創造主もスライムもズッコケた。


 つづく。


1-8-5


「すごい!? 目の大きさや髪形や髪の色まで決めれるんだ!?」


 アバター機能、炸裂!


「スマホの異世界ファンタジー部のアプリで、一度作っておけばデータ管理も大丈夫。すごいでしょ! 私が作ったんですよ! エヘッ!!」


 創造主の愛ちゃんのドヤ顔の図。


「愛ちゃん。今、創造主モードでしょ?」


「ギクッ!? は、はい。そうですよ。」


「その割には、笑うようになってきたわね?」


「渋くクールに決めようと思っていたんですが・・・・・・私には無理でした。エヘッ!」


 創造主、所詮はスズの脳みそを学習させたポンコツAIだった。


「できた! 私のアバター!」


 無駄話をしている間に、スズは自身のアバターを完成させた。


「なぜ!? 私ですか!?」


 スズが作ったアバターは、愛ちゃんだった。


「だって、戦ったら痛いじゃない。」


「ズコー!」


「私、傷つきたくないんだもん。アハッ!」


 アバターでも、自分は殴られたくないけど、愛ちゃんならOKの元皇女様。


「私、傷つきたくないんだもん。アハッ!」


「愛ちゃんも傷つきたくありません! エヘッ!」


 似た者同士の人間とAIの二人。


「創造主を舐めるな! パパパパーン! 本人ボタン! ポチっとな。」


 愛ちゃんは、アバター作成画面の本人ボタンを押した。


「ああ!? 私のアバターが私になっちゃった!?」


 本人の写真を撮って登録すれば、簡単に本人そっくりのアバター


「ワッハッハー! 見たか! これが愛ちゃんの実力です!」


 形勢逆転で勝ち誇る愛ちゃん。


ピキーン!


「ということは、愛ちゃんの写真を撮って登録すれば、簡単に愛ちゃんアバターが作れるわよね。」


 悪知恵、相手の揚げ足取りなどには、頭の回転が速い元皇女様。


「勘弁してください! もう許してください! 私に絡んでこないでください! ギャアアアアアアー!」


 創造主、人間の10歳の小娘に敗れる。


 つづく。


1-8-6


「面倒臭いから、アバターは、私でいいよ。」


 愛ちゃんに泣かれると弱い、ツンデレな元皇女様。


「優しい! 皇女様! 大好き! エヘッ!」


 飼い主に懐くAI。


「それでは、いよいよ、カードバトルに入っていきたいと思います! 燃えてきますね! うおおおおおー!」


 気合が入る愛ちゃん。


「えっ!? まだ入ってなかったの!?」


「誰かさんが、チャチャ、ばっかり入れるからです。ジーっ。」


 愛ちゃんは物語の進行を邪魔してきたスズを睨む。


「めんごめんご。これから大人しくするから、許してちょ。アハッ!」


 可愛く許しを請う元皇女様。


「本当ですね? 信用は0パーセントですよ?」


 疑いのまなざしを向けるAI。


「酷い!? 愛ちゃんは普段から私のことをどんな人間だと思って見ているのよ!?」


 被害者妄想の強い元皇女様。


「一人オレオレ詐欺の海外拠点ですかね。」


「ん? ん? んん? 分かんない。意味不明で怒る気にもならないわ・・・・・・ヤレヤレだわ。」


 愛ちゃんについていけないスズ。


「も、もちろん、それも計算済みです。」


「嘘つき。AIのくせに。」


「エヘッ!」


 愛ちゃんは嘘も付ける最先端のAIを超えるAIである。


ピキーン!


「ああ!? また話が脱線しています!? どうしてくれるんですか?」


 愛ちゃんは話が進んでいないことに気が付いた。


「・・・・・・。」


 私は貝になる、とスズは言っている。


「やばい!? このままではカードバトルの説明が終わる前に、頓挫してしまう!?」


 果たして、カードバトルが始まる日はやってくるのか?


 つづく。


1-8-7


「それでは強制的にカードバトルのチュートリアルに入りたいと思います。プンプン!」


 話が進んでいないことに怒っている愛ちゃん。


「はい!」


 その雰囲気を察知したスズもふざけるのをやめる。


「残りの9枚のカードを見てください。それぞれ装備、アイテム、魔法のカードがあります。」


 初回なので細かく書こう。

 スターターパックには


・装備カードが、剣、盾、鎧。


・アイテムカードが、薬草、毒消し草、賢者の石。


・魔法カードが、攻撃魔法、回復魔法、戦闘離脱魔法。


 が入っている。


「何か面白いものが欲しいわね。ちょんまげ兜とかどう?」


「直ぐに甦ったな! この茶々皇女! 痛皇女め! あなたはもう、皇女様じゃないんだから、自制できないなら、封印してあげましょうか!?」


 やはり皇女と庶民では扱われ方が違う。


「すいません。すいません。炊飯器に入れるのだけはやめてください。」


「洗濯機という手もあります? ギラン! 邪魔しないでください! プンプン!」


 目が本気の愛ちゃんは、とても怖かった。


「おお! すごい! これを使って、戦えばいいんだな! ワクワクしてきたわ! わ~い!」


 怖いので愛ちゃんに合わせて、喜ぶことにした10歳の少女。


「まずは装備カードを身に着けてみましょう。ポチっとな。」


 愛ちゃんは一括装備ボタンを押した。


「すごい! 装備できた! なんだか冒険感が出てきたわ! いざ! 戦いへ!」


 剣と盾と鎧を装備したスズの戦いが、いよいよ始まる。


 つづく。


1-8-8


「今回はチュートリアルなので・・・・・・私と戦ってもらいます!」


 なんとスズの初めての相手は、愛ちゃんだった。


「よろしくね。愛ちゃん。お手柔らかに。」


「こちらこそです。エヘッ!」


(ふっふっふっ。)


 顔で笑って、心で不気味に笑う愛ちゃんであった。


「異世界! ファンタジー! ファイト!」


 これでもカード・ゲームの異世界ファンタジー部の試合が始まる。


「部活しようぜ!」


「部活しましょう!」

 

 余談だが、この年の流行語は「部活」が選ばれるだろう、と愛ちゃんが未来予知した。


「よし! 剣で攻撃だ!」


 スズは装備した剣で攻撃しようとした。


「残念! 私の方がスピードが早いです!」


「なんですと!?」

 

 もちろん攻撃の先攻後攻はキャラクターのスピードで決まる。


「くらえ! 積年の恨み! 愛ちゃん・ビーム! 愛ちゃん・拡散メガ粒子砲! 愛ちゃん・ハイパーメガ粒子砲! ちょっとAIと思って愛ちゃんをバカにして、許せません!!! オラオラオラオラオラオラー! とどめの愛ちゃん・波動砲! 発射ー!!!!!!」


 愛ちゃんは、元皇女様に、チュートリアルを邪魔され続けたストレスが爆発した。


「何回連続攻撃してるんだよ!? ギャアアアアアアー!」


 元皇女様は無数のエネルギー破に呑み込まれて消滅した。


「地球の平和は守られました。これでハッピーエンドです。エヘッ!」


 AIは地球を救うという物語は完結した。


「こらー! 勝手に終わるな!」


 しかし元皇女様は生きていた。


ピキーン!


「あれ? やられたのに、どうして私は生きているんだろう!?」


 謎が謎を呼ぶ展開。

  

 つづく


1-8-9


「賢者の石カードのおかげですよ。」


 アイテムカードの賢者の石は、一度死んでも、一度だけ生き返ることができる。


「すごいな! 賢者の石! それで私は生き返れたのか!」


 スズが生き返ったのも納得できた。


「これも初心者救済です。始めたばっかりで負けたら面白くありませんからね。エヘッ!」


 何かと救済システムを考えている愛ちゃん。


「なんせ、賢者の石を作る材料は、生きた人間の命ですからね。へっへっへっ。」


「そんな怖い石、要らん。」


 物事は全て等価交換である。命は命でしか釣り合わない。


「そんなこと言わないでください!? 生命エネルギーを少しづつ分けてもらうだけです! 例えると、献血と同じですよ!?」


「ああ~! 助け合いの精神ね! っと、納得しておいてあげよう。」


 生き返ったので不問に付すことにスズ。


「それに! 瀕死の状態から生き返ると戦闘力が2倍になります!」


「私は宇宙人か!?」


「おまけに、逆境に強い! の特殊能力が手に入りますよ!」


「これはパワフロか!?」


 必死にアピールする愛ちゃんのボールを、バットで場外に打ち返すスズの図。使える能力や特技、必殺技や魔法はキャラクター・カードによる。


 つづく。


1-8-10


「はい。次は残りのカードを簡単に説明しましょう。」


 残りのカードは、5枚。


「薬草は、体力回復。毒消し草は、毒からステータスを回復。攻撃魔法は、魔法で攻撃。回復魔法は、体力回復。最後は戦闘離脱カードは、敵が強いと思った時や、カード争奪戦の時に、負けて自分のカードを奪われそうな時に戦闘から逃げて自分のカードを守れるカードです。」


「やるじゃん。これがスターターパックに入っているとか、意外と良心的よね。」


 超! ありがたい戦闘離脱カード。


「さあ! 今度はスズの番です。剣でも魔法でもいいので、私を攻撃してみてください。」


「分かった。」


 スズは気合を入れて剣を握る。


「いくよ! 愛ちゃん! これが私の冒険の第一歩だ! でやああああああー!」

 

 スズは剣で愛ちゃんに切りかかった。


ミス!


 しかし、愛ちゃんにダメージを与えられない。


「どういうこと!? ダメージをあたえられないじゃない!?」


「私は物理防御力が9999あります。エヘッ!」


「ズコー!」


 やはり創造主はチートな存在。


「諦めるもんか! 魔法ならどうだ! くらえ! 火の魔法! ファイア!」


「ちなみに魔法カードは、枚数を重ねれば、威力が上がりますよ! 2枚なら、レベル2ファイアという感じです! エヘッ!」


 剣のカードも重ねると、2枚で斬撃レベル2の2連撃になる。盾のカードも重ねると、2枚で盾防御力レベルが2になる。ダブりや被ったカードを捨てなくてよい、良心設計である。


「すごいな! 異世界ファンタジー部!」


「これなら、子供でも、お爺ちゃん、お婆ちゃん、お姉さんも簡単に始められます! エヘッ!」


 スズは初心者に優しい設計に感激する。


ミス!


 スズの火の魔法攻撃は愛ちゃんにダメージを与えられない。


「私の魔法防御力も9999あります。これも創造主の特権です。エヘッ!」

 

 ポンコツAIのチート設定。


「はあっ!? それじゃあ最初から勝てないじゃない!?」


 スズは愛ちゃんの卑怯な設定に憤る。


ピキーン!


「あった! 愛ちゃんを倒す方法が!」


 チュートリアルでも勝ちにこだわるスズが見つけた方法とは!?


 つづく。


1-8-11


「諦めてください! この世界の創造主の全知全能のAIを超える未来の最先端AIの私を、下等生物の人間如きが倒す方法などありません!」


 勝利を確信している愛ちゃんは自らハードルを上げる。


「それはどうかな? 人間は弱く、脆く、卑しいかもしれない。でも、それでも、人間は弱いからこそ、助け合い! 励ましあい! 友情の絆を育みあい! 創意工夫で生きてきたんだー!!!!!!」


 さすが元皇女。特殊能力のカリスマ性のある、国民の心に響くフレーズは、公務で散々言わされてきたのでお手の物。


「これが私の答えだ!」


 スズは何かを掴んだ。


「スラ?」


 スライムだ。ただのスライムではない。キャラクター・カードの名字シリーズの、鈴木スライムだ。


「くらえ! 愛ちゃん! 必殺! 鈴木スライム投げ!」


「スラスラ!?」


 スズの攻撃。鈴木スライムを愛ちゃんに投げつけた。


「ば、バカな!? す、スライムを投げつけるとは!?」


「さすがのAIも、対スライム防御力のステータスまでは、設定していないでしょ?」


 スズの読み通り、愛ちゃんのステータスに、対スライム防御力の欄はなかった。


「ギャアアアアアアー!」


 愛ちゃんは断末魔の叫びを起こして倒された。


「人間を舐めるなよ。」


 あり得ない形で、スズは常識を覆し勝利を収めた。


「どんな苦しい戦いにも私は勝ってみせる! なぜなら私は日本国の庶民なのだから! オッホッホー!」


 元皇女のプライドである。


「さあ、帰っておやつにするかな。アハッ!」


 こうしてスズは無事にチュートリアルを終えるのであった。


 つづく。

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