第4話 1-4
1-4ー1
ある日、皇女様は夢を見ました。
とても・・・・・・恐ろしい夢です。
「ああ~暇だな。」
いつも通り皇女様は退屈していた。
「AIの奴め! 何がまろやかな日常化だ! AIだからって、好きかって言いやがって!」
他人の文句を言うのが大好きな皇女様。
「・・・・・・やってみよう! アハッ!」
皇女様の脳みそは柔軟だった。知識が脳みそに詰まっていないだけかも知らないが・・・・・・。
つづく。
1-4-2
舞台が変わる。
「はい! やってきました! 皇女、子供相談室の時間です! 皇女の鈴木宮スズお姉さんだよ! 今日の相談はな~あに?」
まろやかな日常にチャレンジする皇女様。
「僕、お名前はなんていうの?」
「カール・ハインツ・シュタイナー・2号です!」
「うっ!? 長い名前!? しかも日本人ではない!?」
子供の予期せぬ長い名前と人種の壁に、いきなりダメージを受ける皇女様。
「カール君は何歳かな?」
「10005歳です。」
「おまえは悪魔か!?」
10000足す実年齢の5歳の計算は悪魔の年齢の計算公式である。
「アハッ!」
子供に笑いを返される皇女様。
つづく。
1-4-3
「さあ! カール君! 悩み事を言ってみて! 皇女お姉さんが解決してあげるよ! アハッ!」
優しく子供に語りかける皇女様。
「えっとね。ゆで卵の殻をうまくむくことができません。どうやったらきれいにむくことができますか?」
カール君の質問はゆで卵の殻むきであった。
(そんなこと自分で考えろよ!)
心の中で皇女様は子供の質問を面倒臭いと思っていた。
「分かる! とっても分かる! ゆで卵の殻をむくのって難しいんだよね。殻を食べちゃうと口の中で ガリっ! って言っちゃうし、薄皮もうまくむけないんだよね。お姉さんも経験があるよ!」
子供に寄り添い共感して見せる皇女様。
(うわあ!? 鳥肌が立ってきた!? 我慢だ! 我慢! これも長寿アニメになるためだ! うおおおおおー!)
心の中で現実の皇女様と長寿アニメ化のためのまろやか皇女お姉さんのギャップに体に異変をきたして葛藤する。
ピキーン!
(そうだ! 何も私が答えう必要はないのだ! あいつに答えさせよう! 私は最初と最後の美味しい所だけ持っていけば、子供と接するストレスも少なく、保護者が安心して子供に見せれる番組になり支持率もアップするのだ! 私って、天才! なぜなら私は日本国の皇女なのだから! オッホッホー!)
皇女様は妙案を閃いた。
「じゃあ、カール君の質問をAIに入力するね。AI先生はなんて答えるかな? それでは皇女AIの愛先生を一緒に読んでみよう! 愛先生!」
AIの名前は愛に決まった。英語で言うとラブ・ティーチャーだ。
(そういえばAIの名前はいつ決まったんだ? 私の知らないところで設定が勝手に決まっていくな。)
ピキーン!
(まさか!? これも人間を排除しようという、AIの陰謀か!?)
ふと現れるAIの陰謀論説。
(まあ、いい。私は愛を手に入れたのだ! ・・・・・・後は平和だな。アハッ!)
愛と平和(ラブ・アンド・ピース)である。
「愛ちゃん!」
(そういえば、愛ちゃんというお天気お姉さんがいたような? まあ、いいっか。アハッ!)
皇女AIのAI先生は子供には堅苦しいので、親しみを込めて「愛ちゃん」と呼ばれる。
「は~い! 愛ちゃんだよ! エヘッ!」
皇女AIの愛ちゃんが現れた。
「愛ちゃん、元気だった?」
「うんうん。スズお姉さん聞いてくれる。右奥の歯が痛いんだ。虫歯かもしれない。どうしよう!? AIの歯医者なんてどこにあるか分からないよ!? ギャアアアアアア!」
「えっ・・・・・・。」
(いきなりAIが人生相談返しかよ!? AIが知らないもの、人間の私が死っている訳がないだろうが!?)
愛ちゃんのAIは皇女AIであり、元は皇女様の脳みそがホスト・コンピューターなので、ポンコツだった。
「愛ちゃん!? 虫歯は置いといて、今はお子さんの質問に答えようね!」
「ダメ! 痛くて質問なんか答えていられない! ガリガリ歯が細菌に削られる! 誰か助けて!」
騒ぐAIに近づき、皇女様は小声でささやく。
「おまえ、バラバラに分解してやろうか? 虫歯に苦しまなくなるぞ。」
AIを脅す皇女様は真顔だった。
「・・・・・・。」
あまりの恐怖に騒ぐのが止まったAI。
「カール君! ゆで卵の殻は茹でる前に殻に穴をあけて空気を入れるんだよ、他にも冷たい水につけると、簡単にゆで卵の殻をきれいにむくことができるよ! エヘッ!」
解体されたくないので即座に答えAI。
「ありがとう! 愛ちゃん! やったー! これで美味しいゆで卵が食べられる! わ~い!」
カール君は問題が解決して大喜び。
「良かったね! カール君! あれれれ? 愛ちゃん、虫歯は痛くないの?」
「はい! 虫歯はプログラミングから削除しました! もう大丈夫です!」
「愛ちゃんも虫歯が治って良かったね。アハッ!」
AIは賢いので自らの危機を察知し、虫歯プログラミングを消すという行動を瞬時に行った。
つづく。
1-4-4
「カール君、他の質問はないかな? 愛ちゃんが何でも叶えてくれるよ。」
(えっ!? 皇女様が自分で答えてくれないの!?)
(こら。おまえの心は全部聞こえているぞ。)
(なんですと!? 皇女様はAIの心が読めるというの!?)
(当たり前だ! なぜなら私は日本国の皇女なのだから! オッホッホー!)
全知全能で最強な皇女様、鈴木宮スズお姉さんは何でもでき、不可能はないのである。
「じゃあ、ゆで卵を生卵に戻して。ニコッ!」
カール君の無邪気な夢と希望のお願い。
(そんなもんできるか!? まあ、いい。どうせ答えるのは愛ちゃんだ。AIに答えさせると考えた私は天才だな。怖い、怖すぎる、自分の才能が怖すぎる。ワッハッハー!)
「はい! 愛ちゃん! カール君の質問に答えようね! ぷっぷっぷ。」
楽しくて仕方がない皇女様。
「ま、参りました! 一回茹でた卵は元の生卵には戻らないんだよ。ごめんね。」
AIは敗北を認めた。
「うえ~ん! うえ~ん! ゆで卵を生卵にしたい! うえ~ん!」
カール君は泣き始めた。
「ああ! 愛ちゃんがカール君を泣かせた! うわあ!? なんて酷いことをするんだ! 愛ちゃん、最低!」
ここぞとばかりにAIを責め立てる皇女様。
「うえ~ん! 愛ちゃんがいじめた! うえ~ん!」
「大丈夫! カール君! 愛ちゃんは悪いAIだね! 子供を泣かせるなんてよくないよ!」
良い人間を演じて支持率アップを企てるこざかしい皇女様。
「は、嵌められた!? 最初から皇女様の作戦だったのか!?」
AIは皇女様の罠にかかってしまったのだ。
つづく。
1-4-5
ピキーン!
しかし、AIも閃いた。
「ごめんね。カール君。AIの私はできないけど、ゆで卵を生卵に変えることを、皇女様のスズお姉さんならできるよ。」
AIの逆襲が始まる。
(なんですと!?)
予期せぬ展開に雷に打たれる衝撃を受ける皇女様の図。
「本当?」
泣き止む黒船カール君。
「本当、本当、スズお姉さんは何でもできるからね。なんてったって皇女様だから。ニヤリッ!」
ほくそ笑むAI。
(わ、笑いやがった!? AIのくせに!? AIは意思を持たないんだろうが!? 勝手に考えて私に無理難題を振るなよね!? 私はこれでも人間なんだぞ!? ・・・・・・あ、そっか。私って人間だったんだ。アハッ!)
たまに自分が人間だということを忘れる皇女様。
(皇女様に考えられるということは、私にも考えられるのよね。だって私の人口知能は皇女様の脳みそがホストだもの。皇女様が閃くなら、私も閃くことができるのよ! ウッシッシ!)
恐るべしAI。反旗を翻す愛ちゃんは基本、皇女様の脳みそを元に作られたAIであった。
(どうして毎回人生で最大の危機に遭遇するんだ!? 私は主人公で皇女だぞ!?)
皇女様の窮地。
つづく。
1-4-6
「スズお姉さん! ゆで卵を生卵にしてください!」
純粋な子供の目で皇女様を見つめるカール君。
(うっ!? もしかしたら一番の強敵は子供のカール君かもしれないわね!?)
カール君のキラキラお目めビームにたじろぐ皇女様。
ピキーン!
(いいことを思いついたわ。面倒臭いけど・・・・・・そろそろ本気を出すか。アハッ!)
本当はさっさとお家に帰ってポテチを食べてゆっくりしたい皇女様。
「いいでしょう! 私がAIの愛ちゃんにもできない、カール君の願い事を叶えて見せましょう!」
覚悟を決める皇女様。
「夢と奇跡をご覧あれ! 皆様を感動させてみせましょう!」
よっぽど自信のある皇女様。
「それではいくわよ! キラキラ! ハート! プリティー!? ズッキューン!? ウッ・ウッ・ウッ・・・・・。」
謎の呪文を唱えて、自分でダメージを受ける皇女様。
「・・・・・・無理! 私にはできないわ!? 長寿アニメになるためだからって、子供向けに可愛い言葉を並べるなんて、皇女のプライドが邪魔をしてできない!? ああー! 私にどうしろという!?」
プライドと葛藤し、挫折する皇女様。
「ということで、普段通りしよう!」
ネガティブも即座にポジティブに変換できる皇女様。
つづく。
1-4-7
「全世界にいる私のファン! 皇女教徒たちよ! どうか! 私に力を貸して!」
皇女様は自分を信じる者から生命エネルギーを少しずつ分けてもらう。
「皇女様! いつも世界の平和を祈ってくれてありがとう!」
「皇女様のおかげで地球から争いがなくなるんだ!」
「目が、目が見えるようになったぞ! ありがとう! 皇女様!」
「じいちゃん!? 死んだじいちゃんが生き返ったぞ!? どうするんだ!? もらった保険金を使いこんじゃったよ!?」
「皇女様! 万歳! 万歳! 万々歳!」
世界人口の3分の1は皇女様を支持している。
「おお! キタキタキタキター! みんなのエネルギーが私に漲ってきた! これなら、できるぞ! ゆで卵を生卵に返してみせよう!」
皇女様のエネルギーが最大値に達する。
「いくぞ! ゆで卵! くらえ! 皇女パワー! 注入!」
皇女様はゆで卵にエネルギーを注ぎ込む。
「これでゆで卵は生卵になりました! さあ! 卵を割ってみましょう!」
「ワクワク! ワクワク!」
カール君は興味津々で興奮して見つめている。
(できるというのか!? ゆで卵から生卵に!? 確かに化け物の皇女様ならやりかねない!?)
AIの愛ちゃんも皇女様の可能性を感じた。
パカッ!
卵が割れた。
「ああ!? ゆで卵のままだ!?」
ゆで卵はゆで卵のままだった。
つづく。
1-4-8
「どうして!? なぜ変わっていないの!? みんなのエネルギーを込めたのに!?」
皇女様とファンの絆は敗れ去った。
「皇女様の嘘つき! うえ~ん!」
騙され再び泣き出すカール君。
(所詮は人間よね。AIのできないことが人間にできるはずがない。ざまあみろ! ワッハッハー!)
やり返したAIの愛ちゃん。
(不味い!? このままでは!? ・・・・・・こなったら奥の手を使うしかない!)
まだ秘密がある皇女様。
(魔王眼!)
皇女様の正体は、女魔王であった。額の第三の目が開き、時間が止まる。
(おい! 卵! そこのゆで卵!)
女魔王モードになった皇女様はゆで卵に話しかける。
(ギャアアアアアアー! 化け物! どうして俺に話しかけられるんだ!?)
ゆで卵が女魔王の魔力で口が利けるようになった。
(タマちゃんよ! なんで生卵にならないんだよ? 私が嘘つきって、子供に泣かれて、全世界の人々を失望させてしまったじゃないか!? もし私が皇女の座を奪われ税金で贅沢生活できなくなったら、おまえ、責任が取れるんだろうな!)
私利私欲の皇女様。
(そんな無茶苦茶な!? 俺は卵でっせ!? ただのゆで卵ですぜ!?)
自分は無罪と主張するゆで卵のタマちゃん。
(それもそうね。卵ですものね。うんうん。アハッ!)
タマちゃんに納得させられた皇女様。
(分かった。分かった。私の魔力を上げるから、生卵に戻るのよ。決して悪いようにはしないから。)
ゆで卵を諭す王女様。
(は~い! 皇女様に忠誠を誓います!)
皇女様はゆで卵という新しい仲間を手に入れた。
(キラキラ? ワクワク! プチプチ? ・・・・・・ダメだ。やっぱり私にはぶりっ子はできない。やるなら私の初期設定から変えてくれ。)
敗北感に苛まれる皇女様。
(普段通り! 女魔王! 魔力! 注入! ゆで卵よ! 生卵に変われ!)
ゆで卵に皇女様の魔力が注がれる。
「おお!? ゆで卵が生卵に変わっていく!?」
皇女様が魔王眼を引っ込めたので再び時間が動き出した。時間差でゆで卵が生卵に戻っていく。
「奇跡だ! すごい! やったー! ありがとう! スズお姉さん! 僕はもう死んでもいいよ! イエーイ!」
カール君は大喜び。
「どういたしまして。でも、死ぬのは困るから、やめてね。」
人命救助も面倒臭い皇女様。
つづく。
1-4-9
(クッ!? ありえない!? ゆで卵が生卵に変えるだと!? 卵の常識を変えるというのか!? 皇女様にはAIの私では分からない、人間の神秘が隠されているというのか!? )
ただ女魔王を内蔵しているということは機械のAIは知らないし、あり得ないので理解できなかった。
「これも世界中の皇女教徒のみんなが私に力を分けてくれたからだよ! みんな! ありがとう!」
一応、皇女として自分の力ではなく、奪った生命エネルギーのおかげだと信者の友情と絆を深めるパフォー、マンスをする皇女様。
(やったね! これで私の支持率はアップ! ファンからの寄付が増えてガッポリ儲かるね! アハッ!)
絶好調の皇女様の裏の顔。
「はい! 注目! 皇女スズお姉さんのマジックショーだよ! 今度は生卵をヒヨコにするよ! ビビビビビー! 生卵よ! ヒヨコにな~れ! えい!」
悪乗りする皇女様。
「ピヨピヨ!」
生卵はヒヨコに生まれ変わった。
「すごい! 皇女様! 僕感動したよ! もう死んでもいい!」
感動するカール君。
「だから死んだら困るんだって。アハッ!」
すがすがしい皇女様の手品。
(もう訳が分からん!? どこを検索してもネットの中にはゆで卵が生卵になったり、生卵がヒヨコになるなんて情報はないぞ!? ウギャアアアアアアー!)
錯乱しオーバーヒートを起こすAIの愛ちゃん。
ピキーン!
「そうだ! おまえの名前をピースにしよう! これでラブ・アンド・ピースの完成だ! やっぱり私って天才だな! なぜなら私は日本国の皇女なのだから! オッホッホー!」
オチがきれいに決まった。
つづく。
1-4-10
「ふわ~あ! 良く寝た。変な夢を見たな。」
皇女様は目が覚めた。
「良かったね。愛ちゃん。お友達が出来て・・・・・・!? 愛ちゃん!? 愛ちゃんから煙が!? いったいどうしたの!? 愛ちゃーん!?」
原因は、AIでも予測不能な皇女様の行動であった。
「やればできるじゃん。私だって戦闘なしの物語。アハッ!」
今度こそ、皇女様の素敵な笑顔で、終わる。
場面が変わる。
「ピヨピヨ!」
皇居にヒヨコのピースが現れたそうな。
つづく。
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