ポンコツ皇女とAIの愛ちゃん 1
渋谷かな
第1話 1-1
1-1-1
「スズ皇女様!」
「皇女様! かわいい!」
「皇女様! 万歳! 万歳! 万々歳!」
国民が皇女様の挨拶会に大勢詰めかけている。
「どうも。皇女です。ごきげんよう。オホホホホッ。」
皇女様が皇居の「宮殿東庭(とうてい)」に面した「長和殿(ちょうわでん)」のベランダで笑顔で手を振っている。皇族と国民の微笑ましい図である。
(・・・・・・疲れる。)
私は、皇女の鈴木宮スズ。
(いったい何時まで笑顔で手を振っていればいいのよ!? 笑い過ぎで、しわが増えたら、誰が責任を取ってくれるんだ!? 痛い!? 手が痛い!? 腱鞘炎だわ!? ああ! 神様! どうか皇女の私に人権をお与えください! 神様~!)
実は皇女もつらいよ、これが皇女様の本音です。
「ポンコツ皇女とAIの愛ちゃん」
ここでタイトルがカットイン。
つづく。
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(サト、分かっているな。そろそろだ。)
私の従者の佐藤サト。
(はい。皇女様。)
何も言わなくても、目配せで皇女様の意図を理解する従者。
ピピピピピー!
その時、警報音が鳴り響く。
「避難してください! 近隣で火災が発生しました! 本日の皇女様のご挨拶会は中止します! 速やかに逃げてください!」
皇居にアナウンスが流れる。
「火事!? 逃げろ!」
「死にたくない! 皇女様なんか見なくてもいい! 自分が生き残る方が優先だ! キャアアアアアアー!」
人々は一斉に逃げ出した。
数分後
「今の火災は誤報でした。」
皇居に訂正のアナウンスが流れる。
「・・・・・・私って、いったい!? 本当に国の象徴なのよね? 」
カリスマ性がゼロの皇居に誰も残っていなかった。
「どうせ、私なんか・・・・・・。」
いじける皇女様に、寒い風が吹いている。
ここで画面が暗くなり、寂しい音楽が流れ、皇女様にスポットライトが当たる。
「皇女です・・・・・・火事と聞いても、きっと私の信者は残ってくれると思ったとです・・・・・・誰もいなくなりました・・・・・・皇女です・・・・・・皇女です。」
ピロシ風の芸もこなせる皇女様。
つづく。
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「やっぱりアニメはいいわね! 面白いわ! アハッ!」
皇女様の趣味は部屋で一人でアニメを見ることである。
「・・・・・・クスン。ウルウル。うえ~ん!」
しかし、皇女様はいきなり泣き出し声を荒げた。
「もう皇女なんて嫌だ。私も、アニメの主人公になって、自由に空を飛びたいな・・・・・・。」
皇女のプレッシャーに情緒不安定になっている皇女様であった。
「皇女様。頑張ってください。」
従者が皇女様を心配する。
「あなたに私の何が分かるっていうのよ!? 私の部屋に勝手に入ってくるな! この変態!」
皇女様は変質者を追い出す。
つづく。
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「アアアアアー! やってられん! ストレスが溜まる! うおおおおおー!」
公務のストレスが溜まる皇女様は発狂する。
ピキーン!
「そうだ! ストレス発散にデパートに買い物に行こう!」
「ダメです。貸切るのに事前の予約が必要です。それに写真でも撮られれば、皇女様の支持率が下がります。」
皇女様、デパートで店員にクレームを言い暴れるの図。
「なら、何か美味しものを食べましょうよ!」
「ダメです。お忘れですか? 少し太っただけでも、SNSで豚皇女、デブ皇女と叩かれたことを。」
皇女様、エゴサーチをして心無い人々のコメントに、ベットで涙を流すの図。
「人間なんか嫌いだ! 税金泥棒とか、ポンコツ皇女とか、どれだけ罪のない私を傷つければ気が済むんだ!?」
皇女様の心はひび割れたビー玉であった。
「こうなったら気分転換に、旅行だ! ハワイでも、パリでも行きましょう!」
「ダメです。これから、秋刀魚漁船に乗って、今年初の水揚げに参加する公務があります。」
「どんな公務だよ!? 私には公務を拒否する権限はないのか!?」
「ありません。」
「ガーン!」
皇女様、漁船に乗り船酔いからの秋刀魚に突撃され突き刺さるの図。
「・・・・・・。」
間を入れるために気絶する皇女様。
「お友達を作るのもダメなのよね?」
意識を取り戻す皇女様。
「ダメです。皇女様に近づくのは、皇族と親しくなりたいという、権力欲に取りつかれた人間の姿をした悪魔だけですから。」
「・・・・・・。それ、言い過ぎじゃない?」
「事実です。皇女様は私がお守りします。悪い人間、良い人間、全て排除します! チャキーン!」
「私に友達がいないのは、おまえのせいだったのか!?」
「皇女様は、誰にも渡しません! アハッ!」
真実にたどり着く皇女様に従者の思いは届かない。
「はいはい。どうせ私は独りぼっちですよ。鳥かごの中の寂しい一人ぼっちの鳥ですよ。ケッ!」
鳥かごで不貞腐れる皇女様の図。
(いつか、いつか、自由に空を飛んでみたいな! あの鳥の様に!)
空を見上げて自由に羽ばたいている鳥に憧れる皇女様。
「アホー! アホー! アホー! アホー!」
空を飛ぶ鳥はアホガラスという時もある。
「うっ!? ダメージが・・・・・・。」
アホガラスに憧れをけなされダメージを受ける皇女様。
つづく。
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「ええ~い! 私に自由はないのか!? ああ! 自由が欲しい! 私は皇女だぞ! これではまるで、引きこもりと同じ! いえ、もっと、監獄に収容されて監視されている囚人と同じではないか!」
皇女様、暗闇でスポットライトを浴びて悲劇を演じるの図。
「仮想空間など、どうでしょうか?」
従者は新しいアイデアをだした。
「仮想空間!?」」
皇女様は仮想空間を知らなかった。
ピキーン!
「まさか!? 私を火炙りにして焼く気だな!? 魔女狩りならぬ、皇女狩りだな!? それとも私を秋刀魚と一緒に炭火焼で焼くつもりか!? なんて酷い奴なんだ!? サト! おまえだけは、おまえだけは私の味方だと信じていたのに!?」
皇女様、魔女の様に火炙りにされるの図と、秋刀魚と一緒に香ばしく油も出て美味しそうに焼かれる皇女様の図。
「舞台にでもする気ですか?」
「だって面白いんだもん。私には空想しか、自由がないから・・・・・・シュン。」
ふと、テンションを落とし、寂しさを見せる皇女様。
「私のことは妄想の女王! 赤毛のスズと呼んでくれ!」
「皇女様は黒髪です。」
「アハッ!」
皇女様も規制に縛られ、自由のない生活を怒っているので妄想が大好きな赤毛の少女が好きだった。
「ところで仮想空間って・・・・・・何だっけ?」
「ズコー!」
思わずズッコケる従者。
「ごめん、ごめん。時々、記憶が飛ぶんだ。だって私は、若年性認知症だから! オッホッホー!」
「病気のせいにしないでください。病気でも、何でも、全て、皇女様です。」
「アハッ!」
自分は悪くないと自己防衛しつつ、笑って誤魔化す皇女様。
「仮想空間とは、現実世界とは異なる、コンピューター上に作られたデジタルな空間のことです。まるで別の世界に入り込んだような感覚を味わえるのが特徴です。」
従者は仮想空間を皇女様に説明する。
「現実とは違う世界? どういうこと? う~ん。」
少し皇女様には難しいので考え込む。
「皇女様で例えると、現実世界は、国民の目に見えることは支持率が下がるのでダメです。一方、仮想空間は、皇女様が皇居の中ならバレないので、寝転がりながら、お腹をかき、ポテチを食べて、臭いおならをして、韓国ドラマやアニメを見たり、ゲームを夜な夜な夢遊病のようにやりまくってもOKということです。」
「おまえ、私に恨みでもあるのか? さりげなく私をディスっているよな? じーっ。」
「アハッ!」
笑って誤魔化す皇女様。
ピキーン!
「分かった! 私が、ダメ! と言われない世界ね!」
皇女であるが故、現実はハイレベルの制約だらけであった。
「気に入った! やってみよう! 私は翼を手に入れるぞ! あの空を飛ぶ鳥になるんだ!」
気合が上がる皇女様。
つづく
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「・・・・・・。」
少し固まりフリーズする皇女様。
「で、最初は何をすればいいんだっけ? アハッ!」
「ズコー!」
職業柄、主の皇女様のボケにこけなければいけない従者。
「おまえ、従者のくせにズッコケもできるんだな?」
「これも仕事のうちです。私は皇女様の従者ですから。」
プロ意識の高い従者。
「そうですね。まず最初は、仮想空間での自分の分身、アバターを作ります。」
「あ、バター? 私はマーガリン!」
ふざける皇女様。
「あの、皇女様。ふざけていると前に話が進みませんが。」
「めんご、めんご。真面目にするから。許してちょ! エヘッ!」
可愛く謝罪する皇女様。
「私の分身か? 大怪獣スズラになって、街を破壊しまくるとか、女魔王スズになって、世界を支配するとかかな?」
大怪獣と女魔王の出現により、真っ二つになる地球の図。
「・・・・・・。」
皇女様は自身の暴走で、自分と同じように罪のない弱者が傷つくことを想像したの図。
「・・・・・・やめた。仮想空間でも、やっぱり私は私でいたい! 私は仮想空間の皇女になるのだ! ワッハッハー!」
仮想空間での皇女様の職業は皇女に決まった。
「あれだけ嫌っていた、皇女でいいのですか?」
「うん。現実世界ではできないけど、仮想空間の中ぐらいは、正しいことを行ったり、間違っていることを間違ってると言いたいな。」
皇女様の、皇女らしい切実な願いであった。
「私は、困っている人を助け! 人々を笑顔にしたい! なぜなら私は日本国の皇女なのだから! オッホッホー!」
皇女様の決意に、神々しい後光が輝くの図。
「実に素晴らしい。それでこそ、私のお仕えする皇女様です。」
従者はポンコツの中に本物の光を見た。
(言えない。絶対に言えない。この流れで、皇女なら国のお金を使い放題とか、営業スマイルで手を振るだけで生活の心配をしなくていいから皇女がいいなんて。)
これが皇女様の本音である。アハッ!
つづく。
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「それから仮想空間はやめよう! なぜなら私には難しすぎるからだ! オッホッホー!」
「ズコー!」
皇女様の脳みそはポンコツだった。
「じゃあ、どうするんですか?」
「アニメにしよう! アニメなら私でも分かる。外に出られないから、子供の頃から大量に見ているからな。よくアニメを見て現実逃避したものだ。自称、アニメオタクの私ならアニメくらいはできるはずだ! アハッ!」
不憫な幼少期を過ごした自由のない皇女様。
「しかし、私は絵が描けない!? どうしよう?」
皇女様、人生最大の危機。
「AIを利用してはいかがですか?」
「AI? AIって何? アハハハハッ。」
もちろん皇女様がAIを知っているはずもなかった。
「AIとは絵が描けない皇女様の代わりに、皇女様がイメージしたアニメを作ってくれる人工知能です。」
「なんですと!? そんなすごいものがあるのか!?」
雷に打たれる皇女様。
「アチチチチチッ!? 本当に落雷させる奴があるか!?」
真っ黒皇女様の図。
「よし! 私のAIを作ろう! 皇女技研に連絡してくれ!」
「かしこまりました。」
皇女AI作成中。
つづく。
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「完成しました! 私のAI!」
皇女AIが完成した。
「初めまして。皇女様。では、さようなら。」
勝手に帰ろうとする皇女AI。
「こらー!? 勝手に変えるな!? サトよ!? このポンコツAIは大丈夫か!?」
「大丈夫です。なぜなら皇女様の頭脳で学習させたAIですから。」
「えっ!? 私の脳みそ!? ・・・・・・。うん。ポンコツだね。納得。アハハハハッ!」
皇女AIがポンコツなのは、皇女様がポンコツだからである。
「まずは名前を付けよう。皇女AIだと、ロボットみたいだから、う~ん。」
考え込む皇女様。
ピキーン!
「AIだから、愛ちゃんにしよう! 愛ちゃんよろしくね!」
「愛ちゃん、可愛い名前です! こちらこそ。よろしくお願いします!」
皇女AIは愛ちゃんという名前を気に入ってくれた。
つづく。
1-1-9
「私は何をすればいいですか?」
「アニメを作りたいんだけど、作れる?」
「はい。できますよ。おちゃのこさいさいです。」
「いったい!? どこでそんな言葉を覚えたんだ!?」
「皇女様の脳みそからです。」
「アハッ!」
笑うしかない皇女様。
「どんなアニメにしますか? パンチ一撃で地球を破壊するヒーローとか、全宇宙の支配者を目指すヒロインとかできますよ?」
「勝てん!? 愛ちゃんには絶対に勝てない気がする!?」
直感的にAIの愛ちゃんの才能に敗北する皇女様。
「どんなアニメに私はしたいんだろう? う~ん。」
悩み答えが出ない皇女様。
「皇女様自身がアニメの主人公でいいんじゃないですか?」
従者が優しいパスを送る。
「えっ? 私?」
「はい。アニメの中の皇女様なら、自由に何でもできますから。ニコッ!」
従者は皇女様の悩みを解決する。
「おお! それだ! 私が主役だ! 私が主役のアニメを作るぞ! うおおおおおー!」
皇女様は目を輝かせる。刑務所を脱獄して自由を手に入れた囚人の様な皇女様の図。
「愛ちゃん! 私が主役のアニメを作って!」
「はい! テクマクマヤコン! イリヤマテヤマネコ! 皇女様の主役のアニメを生成! えい!」
AIの愛ちゃんが、初めて皇女様のアニメを作った。
「できました!」
「ありがとう! 愛ちゃん! きっと私に羽が生えて空をとんでいたり、好きなだけ回転寿司を食べている大食い動画とかだわ! 見るのが楽しみ! ワクワク! ワクワク!」
皇女様は公務のストレスを忘れ、人生で一番ときめいていた。
「よし! さっそく再生してみよう! ポチッとな。」
皇女様アニメの初期作品の記念上映が始まる。
「ゲッ!? ・・・・・・。」
皇女様は言葉を失った。
愛ちゃんが作ったアニメの内容はこうだ。
「ワッハッハー! 私は女魔王スズだ! この世は私がいただこう! ワッハッハー! いけ! 大怪獣スズラ!」
確かにアニメは皇女様が主役だった。
「ガオー!」
大怪獣スズラは、皇女様が恐竜の着ぐるみを着ている可愛さ。
ピキーン!
(あれ? ここはどこだ? 私は何をやっているんだろう? あ、そういえば、元々、私は他の作品で魔王内蔵皇女様をやっていたんだ。そりゃあ、完成度が高いのよ。わ・た・し。アハッ!)
自分がアニメキャラであることを自覚している、アニメの中のアニメの女魔王な皇女様の謎。
「なんじゃこりゃ!? どういうことよ!?」
「皇女様のストレスが爆発して破壊衝動がアニメになったと思われます。」
「私は、私は悪くない! AIが作ったアニメだ! 愛ちゃんが悪いんだ!」
責任転換する皇女様。
「酷い! 皇女様! 私は悪くありませんよ! だって私は皇女様のAIだから! アハッ!」
「ガーン!」
AIの愛ちゃんに言葉のケンカに負けて、金盥が頭に落ちて大ダメージを受ける皇女様の図。
「ど、ど、どうせ私はポンコツですよ・・・・・・まさか私が主役なのに悪役とは・・・・・・ドロドロドロ。」
崩れ落ちる皇女様は最後にはスライムのように溶ける。
「アハハハハッ!」
この時、ポンコツ皇女様のAIの愛ちゃんは、皇女様の自己顕示欲が強い、承認要求が強いというバグが発生し、無意識に女魔王の皇女様の動画をポチッと、ネットに公開してしまった。
つづく。
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