第2話 雪宮藍、マネージャー始めます!
・
・
・
「加藤奈緒の娘なのに、大したことないのね」
「あ?」
「いや、1年半あんたのこと見てきたけど大会で結果を残せない、部活内でも中堅程度の強さ。それ以上母親の顔に泥塗るのやめたら? 」
「顔に泥塗らないために練習頑張って来てんじゃん! 何も知らないくせに偉そうに言ってくんな!」
「じゃああんたは母親のために卓球してんのかよ! あんたん家の事は知らないけど、母親はそういうの望んでないんじゃないの?」
言い返せなかった。最初は楽しくて、面白くて始めた卓球が、中学入ってから違くなった。私は中学受験をして、私立の中学に入った。このまま強いチームに入って母親に並ぶ、いや超える選手になろうと思ってた。
現実は甘くなくて、大会に出ても結果は残せなくて、部活内でも上手くいかなかった。
“加藤奈緒”も、あいつもみんな生まれ持った才能があったんだ。卓球のセンスは遺伝しないらしい。
そんな喧嘩をしてから毎日のように体育館で練習した。区民体育館にも行って彩月ちゃんと練習して。
結果は全市3回戦負け。
「あぁ、卓球もう辞めよ。」
雨に打たれてたおかげで涙は上手く溶け込んだ。中体連の予選が終わったら基本的には引退する。私も例外なく引退した。引退して1ヶ月はとにかく図書館で勉強した。
「ママ、私高校受験したい。ホントはそのまま高校に上がろうと思ったんだけど、環境を変えたい、卓球強いとこっていう理由も、もう卓球しないからここにいる意味が無くなっちゃった」
「次行く高校ではどんな理由があるの? 理由が無いから辞めるだけなら私は許可しない。その高校に行って何をしたいのか、どんな理由を持つのか、それを私にちゃんと言いなさい」
とにかく高校は違うとこがいい。だから違う高校を探して、その高校である理由を必死に探した。
「雪宮藍、マネージャーやります!」
もう、母親のために卓球はしない。でも私が“選手”として卓球に関われば、嫌でも母親のことがチラつく。ならばマネージャーとしてなら、自分のために出来るのではと考えた。
強いチームじゃなくて弱いチームでマネージャーやってチームを強くしたら私、ヒーローじゃん。
・
・
・
「藍ー、昨日初部活どうだった?」
「んーなんか、変だったなぁ」
高校も一緒になった彩月ちゃん。可愛らしいボブとふんわりした性格が居心地いい。こんな可愛らしいのに彼氏出来たことない。不思議な事だ。
「なんか、前途多難って感じ。部長は絶対オタクでなんか変だし弱いし、次期部長って人は坊主で弱いし、風間くんはよく分からない」
「風間くん、、」
周りから何考えてるか分からないって彩月はよく言われるけど、小学生の頃からの付き合いの私には分かる。今彩月はとある幼稚園児を頭に思い描いているだろう。
「下の名前はしんのすけっていうらしいんだよ」
「しんのすけ!?」
今彩月の頭の中は青いトサカ頭のしんのすけが頭に思い描いているだろうな。
「なにそれ、キメラじゃん」
「なんちゅうこと言うねん」
その日は6時間目が終わり早速部活に勤しむ。彩月は美術部だからって美術室に同期と話しながら向かっていった。私の肩は寂しかった。
「では早速、練習を始めますぞ」
部長の号令と共に部員(2人)は青い仕切り板を並べ始め、卓球台とボールが入ったバケツ等体育室に卓球部のテリトリーを作り出した。
そして部長が部員2人のラリーを中間で見つめながらフォア、バック、フリーの3項目で進めていた。ローテーションシステムで、3項目が終わると次は部長がラリーに参加し、1人が見守る形になった。
私がこの部活で何ができるのだろうか。全道大会に出場って、そんな簡単な事じゃない。少なくとも2回戦目には強豪にぶつかる。他の地域と比べて強豪の質が断然違うのに、こんな練習で目指せるわけが無い。
まず、ランニングも無いし、筋トレもない。準備運動した後すぐラケットを持ってラリーをする、私の中学の練習からは到底ありえない。
卓球部って外周とか筋トレとかしないんでしょ?とか言われる原因がここで分かった。弱いチームは基礎を疎かにするから、弱い。基礎を舐めたら基礎で泣く。
この人たちのラリーを見ただけでわかる体幹のなさ、ラリーも返球位置がバラバラで、やりずらいことこの上ない。
だったら、変えるしかない。雪宮藍、マネージャーやるんだから!
「あの!すみません、一通り練習見たんで、ちょっといいですか?」
「ん?なんですか?雪宮氏」
「練習メニュー変えませんか? ちょっと、というか全くこの練習じゃ一勝も出来ないと思います」
「雪宮氏、この伝統ある卓球部の練習メニューを変えたいですと?」
「いや悪習だろ。怠惰なんだよ」
「はは、君は素直な子ですな。ならば聞きましょうあなたの考える練習メニューを」
この見下されてるのかこの人の性格なのか、話し方がいちいち癪だけど、アニメに影響受けすぎてるだろ。
「まず、練習の最初に軽い準備運動します。その後、上のランニングコースで10分間走をして、その後筋トレ・体幹トレーニングをやりましょう。そしてそこから素振り100回やって基礎打ち、私も参加するので4人でやりましょう。基礎打ちメニューはフォア打ち、バック、ツッツキ、ドライブ、交互打ち。その後に試合を3人でやって、課題を見つけて、課題改善に向けて練習を終盤にやりましょう。そして1人1冊卓球ノートを作ってください。書く内容は」
「ちょーっと待ちたまえ。長すぎますぞ雪宮氏。さっきから内容が頭に入らないでござる。」
「あぁ、もう。じゃあ紙に書くんでちょっとまっててください。」
もう、仕方ないなぁ。卓球ノートは自分の課題と向き合えるし、成長過程が見れるから1番大事と言っても過言でもないから、ここを強調して書く。
まずは1枚目に3年間で何を目標に頑張るかを書いて、次からは日にち毎に内容をまとめる。
まずは課題を書いて、その課題解決のために何をするのか、何ができるかを書く。次の練習に活かすように、次はこうするって言うのをまとめて、1日1ページ書くようにする。
「雪宮氏、これはいつからやるのです?」
「今日はもう終わるから、明日の練習から始めたいです。」
「明日はオフですぞ!」
「あ、その件は大丈夫です。顧問と話し合ってこれから練習は水曜日と日曜日を除く週5でやることになります。ほんとは日曜日以外やりたいけど流石に週6は着いてけないって顧問の矢吹先生が行ってて、あとは水曜日は隣で剣道部が使いたいらしいから。」
「おい、そんな大事なこと俺たちに打ち合わせ無しに決められたら、予定が狂うんだけど」
「そ、そうですぞ雪宮氏、私たちにはアニメを見るという大事な予定が」
「帰ってから見れば良くないです?今どき録画もあるでしょう」
うわ、鬼だって顔されてる。勝つための部活なんだからそんなこと当たり前なのに。ここで弱音吐かれたらこれからの練習についていけない。甘えてたら強くなれない。ただでさえ他の高校と練習の差があるんだから、せめて弱小校や、中堅校には勝てるようにならないと。
「4月28日、春季大会があります。高体連前最後の大会になりますが、良かったら出ませんか。と矢吹先生に言われたので、是非って返させてもらいました。」
「雪宮氏、君はなぜ部長である私を通さずに勝手に大会参加に合意をしたのですか…? それになぜ矢吹先生は私ではなく雪宮氏に……」
「あの、俺その日彼女と予定あるからいけないわ、すまんな」
風間くん、彼女いたんだ。確かにこの中では顔は良いというか、普通だけど。
そんなことより、矢吹先生は私が加藤奈緒の娘ということも知ってて、部長がアレだからって私を通すようになっただけ。頼られないのは頼りがいが無いからだよ。
「風間くん、、君のその彼女というの辞めて貰えないかな?」
「は? なんでですか部長」
「何度も言っているがそれは彼女では無い。ただの底辺配信者では無いか。君しか視聴者がいないから君がその配信者にとって唯一の救いなだけであって、その配信者も君のことを彼氏とは思ってはいないのではないか?」
「うるせぇ!俺のみっちゃんを馬鹿にするな! みっちゃんは俺がいないとダメなんだ、俺がいないと病んじゃうから、俺が見てウルトラチャットを送って、世界の誰でも見れる配信の中でたった2人だけという空間、それはもはやデート…!」
どこまでガチでどこまでがネタなのかもう分からない。1番まともだと思ってた風間くんが実は一番ヤバイんじゃないかって思ってしまった。
それより、部活への意識を変えないと話にならない。練習メニューはやってみるかとなったが、やっぱり週5がしんどいらしい。どこまでいっても甘えん坊達なんだから、私の当たり前がこの人たちに通用しない。
「明日からこれでやるので今日はもう帰っていいです。いいですね?勝ちたいならまずはこの程度の練習メニューこなしてもらわないと話にならないですよ」
「それをしたら勝てるの?」
「あなた達次第です。自分と向き合ってひたむきに努力したら、弱小校や中堅校には勝てると思います」
「うん、分かった。僕は次期部長だから、君のその傲慢さと”強さ“を知ってるからこその意義を信じる。」
谷先輩…素敵。に見える。この中にいたら。
でも風間くんはやっぱり納得はしてない感じかな。でも1人でも甘い人がいると弱い人はそっちに逃げてく。だからシャキッとしてもらわないと。
「風間先輩、4月28日ので、デート…? は、諦めてください。ですが、条件付きでその日以降の練習メニューについて賭けをしませんか?」
「賭け?」
「4月28日の春季大会、この中の誰かが1人でも一勝したら、推し休暇を許します。でももし、全員が負けたら、練習メニューはもっと過酷になります。ちなみに矢吹先生との連携は済んでるので逃げれませんよ」
「推し休暇って、サボってもいいじゃないか」
「サボれると思います? 矢吹先生には貴方たちの授業出席確認して貰って、サボりかどうか確認できます。それに、もしサボった場合キツイ反省文4000文字を書いて提出してもらいます。矢吹先生は厳しいですからね〜」
また鬼だって顔してきた。一般的な高校のシステムにプラスして進学校である正北高校の生徒だ。真面目な彼らにはそもそも授業を休んでまで部活を休むなんて出来ない。
だからこその推し休暇だ。正当な理由で部活をサボれるいわゆる有給のような制度を作れば、逃げ道やデート(?)になる。一ヶ月に一回は出してあげれば、部員達も嬉しいだろう。
「……分かったよ。みっちゃんにはいけないって連絡するから。そのかわり、俺たちを勝たせろよ」
「連絡ってどうせチャットでしょう。本当に連絡取ってるかのように話すくせをやめるでござるよ」
「うん。任せてください。勝たせてみせます。だから、着いてきてください」
家に着いてから私はお風呂もすっ飛ばして机で練習メニューを考えていた。
「藍、少しは休みなさいよー? 夢中になるのはいいことだけれど身体壊したら元も子もないからね」
「分かってるよママ。ありがとね」
・
・
・
『ママ…卓球しよ…』
両目か流れる涙にあの時のママは何かを重ねたのだろう。あの時、最後の大会の日、私が絶望したこと、挫折をして家族に泣きついたあの時の苦しさをママは同じ卓球選手として理解して、抱きしめてくれた。
多分、あの日のことをママは私より重く考えてる。有名卓球選手という肩書き、私は自分から背負いに行ったのに、多分ママは【背負わせた】そう考えてる。
だからこそ、今の私を見るのが怖いんだ。また意味がなかったなんて事になって、絶望するんじゃないかって。
でも私はもう凹まない。
あの時に比べたら、こんな練習メニューとか考える事なんて可愛いもんだ。多少寝るのが遅れたからって身体になんの支障はない。
そっと置かれた暖かいレモネードを一口飲む。ママはよく作ってくれる。この味が大好きだ。
小さい頃、風邪を引いた時にもよく飲ませてくれた。身体の芯まで温まる感じがする。
色々考えてたらもう朝の1時になってた。そろそろ寝ないとって思ってベッドに入っても中々寝付けないし考え事が増えちゃって余計寝れなかった。
結局寝れたのは3時間程度だけど学校には行かないといけない。
せっかちな私は学校に着く頃には街の喧騒を忘れている。思い出す間もなくノート開いて授業の予習をする。
私は8時5分には教室に着くようにしてる。そこから25分間は授業の予習をしてついていけるようにしている。彩月はいつも8時20分過ぎに着くけれど。
「藍ー、今日放課後ひまー?」
「ごめーん、今日部活なんだよね」
「えーん、せっかくいいカフェ見つけたのに〜。じゃあ琴音達誘って見ようかな〜」
「ごめんね、今部員たちの練習メニューとか色々改善してたら練習日程多くなっちゃって」
藍は凄いやって言いながら教室を出ていく彩月。恐らく琴音って子と話に行くんだろう。
彩月のこと、卓球部に誘ったんだけど「部活まではガチりたくないかな〜」って断られてしまった。私も付き合わせるのは申し訳ないし強くは言えなかった。
でも、彩月と肩を並べて帰ることも頑張ることも限りなく減ってしまったのは、悲しく切ない気持ちになる。それに、彩月は部活の同期とかなり仲良くなっている。彩月の笑い声が遠くから聞こえると『いいな……』なんてそんなことか考えちゃう。
「はい、じゃあ早速練習始めるんですけどその前に。 今日はとりあえず部室掃除から! こんな汚い部室毎日来るのは精神的にも衛生的にも良くないです。まず換気して! 掃除してる間私は下見行ってきます」
「この鬼マネージャー、我々のテリトリーを汚部屋扱いするとは……」
「なぁ、“下見”ってなんの下見だよ」
「外周のコースです。あんま他の部活動の人たちと被らないコース探しとくんで安心してください」
風間くんを筆頭にみんなが顔を見合わせる。なにかおかしいこと言っただろうか。そして私は気づく。まだ彼らに変わった練習メニューのことを伝えていなかった。
「雪宮氏……私の耳が腐っていなければ“外周”と聞こえたのだが、聞き間違いでは……?」
生まれてから恐らく“外周”という言葉から縁のない生活をしてきたのだろう。強いところはみんなやってる。卓球なんて体力要らない、筋トレしないとか偏見言われるけど、実際は違う。体力がないと終盤球に追いつけないし、実際試合中かなり動き回る。体力作りしないと序盤いい展開に持ち込めたところで終盤で躓く。
「じゃあ行ってくるんで。大体2kmを予定してるので、片付け終わったら早速走りに行きますよ。」
「雪宮氏、2キロなんて走ったらもう部活なんて出来ないですぞ!」
「はいはい、甘えんな〜」
と、足音もなくいつの間にか顧問の矢吹先生が手を叩きながらドアの前に立っていた。3人の家来達は一斉にほうきを持ち床を掃き始めた。
その一時間半後、私が下見から帰ってくると部室はピカピカになった地面、ホワイトボード。片付けられている卓球玉。そして整理整頓された棚に座るスペースが拡がったベンチ。そして箒を持ちながら倒れている3人の家来達。
「雪宮、俺これから職員会議だから戻るな。あと、新島は帰らせてやれ。他のふたりは外周でも何でもさせといていい。」
「新島部長はなぜ」
「まぁ、事情があるから。じゃあお前らちゃんとやれよ〜。雪宮の言うことは俺の言うことだと思って聞けよ」
いつの間にか家来達は正座をして話を聞いていた。なんだこの忠誠心は。矢吹先生は数学と情報の先生だ。
新島部長を帰らせて、他のふたりを外周に連れていく。距離は1.8km。2kmより少ない代わりに、ちょっと森のコースに入るから、走りにくい。
「私も一緒に走るから安心してください。新島部長が来れないのは心残りですが。行きますよ」
「マネージャーがそこまでしなくても」
「私がいないとサボりますよね?」
「どんだけ信用されてないんだ俺たちは…」
風間くんがちょっと悲しい顔をしながら着いて来る。谷副部長もついてきてるけど最後尾だ。多分体力が無いんだろう。
私と風間くんが同着し、その8分後に谷副部長が到着。途中歩いてはいたけど食らいついて来たのは偉い。最初だからそれでいい。
滴る汗は雨が降ったと勘違いする程に苦しいものだった。事前に購入していたスポドリを2人に与えて私も飲む。
オアシスはおそらくこの気分なんだろう。私も久しぶりに走るから流石に疲れた。
「はい、じゃあこれから一日の練習メニューを発表します。」
「マネージャー、俺らもう頭に酸素が……」
「深呼吸してください。それじゃあ練習メニューここに貼っとくので順番に説明しますね。」
私はA4の紙を2枚ドアに貼った。
「まず、平日は外周の時間が無いので、省きます。その代わり、10分間の反復横跳びを入れます。」
それから私は練習メニューを説明して言った。
平日は
①10分間の反復横跳び・筋トレ・体幹トレーニング・柔軟・素振り50回
②基礎打ち(フォア打ち、バックバンド、交互、サーブ&ツッツキ、ドライブ練習、フリーラリー)
③試合形式(残ったひとりはサーブ練習)
④課題練習
⑤ノック練習
⑥サーブからの3球目
⑦ゲーム
「ノックって野球のあれみたいな感じ?」
「はい。私がランダムにフォア側やバック側、ミドル側に速い球を出すのでそれを全部フォア打ちで返して、私のフォア側に返してください。これをやることで、フットワークとボールコントロールが磨かれます。」
「サーブからの3球目っていうのは?」
「私と貴方たちと交互に色々な回転のサーブを出すのでそれを3球目、4球目を返す練習メニューで、これをやることでより試合に近い展開に慣れさせます」
フォアとは所謂自分から見て右側のコートの事だ。バックは逆に左側で、ミドルは真ん中。白線が台上にあるから、それを中心に分けている。
「私がこの練習メニューにしたのは主に自分で課題を発見した後、自分で解決して、その後私からの試練に耐えて、最後に今までやったことを活かして試合をしてもらいます。休日はこれに外周を加えて練習メニューも時間を倍にする位にします。」
私がこの人達に感じた弱点。それは『自分がどう弱いのかを知らない』ことと、『どこに強いのかを理解してない』ということだ。人に言われるより自分で見つけてそれを極める方が理解度が段違いだ。それを2回の試合形式で発見して、私が繰り出すボールで間接的に発見していって欲しい。
試合を、最後にやるか中盤にやるかでずっと迷っていた。1日やったことを全部出すならたしかに最後にやるのが良かった。だが、私は自分で見つけた課題はすぐ消化して、練習して体に染み込ませないとすぐ忘れてしまう。善は急げ、熱いものは熱いうちに。そこで、1日に試合を2回やることで、発見→試行錯誤→応用を1日で済ませれる。
ただひたすらに試合をしても意味が無い。ただひたすらに基礎打ちだけしても進まない。でもスポーツの醍醐味はゲームだ。つまらない練習は続かない。いくら弱くてもゲームは好きなはずだ。私は練習を楽しんで欲しい。だからこその2回だ。
苦しいだけの部活にさせたくない。そして私は、画期的なやる気の出し方をおもいついた。
「この、総当たり戦で、1ヶ月勝利数が1番高い人には毎月ご褒美をあげます。今月はこれです!」
1000円のスマホのギフトカードだ。これは顧問と相談の後、しばらく活動も適当だったために部費が少し余ってるということなのでギフトカード1000円分くらいなら良い。だが少しでも結果を出せとの条件だった。
「俺はこのギフトカードで、みっちゃんに貢ぐ! 良い、俺はその練習メニューに賛成だ。大事な彼女に少しでも潤いを与えたい」
「それなら俺もソシャゲに課金したいし、まぁ、皆がいいなら…」
「じゃあ明日からよろしくお願いしますね」
そして時は4月28日、春季大会当日。
新体制の卓球部初の公式大会が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます