最終話 ファンタジー



 自由の身となりクワトロ家へ帰ってきたから7日後の夜。私とパパとママはミーミル学房近くの森の中を歩いていた。わざわざ夜に森の中を歩いているのは、もちろん墓へ行ってフィオルの魂と会話する為だ。


 墓の前に到着するとエリク、グスタフ、モーズさんが先に来ていた。ルーナ様はまだ来ていないみたい。モーズさんは既に魂と対話する為の秘術を発動しており、水色の半球状の空間の中には楽しそうに皆と会話しているフィオルの姿があった。


 私とパパとママを見つけたフィオルは「おーい! こっちだよー!」と霊魂とは思えないほどに元気な笑顔と声で手を振っている。


 私が墓の前に立つとフィオルはチラチラとエリクを見つめた後、口元を手で覆い、目を細めて笑う。


「無罪判決が出てから解放されるまでの間に皆から話を聞いたよ。遂にエリクとくっついたんだねスミレ! グフフ、おめでとう! 拘束も解けたことだし、これでイチャイチャし放題だね」


「ちょ、ちょっとやめてよフィオル! 私とエリクはバカップルじゃないから!」


「あはは、ごめんごめん。私も凄く嬉しくて、つい揶揄っちゃったの。じゃあ今日はスミレも来られたことだし、スミレから沢山話を聞こうかな」


「うん、任せて! フィオルに聞いて欲しい話や伝えたい想いが沢山あるの。まず最初は――――」


 私は楽しかったことも辛かったことも全部話し、フィオルへの感謝を伝えた。フィオルは終始優しい笑顔で頷いてくれている。改めて正式に彼女の妹になれた喜びが湧き上がってくる。


 1時間近く私と両親とフィオルだけで話し続けてしまったから、エリクたちは退屈だったかもしれない。でも、ようやく実現できた報告会だから許してくれるよね?


 喋り過ぎて少し喉が疲れてきた段階で、ようやく話したいことは全て話せたと思う。


 他の人に順番を譲らなければと思い後ろを振り向いたその時、立ち並ぶ木々の方から複数の足音が聞こえてきて私は慌てて身構えた。すると、木の陰から現れたのはルーナ様、そして手枷を付けられたテオだった。


 テオは少しだけやつれているけど、服装はいつもと同じ貴族服だ。捕まっているはずのテオがどうして墓に来られたのだろう? 首を傾げる私たちにルーナ様が説明を始める。


「ギリギリになってしまったけれどテオを連れてこられて良かったわ。実は今日の夕方にテオの刑が確定したの。最後の対話になるでしょうから特別に許可を貰って今晩だけテオの外出を許してもらえたわ。さあ、テオ、フィオルと話してらっしゃい」


 2回目以降の裁判でルーナ様がテオの世話を焼いていたことは知っている。だけど、今日のフィオルとの対話に向けて動いていてくれたなんて……流石ルーナ様だ。


 だけど“最後の対話になる”って言葉は今の私たちにとってあまりにも重い。テオの未来を匂わせつつも刑罰が語られない現状に私の鼓動は早くなり、嫌な汗が背中に流れる。


 テオは捨てられた子犬のような目でフィオルを見つめると小さく頭を下げる。


「…………今さら謝って済む話ではないが本当に済まなかった。俺の言動は許されるものではない。フィオルが亡くなってからの俺は親友の死を受け入れられず暴れまわるガキ以下の存在……言わば八つ当たりそのものだった」


「……そうだね、人を殺めてスミレまで殺そうとしたんだもん、私は心底怒ってるよ」


「ああ、目を見れば分かるよ。優しく正義感に溢れるフィオルの瞳は霊体となっても変わっていないからな」


「でもね、私が1番怒っているポイントは法や倫理とは別のところにあるの。テオには分からないと思うけど」


 両手をギュッと握りしめたフィオルはテオの目の前まで移動すると右手でビンタを繰り出した。当然、霊体であるフィオルの手はテオの顔に触れられなかったけど、テオの心へ響かせるには十分だった。フィオルはゲーム内では聞いたことの無い震え声で怒りを伝える。


「私が1番怒ったこと……それは仲間を頼らなかったことよ。貴方にはエリク、グスタフ、ルーナ様、沢山の仲間がいたというのに。彼らなら幾らでも話を聞いてくれるし、痛みに寄り添ってくれる。それはテオが1番分かっているでしょ?」


「ああ、分かってるさ。それでも俺は……」


「皆に心配を掛けたくなかった……って言いたいんでしょ? テオの言いそうなことぐらい分かるよ? だって貴方は自分を犠牲にしてでも私とドルフさんを守ろうとしてくれた優しい人だものね」


 怒りと諦めの感情によってフィオルの瞳から涙が溢れていた。今まさに地面に落ちている滴は霊魂と同じく透明度が高まっていて美しい。私たちの結末を見届ける為に霊体となって待ち続けてくれていたフィオルの優しさを反映しているかのように。


 フィオルの言葉を受けてテオは何も言えなくなっていた。一層眉尻を下げるテオを見つめていたフィオルは透過する両腕で彼を抱きしめる。


「怒っちゃってごめんね。でも、私の気持ちは届いたよね? これから先の未来は皆の事を頼ってくれる……そう信じていいよね?」


「……ああ、約束するよ。もうフィオルに怒られたくないからな。それに、これから受ける刑罰のことを考えると尚更エリクやグスタフの力を借りざるを得ない」


「これから受ける刑罰?」


 フィオルが問いかけるとテオは今後のことを教えてくれた。


 どうやらテオは自ら志願する形で『未開拓森林地帯』や『クラーケンの出没した海域』を始めとした危険地域に籠り、平和の為に魔物の討伐に励むらしい。


 裁判所からは既に許可が出ているらしく監視付きで行われるとのことらしい。命懸けで働く分、活躍次第では普通の牢屋生活より刑期が短くなるようだけど、牢屋生活とは比べものにならないほどの苦しく、死と隣り合わせの生活になるから最後まで反対されていたそうだ。


 それでもテオは贖罪を貫くらしい。そのうえで、どうしても苦しい時はフィオルに言われた通り、仲間たちに頼る意思があると彼は私たちに示してくれた。


 命の危険と隣り合わせの刑罰だから心配は尽きないけれど、今のテオならやり遂げてくれそうな気がする。私も出来る限りテオの助けになれるよう頑張ろうと思う。ゲームでも現実でも私にとって大切な仲間だから。


 ずっとテオにくっ付いていたフィオルは穏やかな笑みを浮かべてから体を離す。そんな彼女の体からは謎の白い光の粒がホタルのようにフワフワと舞い上がっていた。


 フィオルは両方の手のひらを自分に向け、溢れる光の粒を見つめながら小さく頷く。


「あー、何となく、そんな気はしていたけど、やっぱり私は消えるみたい。事の顛末を見届けたからな? それとも皆の未来は大丈夫って安心できたからかな?」




 フィオルは成仏してしまうの? もう彼女と話せなくなるの? 突然迫りくる別れに感情が整理できないよ……涙が止まらないよ……。


 硬直し、言葉が出なくなっていたのは皆も同じだった。パパとママに至っては膝から崩れ落ちて泣いている。


 しかし、フィオルだけは晴れやかな笑みを浮かべていた。強がりではない本当に満足した笑みを。


 フィオルは1人1人の前に行って一言ずつ感謝の言葉を伝えていた。エリク、グスタフ、モーズさん、ルーナ様、パパ、ママと経て、私の前に来たフィオルは一層透けた右手で握手を求める。


「最後に改めて言わせて。スミレ、私の体に宿ってくれてありがとう。貴女は私にとって最高の親友であり、最高の妹よ。いっぱい苦労してきたのだから、これからはとびっきり幸せになってね」


「……うん、絶対に幸せになるよ。大好きなフィオルに貰った命だから」


 フィオルの手に質感は無いけれど、どんな握手よりも温かい。私は今日の握手を一生の宝物にするよ。


 名残惜しそうに握手を解いたフィオルは最後にテオの前へと移動する。彼女は何故か恥ずかし気に鼻の頭を掻きながら呟く。


「最後だから、これだけは言っておかないと。次に想いを伝えたら多分私は消えると思うし。だからテオ……真っすぐ私の目を見て」


「……ああ、分かった」


「小さい頃、貴方が命をかけて私を守ってくれたよね? あの日、私はテオに恋心を抱いたわ。大事な大事な私の初恋なの。だからテオがあの世に来た時は付き合ってあげてもいいよ? なんちゃって」


「……ははっ、そうか、奇遇だな。俺も……フィオルを愛しているよ、今も昔もな」


 笑いながら泣くテオは堪え切れず膝をついてしまう。フィオルもまた笑いながら涙をこぼし、両腕でテオを包み込む。


「みんなに……テオに出会えてよかった。絶対に幸せになってね、約束だよ――――」





 私たちの宝物……フィオルは最後に肉体から強い光を放ち、霧のように消えてしまった。本当に彼女はもう成仏してしまったのだ。


 もう1粒も残っていない光を抱え込むように地面に倒れるテオは大粒の涙を地面に落とす。


「うぅ……フィオル……」


 テオを見つめる私の目からも涙が止まらない。そんな状況でも凛とした表情でテオに歩み寄ったグスタフはテオの肩に手を置く。


「立派に気持ちを伝えて偉いぞ、テオ。もう歩くのも辛いだろ? 帰りは俺が運んでやるから安心しろ」


「……ああ、世話になるな」


 テオが仲間を頼る最初の一歩はグスタフのおんぶになりそうだ。


 エリクは「僕も手伝いますよ」と言い、2人に駆け寄る。しかし、グスタフは首を横に振り、エリクと私を交互に見つめる。


「いや、エリクとスミレは早く家に帰れ。明日は2人とも朝から忙しいだろ?」


 そういえばフィオルへ報告する事ばかり考えて、明日の事を忘れてた。明日はエリクと一緒にレストランに行って、エリクの両親に初めて挨拶する日だということを。


 厳密に言えばフィオルはエリクの両親と何度も会話をしたことがあるから顔を見られること自体は初めてではない。向こうからすれば見知った顔の女性に別人格であるスミレが宿っている奇妙な顔合わせとなる。


 お言葉に甘えた私とエリクはグスタフにテオを任せ、モーズさんとルーナ様に別れの挨拶をしてから自分たちの家へと帰っていった。










 フィオルとの別れから一夜明け、目を覚ました私は身支度を整えてから屋敷を後にした。正門前では既にエリクが待ってくれている。


「おはようございます、スミレ。昨日はよく眠れましたか?」


「う~ん、昨晩色々あったから、あまり眠れなかったかな」


「では少し散歩しませんか? レストランに集まるまで時間がありますから」


 エリクの案に賛成し、私たちは近くの公園で散歩することにした。穏やかな日差しと少し秋を感じる乾いた風が心地よい。


 ぐるりと公園を一周したタイミングでちょうどよくベンチを見つけて私たちは腰掛ける。


 エリクは穏やかな表情で自然を眺めながら大きく深呼吸をすると私に話を振ってくれた。


「あと少しすれば僕の両親と顔を合わせるわけですが、緊張していますか?」


「まぁ多少は緊張しているかな。一応……その……私たちは付き合ってるわけだし」


「ハハッ、心配しなくても大丈夫ですよ。スミレの素晴らしさは既に父上にも母上にも十分伝わっていますから。僕たちの関係を認めてくれていますよ」


「うん、ありがとう。でも、これから先もずっと認めてくれるかどうかは分からないからね。特に私は転生者という立場だから普通の人とは違うし、勉強だって同年代の貴族より遅れているからね。それに将来の夢や目標もまだ定まっていないし」


「夢と目標ですか。小さなことでもいいので何か興味のあることはありませんか?」


 興味のあることは……ないこともない。だけど、言語化が難しくて抽象的になってしまう気がして言えないのが本音かな。


 私が何も言えず沈黙しているとエリクは顔を覗き込ませて笑顔を浮かべる。


「上手く言えませんか? でしたら方向性だけでもいいですよ? もちろん無理にとは言いませんが」


「言いたくない訳じゃないの! ただ、何というか……どうせなら転生者としての強味を活かした仕事をしたいと思ってて」


「転生者としての強味……異世界の知識とかですかね?」


「うん、そうだね。例えば、まだミーミル領には存在していない病気の存在を学者に教えて事前に対策を取るようにしたり、役立ちそうな法律やルールを元々暮らしていた世界から引用したりとかね。分野を問わず役に立てたらいいなぁって」


「素晴らしい夢じゃないですか! 僕も負けていられませんね」


「ちなみにエリクは何か夢はあるの?」


 問いかけられたエリクはミーミル学房がある方向を見つめながら力強く未来を語る。


「海洋学、古代学など色々と学んできましたが、アナイン病とスミレの転生を経た今となっては“教育や防衛”に貢献できる人間になりたいと考えています」


「どうしてアナイン病と転生が教育と防衛に関わると思ったの?」


「有事の際に適切な対処ができるかどうかは日々の過ごし方が大事だと思ったからです。家族や先生がしっかりと子供の精神を育めるかどうかがね。その点がしっかりしているからこそフィオルは優しい子に育ち、死後に肉体を託したいという思考に至ったわけですから」


「そうだね、パパとママ、そして関りの深いルーナ様が本当に人格者だからこそフィオルが素敵な女性に成長したんだって私も思う」


「でしょう? そして、防衛に関してはアナイン病の発生源となった魔物モルペウスの件が反省点になると思うのです。力があればフィオルが襲われる事もなかったはずなので」


 一瞬、エリクは過去の自分を責めているのかな? と思ったけれど表情に淀みは無かった。きっと前向きな気持ちで反省しているのだと思う。だったら私が掛ける言葉は賞賛と応援のみだ。


「立派だよエリク。頑張ってね」


「はい! ありがとうございます。と言っても課題は山積みですけどね」


「課題って?」


「まずは僕がロンギーグ家の貴族として力と知識を蓄えなければいけません。それに仲間を増やして家も大きくしなければいけません。輪の中心として活躍できるように色々なことができるようにならなければいけないと考えています。その為には周りの人間に憧れ続けているだけじゃ駄目だと思うのです。超えるつもりの気概を持たないと」


 超えるつもりの気概――――この言葉は何となくグスタフやテオのことを指している気がする。激動の日々を乗り越えてもなお、エリクの自己評価は厳しい。


 真面目な頑張り屋さんは個人的に大好きだけど、それでもテオの件があるから無理だけはしないで欲しいと思う。エリクの彼女として気遣いの言葉を掛けないと。


「頑張ることは素敵だけど、無茶は駄目だよ。もう私の中では世界で1番強くて格好いい男性はエリクだもん、心配させないでね? それが私を惚れさせたエリクの責任なんだから」


 少し言葉を掛けるつもりが、いつの間にか気恥ずかしくなる台詞を呟いちゃってた。


 照れくさくなった私が視線を下に落とすとエリクは両手で私の右手を握り、想いを語る。


「そうですね、最優先にすべきことはスミレの笑顔を守ることですからね。誓います、スミレに心配を掛けないと。僕もスミレがピンチに陥った時、頭が割れそうなほど不安になりましたからね。その時、改めて思いました。僕はどうしようもないほどにスミレのことが好きになっていたのだと」


「エリク……」


「だから本当は今日の夜に渡すつもりだった物を今、渡します。どうしても想いが抑えきれないので…………」


 深く沁みる愛の言葉を囁いた後、長めの沈黙を経て懐に手を入れたエリクは…………


「これから先、ずっと傍でスミレを守らせてください。一生、僕の隣にいてください」


 手のひらに乗る小さな箱を開け、プロポーズの言葉と共に指輪を捧げてくれた。美しいリングには青みがかった、濃い紫色の宝石が付けられている。すみれの花を彷彿とさせる美しい色の宝石が。


「嬉しい……本当に、ありがとう」


 感情が抑えられず指輪を持ったままのエリクに抱き着く私。耳元で「よかった」と小さく呟いたエリクは私の両肩に手を添え、ゆっくりと顔を傾け、柔らかな口づけを交わす。裁判の日以降、ずっと待ち望んでいた彼からの口づけを。


 彼の唇が離れていった瞬間、胸の奥にぽうっとした熱だけが残る。わずかに距離を取ったエリクが優しく目を細めて笑う。その爽やかな笑みに私は息を呑み、頬が自然と熱を帯びていくのを止められない。


 これまでの人生で1番幸せな時間だと断言できる。だけど、あまりに照れくさくて、この後どうすればいいのか、何を喋ればいいのか全く分からない。


 数秒の沈黙が永遠に感じる……エリクが喋ってくれるのを待っていると次に私の耳へ飛び込んできたのはエリクの声ではなく、何かが地面にドサッと落ちる音だった。


 音が聞こえたのはエリクの背後側、つまりベンチの端側だ。気になって視線を向けると地面に落ちていたのは1冊の本だった。


 エリクは申し訳なさそうに頭を掻きながら本を拾い上げる。その本はちょうど裏側を向いており、下部に小さく『著者 天才漫画家 グスタフ・ガントレット』と書かれている。


 ロマンチックな雰囲気が吹き飛ぶ急展開に笑えてくる。私が「その本は?」と尋ねるとエリクは語る。


「実は今朝、グスタフの家から僕宛に本と手紙が届いていたんです。手紙には短くシンプルに『俺の初作品だ。スミレと2人で読んでくれ』と書かれていたのです。折角だから今、読んじゃいますか」


 正直、エリクの顔も見られないぐらい照れくさい状況だったから、ありがたいかも。


 賛成した私は読みやすいように体を寄せるとエリクは1ページ目を開く。そこには既視感のある“転生者の物語”と“1人の少女”が描かれており、私とエリクはクスリと笑う。


「エリク、これって……」


「ええ、この設定は間違いないでしょうね。グスタフらしい粋な作品ですよ。それじゃあ次のページを……あっ!」


 ページを捲る直前でエリクが驚きの声をあげ、自身の持つ懐中時計を見つめて立ち上がる。


「気が付けばこんな時間に……集合時間が迫ってますよ!」


「た、大変、急がないと! 今日はエリクの御両親と初めて会う日なんだから遅刻なんて許されないよ! あ、でも、御両親からすればフィオルとは顔を合わせたことがあるから“初めまして”と言うのも変なのかな?」


「“初めまして”でいいですよ。だって貴女はクワトロ家の次女スミレなのですから。きっとスミレとフィオルをモデルにした漫画の主人公も同じことを言いますよ」


 私とエリクは同時に微笑みを浮かべて漫画の表紙に目を向ける。


 そこには黒色の右目と水色の左目を持ち、すみれ色の長髪をたなびかせ、屈託のない笑顔を浮かべる少女が描かれていた。まるでフィオルと前世の私を足して2で割ったような主人公の少女――――3人目のすみれ、ヴァイオレットの姿が。


 グスタフのプレゼントが心に沁みる。私、フィオル、ヴァイオレット…すみれの花を示す名に生まれたことを誇りに思う。最高に素敵な共通項に笑みがこぼれ、私の顔を見たエリクも笑う。


「ふふっ、今のスミレの笑顔、ヴァイオレットにそっくりでしたよ」


「そう? だったら嬉しいなぁ」


「ええ、僕が言っているのだから間違いありません」


 エリクは左手で私の手を握ると優しく立ち上がらせてくれた。私とエリクは手を握ったまま走り出す。


 走ることに夢中のエリクはまだ右手に本を持っていた。天才漫画家グスタフのデビュー作“ヴァイオレット・ファンタジー”を。






=======あとがき=======


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乙女ゲームのヒロインに転生したら、攻略対象の一人から殺されかけました ~異界に咲く3人の菫~ 腰尾マモル @kajikajita

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