元厨二病は自作武器でダンジョンに挑む
真田モモンガ
第1話 俺の黒歴史①
中学一年生の冬、俺は厨二病になった。
ダンジョンが現れて三年。
少しずつ、社会がダンジョンや魔力を受け入れ始めていた。
そんな時、俺は冬休みを使って行った旅行先の小さな雑貨屋で綺麗な石を買った。
店主が言うには、それは秘密のルートで仕入れた魔石らしい。
俺はその言葉を信じて小遣いの大半を手放した。
常識を持った大人なら、その話を信じなかっただろう。
当たり前だ。
魔石は政府が管理していると、ニュースで頻繁に話題になるからだ。
そんな魔石をこんな真っ昼間から堂々と売っている訳がない。
俺はその考えに至らなかった。
俺は魔石を三つ買った。
それぞれ青、赤、黄色に発光している。
その店主は丁寧に高そうな布に三つの魔石を入れて渡してくれた。
俺は喜んで家に持ち帰り、机の引き出しに隠した。
店主に親にはバレたらダメだと言われていたからだ。
早速ネットで魔石について調べた。
しかし、まともな情報が出てこない。
その時期はまだ民間にダンジョンの情報が出回ってなかったからだ。
それなら、と俺は英語でダンジョン 魔石と検索した。
日本語の情報と英語の情報では、英語の情報の方が多いだろうという、中学一年生にしては中々鋭い考え方だ。
まぁ、中学一年生なので英語は翻訳サイト頼りだけど。
結果、それは大当たりだった。
魔石の加工製品や色の違いによる性能差など様々な情報が得られた。
その中で最も俺の心を惹いたのは、魔石内にある魔力の存在だった。
魔石内の魔力は莫大であり、その魔力を扱うことができれば無尽蔵の魔力を得られると、そのサイトでは書かれていた。
当時の俺は政府主導で行われた魔力検査で、検査員も驚く魔力量10を記録して落ち込んでいた。
そんな俺にとって、その情報は希望になった。
別に魔力量が少ないからと言って将来何か悪影響を及ぼすことはない。
しかし、中学一年生の俺にとっては重要なことだったのだ。
運動神経とかと一緒だ。
運動選手にならないなら就職とかには関係ないけど、悪かったら嫌だというもの。
とにかく、俺は一人で盛り上がってテンションをぶち上げていた。
英語のサイトに書かれている通り、自分の魔力を全て使い切り、空にした状態で魔石の魔力を操ろうとして救急車で運ばれる程度にはテンションが上がっていた。
病院で検査を受けて魔力欠乏症だと診断され、医者のおじいちゃん先生に少し怒られた。
「元々の魔力量が少ないから助かった」「これで魔力量100を超えていたら即死亡」「そもそもなぜ魔力を空にした」と言われて頷くだけだった。
そのおじいちゃん先生は最近生まれた魔力生理学の第一人者らしく、怒るついでに魔力についての豆知識的なのを色々教えてくれた。
俺がその豆知識を全部メモしていたからか、おじいちゃん先生は俺を気に入り、何か聞きたいことがあれば来ていいと言ってくれた。
この時点で、おそらく俺は厨二病を発症していたのだと思う。
おじいちゃん先生にこの時治してもらったら良かった。
次の日、魔力を一割だけ残して魔石の操作をしようと考えた。
だけど、これが意外と難しかった。
前日のは魔力を全て放出するだけだったから簡単にできた。
今回の一割だけ残すのはそれとは全然別物だった。
そもそも俺の魔力量は10だ。つまり、その一割というのは魔力量1。
魔力を1だけ残すということだ。
それは100mlを目隠しで正確に測るようなもの。加減が難しい。
だが、俺はやり切った。
ほんの少し、病院のお世話にならない程度の魔力を残して他は排出する。
そして、魔石の魔力を体内に吸収する。
体内に吸収した魔力は既存の魔力と混ざり合わず、喧嘩するように反発していた。
この時、俺はやっと理解した。
魔力を空にするのは、この反発を無くすためなのだと。
とりあえず反発していて鬱陶しいから魔石の魔力は全て排出した。
次に考えたのは、体内での魔石の魔力量を多くしたら俺の魔力は反発できないのでは? ということ。
試してみたら、違う問題が発生した。
俺の魔力の許容量が極端に少ないという致命的な問題だった。
俺の魔力量は10だ。
その10を超えた辺りから胸が圧迫されるような感覚を覚えた。
感覚でしか分からないけど、大体20まで詰め込んだら胸がはち切れそうになった。
そこでこの試行は止めて、魔石の魔力を排出した。
死ぬかと思った。
しかし、俺はここで懲りなかった。
魔石の魔力量を増やすのが無理なら、俺の魔力量を極限まで減らしたらいい。
0.1でも0.01でも残っていれば倒れることはないだろう。
そんなアホな考えで俺は半年間魔力の排出と操作の練習に時間を注ぎ込んだ。
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