ドキュメンタリーのように、地に足をつけた文章です。読みやすいけれど軽薄ではない。むしろ背中と肩にずっしりとしたものを積み上げていく。長い話ではないので、文字を読むのは苦ではない方、どうぞ。視界が不自由な主人公に見えてくるのは、無責任な人人人。人間の軽薄。それを閉じるまでの、短い時間の中に、作品がゆらめている。
不安、恐怖が入り混じるなかで日常を生きている視覚障害者の物語。必死に生きようとしても生きられない孤独感と、それでも立派に生きようとする人間性、そして病気を見る周囲の目。三つが調和された作品。うまく調理されていて大満足でした。
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