第13話 悪いこともあればいいこともある
(まさか。そうくるとはな)
カイルと師匠が去っていった。
俺はその背中を見送っていた。
(チャートが崩れたな)
俺の考えていたチャートではもちろん今のところは同行する予定だった。
つーか同行するのが当たり前すぎてこんなパターンなんて考えてなかった。
(だが俺はRTAプレイヤー。リカバリーのひとつやふたつ任せてくださいよ)
チャートが崩れた時どうやってリカバリーをするかもRTAプレイヤーの実力ってもんよ。
さてと、どうしようかな。
「ぼっちゃま」
(おやおや、不思議なこともあるもんだな)
振り返るとそこにはセバスが立っていた。
(原作だと序盤以降は出番がなかったんだが)
「なにやらお困りの様子で、助太刀いたしましょうか?」
ふむ。
ここまでは悪い方向にアクシデントが起きていたが、ここにきていい方向にアクシデントが起きたっぽい。
「ちょうどよかったよセバス。実は少し困っていてね」
「なんなりとご命令を」
「俺と一緒にとある場所に向かって欲しいんだよ」
セバスは俺の突然の言葉にも驚いた様子は見せない。
ただ、こう言うだけだ。
「なんなりとご命令を。ぼっちゃまの命に従うことこそ我が全てです」
(むっ。この執事、忠誠心が限界突破しているな)
ま、俺としては困ることもないしありがたく思っておこう。
「ついてきてくれセバス」
「御意」
恭しく頭を下げて俺に黙って付き従う。
そのまま俺は山の方に向かっていった。
山の奥の方、山頂に近いところくらいまで昇った。
「ところでぼっちゃまどうして山へ?」
「それだ」
俺は近くにあった折れた大木の数々を指さした。
「こんなことができるのは……」
「お前も想像してる通りドラゴンくらいしかいないだろう」
「ドラゴンがこの近くに……っ?!それにそのドラゴンというのはレオナルドの因縁の相手でしょう?」
「あぁ」
「ぼっちゃま危険です。私を倒したとは言えドラゴンは比べ物になりません」
「心配しなくていい。何度も倒してきた相手だ」
「何度も……?!いつのまに……?!」
「おっと。口を滑らせてしまった。これはオフレコで頼みたい。それか忘れてくれ」
俺がRTAプレイヤーでこの世界を何度も旅してきた、なんて言わない方がいいだろう。混乱させるだけだろうしな。
その時だった。
ピシッ。
ピシピシピシピシ。
「ぼっちゃま、地面に亀裂が」
「どうやらお出ましのようだな」
次の瞬間、地面を突き破ってドラゴンの顔が姿を現した。
それから数秒もしない間にドラゴンはその姿を全て見せて空へと飛び上がった。
「くっ、なんという熱気、威圧感!未だかつてここまでのものを感じたことは……ぐわっ!」
凄まじい風圧。
セバスの体は簡単に吹き飛ばされた。
「おいおい、セバス。(やはり)その程度か?」
「……っ!そんなことはありません!(この風圧の中微動だにしない……なんて。ぼっちゃまあなたはいったい……)」
「ゴァァァァァァァァァア!!!!」
ドラゴンは雄叫びを上げながら空高く登っていく。
しかし、その動きはどこか怪しい。
「ぼっちゃま。あのドラゴンどうやら本調子ではないようですな」
「(ただの老人になったとは言え)目は衰えていないようだな」
「(大陸最強と呼ばれた身です)えぇ、未だこの目は衰えておりません」
ドラゴンが地中から出てきた時の衝撃で岩の欠片が降り注ぐ。
「構えろ」
「はいっ!」
ザン!
セバスは降り注ぐ岩を一刀両断。
「取るに足らぬ岩石はお任せを。あなたと共に戦えること至高に存じます」
(自分の身くらいは守ってくれと言ったつもりだったのだが。まさか石を両断するとは)
まぁいい。今は目の前のことに集中しよう。
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