Eランクのカード使い

ヤズク

第1話




 今は昔、異常気象も目立っていた西暦2025年の1月1日となった世界中が新年を迎え終えた時、大異変は起きた。

 世界中のアスファルトの道路、一軒家やアパートにマンションの建物などの下から突如、植物学者でも見知ったことがない数多の木々と植物が一斉に突き破る形で大群生。

 それだけでなく、一気に成長して群生した木々──その時点で既に大きな森だらけとなった各場所からスライムとゴブリン、トロルにオーク、果てには西洋東洋関係なくドラゴンなども突如に現れた。

 その際、日本では自衛隊、外国でも軍隊などが銃器と兵器で応戦したものの、それらを持ってもスライムとゴブリンにすら全く通用しなかった。

 全く通用しなければ当然、応戦した自衛隊と軍人達の殆どは殉職してしまうし、当時は逃げ惑うしかなかった多くの民間人達も、今はモンスターと呼ばれる生物達により食い散らかされた。

 しかし、何の予兆もなく突如に人類と文明をモンスター達が終わらせようとしてくる中、少なからずの希望があった。

 カード使い、または召喚士やサモナーと呼ばれるようになった者達。

 そのカード使いと呼ばれるようになった者達に共通する特徴は、当時の新年を迎え終えたと同時に、その時点では1枚のカードをなぜか手にしていたことだけ。

 だが、今は新たな時代の先駆けと呼ばれるようになったカード使い達のカードは強かった。

 例えばモンスターの絵があるモンスターカードを使用すれば、ワイバーンが現れてはモンスター達を蹴散らす。

 炎の球が描かれたカード──ファイアーボールのマジックカードなどを使用すれば、使用した瞬間に使用者が狙ったモンスターを襲う。

 また、やられるとモンスター達は途端に肉と野菜、米や麦などを初めとした食料、今は化石燃料の代わりにもなる魔石、様々な金属や宝石、倒されたモンスターか魔法のカードのいずれかをランダムにドロップして消滅する。

 尚、カードの方はドロップする確率が非常に低いものの、ドロップしたカードを与えれば、最初の時点ではカードを持たない者達を新たなるカード使いにすることができた。

 つまり、今の偉大なる先駆け達のお陰で、人類に牙を剥くモンスターという脅威に、モンスターカードとマジックカードという、今の人類の武器となった物で対抗できるようになった。

 しかし、当時も今も現実はそう甘くはなかった。

 森から現れるモンスター達は、基本的に森の中心部にあるダンジョンがある限りは無限とばかりに出てくる。

 ダンジョンへと挑み、ダンジョンの最深部にあるコアを破壊しないと、モンスター達は森から湧いて出てくるのは止められない。

 なので、先駆けに続いていくカード使い達は2025年の始まりから今も尚、各国中に点在する要塞都市と呼ばれるようになった場所と人類をモンスター達から守り、可能であれば近場にあるダンジョンの破壊を試みている。

 だが、ダンジョン内にいるモンスター達は地上のモンスター達よりも強い為、中々に上手くは行かなかった。

 それでも試行錯誤しながら挑み続けたことにより、日本でも、世界各国でも、いくつかのダンジョンの破壊に成功。

 成功の後、ダンジョン跡地となった森を開拓しては大小の新たな要塞都市を作り、何の予兆もなかった始まりの時に数多の死者が出て、大幅に数を減らしてしまった人類は再び数が増え始めていた。


 その最中、異常気象──主に夏の35度越えや台風の異常発生などが地球からなくなっていることが学者達により判明。

 その理由は後々にわかったのだが、北極と南極にも大きなダンジョンが生まれていて、周囲の気温を下げに下げてくるモンスター達が存在するようになったことで、結果的に北極と南極の気温と環境を改善させていたり、異常気象により減るばかりだった南極の氷も復活させていた。

 つまり、自然環境だけを見れば今の地球は最盛期を迎えていた。

 だが、モンスター達が森から出て来ては襲い続ける限りは人類に安寧はないので、主にカード使いの素質がある若者達が頑張らないとならなかった。


 しかし、カード使い達にも、ある限界が存在していた。

 それは、保有コストというものである。

 保有コストが高ければ高い程、強いマジックカードを何度でも使用できるし、強いモンスターカードも揃えられる。

 逆に保有コストが低ければ、基本的に弱いカードしか扱えないので、コストのやりくりに四苦八苦することとなる。

 しかし、最初から保有コストが高いカード使いは保有コストの日々の増大が遅い、または大器晩成型ならぬ大器早成型らしい為、保有コストの増大が早くに止まりやすい傾向がある。

 つまり、昔のゲームで言うところのスタートダッシュボーナスがあるから、最初から最高でAランクのカード使いになりやすいということだ。


 次に、一番低いEランクの保有コストが低いカード使いの場合は、大抵が保有コストがほぼ上がらないままの役立たずでしかない。

 Eランクからの大器晩成型はまず、存在したことは過去から今もいないし、これからもそうなのだろう。


 次に、ダンジョンがある森の中で増えていくモンスター達を可能な限り減らすのを怠ると、ダンジョン内にいるモンスター達が地上から溢れるように現れては、要塞都市を襲いに来る。

 今はこの現象を魔物災害、またはモンスターハザードと呼ばれるようになっている。

 それが絶対に起こらないよう常に防ぐ為を最優先する為、最初期から保有コストが高いカード使いは即戦力になると優遇され、保有コストが低くて弱いカード使いは役立たず扱いされ、始まりの時点から、とんでもなく冷遇されてばかりなのが今の時代の現状であった。






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