宇宙科目

「はい!おはよー!このクラスの担任、ヴェロキ黄花きかだよー!みんな、よろしく…っって、前回とメンバー変わってないね」

担任と言って元気に飛び込んできたのは紺色の髪をポニーテールにした女性。

「んじゃ、出席とりまーす!」

「ちょっとまったぁぁぁぁ!」

するとまた別の女性が飛び込んできた。

「副担任のさいな三花みかだよ!みんな久しぶり!」

二人は仲良さそうに微笑んだ後、黄花はこっちに向き直った。

「んじゃ、出席とるねー!1番!明石咲人あかしさきとくん!」

「ん」

咲人は軽く顔を上げる。

黒いカーディガンを羽織った姿。黄色い吊り目は少し厳しい感じがある。

咲人は反抗的に足を組んで座っている。

「いつも通り素通りだねー。じゃあ、2番、幾多美緒いくたみおさん」

「はーい」

金色のロングヘアーを揺らしながら楽しそうに答える。

やんちゃそうな見た目でにーっと教師に笑う。黄色いカーディガンは、ちょうどいいサイズってところだ。

「明るいねー!3番、宇希美郷うきみさとさん」

「はっはい」

少し恥ずかしそうに美郷は答える。美郷は斜め下を向いてメガネをクイット上げた。

おさげの髪が横に垂れる。

「はい、次!4番、加美野結唏かみのゆきくん!」

「はいっ!」

結唏は元気よく答える。スポーツ少年といった健康な色の肌。

手には片付けが間に合わなかったのか、サッカーボールを抱えている。

「5番!空亡真希くうなまきくん!」

「はーいっ」

真希は金髪をかきあげる。紙には、いくつもの絵が描かれていて、どれもカップに入ったイラストだ。

「6番、虎視明日南こしあすなさん!」

「ういーっ!」

ふわふわした髪を揺らして笑っている。

そんな中、手にはカメラがあって手入れをしているようだ。

「7番、佐巻叶芽さまきかなめくん!」

「…あ、はい」

何かを考えていたようで、少し間を空けてから答える。

ぼんやりとまた上の空。だが、手はキーボードを押すように動いている。

「8番、澄野四ツ葉さん!」

「はいっ」

緑髪を揺らして笑っている。

前髪を止めているお団子ピンが太陽の光で光っている。

「9番、仙野李玖せんのりくくん!」

「はい」

明るそうにいったが、そに手にはメガネ。

だが、それをかけずに引き出しにしまった。

「10番、月川天音つきかわあまねさん」

「はい」

黄花に対して、冷たい視線がピシッと向けられる。

容赦なく教師を射抜いている。

「11番、中野三玲なかのみれいくん」

「はい」

気配を消していた三玲は呼ばれた時だけ姿を現す。

答えるとふわっと姿が消えた。

(実在はしてます)

「12番、桧木遊人里ひのきゆうりくん」

「はい」

背筋をピシッと伸ばして答える。手元には計画ノートと書かれたノートが10冊ほど積んである。

「13番、月野夜ノアくん」

「はっはぃ…」

ノアは背筋を曲げて小さく答える。

体は震えていて、顔は下を向いている。

さすが隠キャ。コミュ症発動。

「14番、屋代凛花やしろりんかさん」

「はい」

数学の問題集から軽く顔を上げる。

だがすぐに問題集に向き直った。

「15番、亘理明菜わたりあきなさん」

「はーい!」

花のヘアピンをつけて元気に答える。

ツインテールがふわふわと揺れた。


黄花は名簿から顔を上げる。

「みんな…本当に個性強いね…」

三花も苦笑いだ。

「まぁいい。んじゃ、今日は恒星こうせい惑星わくせいについて勉強するよ」

すると、すごいスピードでクラスメイトがロッカーに荷物を全て戻し、ノートを広げた。

「はい。んじゃ、恒星ってのは自分で光る星。例を言うと…太陽とかかな。自ら光と熱を放つ巨大なガス球であること、その内部で水素からヘリウムへの核融合反応が起き、膨大なエネルギーを生み出すこと、そしてその質量によって寿命や終焉が異なるものが恒星。星座の形を作っているのもほとんど恒星だ。そして表面温度によって色が変わる」

黄花はものすごいスピードで話しながら、黒板に文字を書いていく。

それに合わせてSクラスのメンバーもノートを取る。

すごいスピード。

黄花の早口についていけるメンバーもすごいが、このスピードで話してかける教師も教師だ。

「次、惑星。①「太陽の周りを公転する」、②「自己重力でほぼ球状の形状を保つ」、③「軌道上から他の天体を排除する」という定義がある。さらに、重さや密度も別々だな」

黄花は終わったとばかりにチョークを置いた。

「はい。今日はここまで。あとは自習。好きにしろ」

黄花と三花はそう言って教室を出ていった。

15人はかるくノートの復習をしたあと、ノートをしまった。

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