飛べないハルのアリウープ

詩一

第一幕 追放された人々

第00話 部活追放

『これからは僕が君の夢を守るよ』


 右手からボールをリリースした瞬間、幼馴染の天雀ひばりちゃんとの約束を思い出した。同時に、きっとこの約束は守れず、惜しまず注いできた努力は水泡に帰すのだと直感していた。

 ボールは放物線を描きながらゆらゆらとバスケットゴールへ向かっていく。ボールの軌道はリングを狙うにしては浅く短い。入らない。血の気が引いて行く感覚が先だったか、ボールがフローリングを打つ音が先だったかはわからない。ただ確かなことは、フリースローを外したと言う結果だけ。


「君には失望したよ、武月むつきくん」


 バウンドしたボールを取った億野おくのくんが軽蔑するように僕をまなざした。


「あれもこれもどれも、嘘だったと言うわけかい」

「あ、いや、これは」

「これは? これこそが物語っているんだろう? なにが、みんなのために時間を惜しまず努力をしてきた、だ。居残ってシュート練習していたのもただのアピールで、俺はまんまと騙されていたってわけだ」


 億野おくのくんの切れ長の双眸が忌々し気にわなないた。

 嘘じゃない。僕はバスケが好きで、レギュラーになるためにずっと努力して来た。


「君が大噓吐きと言うことはよくわかったよ。俺の悪い噂を吹聴したのも君だったんだな」

「それとこれとは……!」

「もういい。聞きたくない。なんにせよ、約束通り君は退部だ」


 こうして僕はバスケ部から追放され、居場所を失った。

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