伝説の英雄魔法使いと勘違いされましたが、俺はただのオッサンなので何も起こりません

嬉野K

弱いガーディアン

第1話 誰か……

 何を言うのか。

 誰が言うのか。


 重要なのはどちらだろう。


 まだ答えはわからない。だが1つだけわかった。


















 俺は何者なのだろう? 何者になりたかったのだろう?


 子供の頃の夢なんてとっくに忘れて、年齢を重ねた。意味もなく年月が過ぎ去って、気がつけばオジサンと呼ばれる年齢になっていた。


 定職にもつかず、フラフラと拠点を変えながら生きている。村から村、街から街に移り住んで、結局は馴染めずに他の場所に移動する。


 俺には人間関係の構築なんて不可能なのだろう。俺が去って場が収まるなら安いものだ。


 そう思って俺は、いつものごとく小さな村を出発していた。少し暮らしてみたが肌に合わず、最終的には離れることになった。


 村を離れる直前、


「やっと消えてくれた……」そんな小さな声が聞こえてきた。「あの人、無口だし暗いし……なに考えてるのかわからないんだよな。あんなのがいると村の空気が暗くなるし、いなくなってくれて助かったよ」


 それは本当に申し訳なかった。この自分の根暗な性格。直せるものなら直したい。


 ……


 また迷惑をかけてしまった。俺はいつもそうだ。誰かと仲良くなろうとしても、最終的にはただ迷惑をかけただけになる。


 迷惑をかけようとしてるわけじゃない。ただ話したいだけなのだ。俺の話を聞いてほしいだけなのだ。話を聞きたいだけなのだ。話し合いたいだけなのだ。


 ……


 暗い気持ちを抱えて、次の村を目指す。どうせそこでも俺は人間関係の構築に失敗して、移動することになるのだろう。もう期待なんてしていない。自分になんて期待するだけムダだ。


 ……


 ……


 歩いて歩いて、また村を見つけた。


 少し大きめの村だった。経験上大きめの街のほうが、俺の情報が伝わるのが遅れて長く居つける。


 そんな村に入った直後、


「おいおい……お前、なにやってんだよ……!」子供の怒鳴り声が聞こえてきた。「相変わらずノロマだなぁ。あーあ、お前のせいでボールをムダにしたよ」


 見ると、数人の子供が少年を取り囲んでいた。


 取り囲まれている少年は地面に倒れて、泣きそうな顔をしていた。かなり怯えている様子で、見ているだけで痛々しかった。


 少年を取り囲むのは同年代くらいの子供たち。


「お前が投げたボールが木に引っかかって取れなくなった。そうだよな?」


 ボールが木に……なるほど近くの木を見てみれば、たしかに高いところにボールが引っかかっている。あれは子供の背丈では届かないだろう。


 少年は泣きながら、


「な、投げたのは僕じゃなくて……」

「はぁ? なんか口答えするのか?」


 言われた少年はビクッと体をすくませて、黙り込んでしまった。


 なるほどイジメっ子のほうがボールを木に引っ掛けたのだが、その罪をなすりつけられたわけだ。なんとも不憫な少年だな。


 まぁこんな争いなど世の中に溢れている。俺だって少年を助けられるほど精神的に余裕があるわけじゃない。

 悪いが見捨てて行く。さっさと新しく住む家を探さないといけないのだ。


 だが……


「誰か……」少年は泣きながら、「助けて……」


 ……


 ……


 まったく……

 

 街に行くたびに面倒事に巻き込まれる性質は、どうにかならないものか。

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