友よ
夕雲
友よ
初めて出会ったのは幼い頃の公園だった。
砂場で遊んでいる僕に君は声をかけてくれたな。
人見知りだった小さな僕はそっぽを向いてしまったけれど、君は僕によりそって一緒に砂の山を作ってくれた。
開通させたトンネルの中で触れ合う手に僕はドキドキし続けていたんだぜ。
小学校に入学してクラスに入ると君はいた。
同じ幼稚園の子とは離れ離れになってしまった僕に君は後ろの席から話しかけてくれたな。
それ以来僕は君の後ろをずっと歩いていた気がする。
給食の時間、休み時間、下校時間、遠足でずっと僕は君の後ろで歩いていた。
その最中で僕は新たな友達も出来た。
君と仲良くなった子達は皆僕にも良くしてくれた。類は友を呼ぶなんてことわざを僕はこの時知ったんだ。
進級しクラスが別れた時は寂しかった。それでも君のおかげでできた新たな友達によって僕の寂しさは薄れていった。
クラス合同の体育の時間でのドッジボール。初めて君に敵対したことを何故か覚えている。
その後もクラスが一緒になったり別れたりとしていたな。引っ込み思案だった僕はいつの日か沢山の友達に囲まれていたんだ。
共に中学に進学して部活に入り切磋琢磨の日々だったな。
小学生の頃に習っていなかった僕は最後までレギュラーは取れなかったが続けることが出来たのは君がいたからだ。誇らしい君に負けたくなかったからだ。
他にもちょっとワルなことや、恥ずかしい記憶が共にあるな。君と語らう時はいつもその時を弄ってきやがって。こっちにだってカウンターのネタがあることを忘れていないか?
学業は互いに普通だったな。徹夜したわーなんて言ったりし合ったが正直ほとんどスマホや漫画を見ていたばかりだったんだぞ。そんな僕に対して君は同じくらいの点数だったから僕の方が優秀だったということでよろしいかな?
部活を引退して進路が迫った時。君との別れの時が近づいていることを実感できなかった。
向かう高校は別々の場所。本当は一緒のところに進学もしたかったんだが……それはやめた。君離れをしなければならないからとそう思ったからだ。
卒業式では意外と涙はでなかったよな。まぁスマホなんて便利なものがあるからいつでもやり取り出来るもんな。
あっさりと別れて春休みでも共に遊んで、いざ高校の入学式の時。
辺りを見回しても君が居ないことでようやく寂しさを覚えたんだぜ。
でもまぁ高校でもまた別の友達が出来た。君から教わった対人能力は今も僕の支えとなっているから。
初めは連絡を取りあっていたが次第にそれも少なくなって行ったよな。
お互いに今の関係に没頭していたから。それでもまぁ偶に遊んだりもしたから繋がりは切れなかった。その事に僕は感謝しているよ。だからこそ今でも会うことができるんだ。
月日は流れ僕は地元を離れることとなったな。
その時も別に泣きはしなかったが……飲み会で寂しいって言ってくれたな。僕も寂しいんだぜ。
偶の帰省で君と僕は酒を交わすよな。
話すことはいつも思い出を振り返るばかりだ。
輝かしき友情の日々を思い出す度に楽しく、懐かしく、寂しい気持ちにもなる。
それでもさらに大人になっていつものように君と語らう時、それすらも楽しかった思い出に変わるのかもな。
友よ。
今君は何をしている?
何を思う?
友よ。
僕は楽しいぞ。
君が僕に声をかけてくれたあの時から。
友よ。
僕と友達になってくれてありがとう。
友よ 夕雲 @yugumo___
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