第11話 おヒメ、村人にさらわれる
「おヒメ、おヒメはおるかぁ!」
そうどなりながら、村の男衆数名をひきつれてやってきたのは、
「は、はい……なんでございましょうか」
こう応じながらおそるおそる家の戸をあけたおヒメは、目のまえにニヤニヤと立ちはだかる荒くれどもに、ひるんだ。
ひとりが、おヒメの腕をわっしとつかむ。
「なにをするのです!」
と振りはらい、少しでも距離をとろうとすると、包囲したままじりじりとつめてくる。
「やめ、おやめください!」
「おヒメ、呪いの子であるおぬしをこれまで生かしてやった恩、返してもらうときが来たようじゃ。村のイケニエになってくりゃれ」
「イケニエ……?」
ここにいたるまでのいきさつはこうである。
祭りにおいて、
「
「
「約束はなァ、『祭りを開催すること』じゃねェんだよ! 祭りを開催するなどして『サメ神さまに大量に人を喰らわせる』のほうが約束だったはずだぜ、なァみんな?」
そうエッチ
「そうだそうだ!」
「親分のいうとおり!」
「熟女を抱かせろ!」
など野盗どもが好き放題にのたまう。
「そ、そ、そんなことを申されましても……」
「それになァ、見てたぜ
「ひ、ひぃぃぃぃぃ」
などとおどされ、エッチ
さし出したあと、追加で要求されたらどうするつもりであろうか。
それはそのとき考えようと
先ほどからずずいと前に出ていたおババさまが、しゃがれた声を一層はりあげる。
「ワシの占いによれば、海が、海が荒れておるのじゃ! サメ……
「そんな、そんな道理があるものですか! これまでさんざん迫害しておいて、なにが、なにが村のためなどと……!」
「おお、さすがは『呪いの子』じゃ。いままで村の一員としてやった
そう命じられたゲス
ゲス
「ずっと、ずっとむだだったではないか……」
そう
そうして、「
(彼は、自分とは別に自立するひとりの人間であって、都合のいいときに助けてくれるだけの存在ではない)
(彼を都合のいいだけの存在とみなし、扱うことは、自分がいま村の人々にされているのと同じことではないか……)
そんな思いが頭にうずまき、助けをもとめる声はのどの奥にひっかかって、ひっ、ひっ、というすすり泣きとして土のうえへこぼれてゆくばかりであった。
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