第9話 忍者のサメ退治
一方、
恐怖によって半狂乱となっている人々は、足もとでおぼれている
もがいてどうにか海から顔を出し、なにが起きているのか把握するまもなく、
「おヒメどの! おヒメどのはおられるか!」
とひとまずさけんだ。
が、悲鳴と
「ええい、しかたあるまい」
「忍法・
と吹き矢を手にし、空を舞っていたカモメにぷすりとおのれの髪の毛を刺すと、その視界を
密集している人の頭がワラワラとうごめいているため、おヒメの居場所はさすがにわからぬ。
が、人間をやすやすと噛みくだけるほど大きなサメが、村人たちを喰い荒らしていることは把握できた。
これを放置するわけにはゆかぬし、この原因を断てば話が早かろうと、さらに手早く印を結び、なるべくまわりに聞こえぬようボソリとつぶやく。
「忍法・
すると
その姿を利用し、彼は人々の足のあいだをすり抜けてゆく。
「なにこれ、いとキモし」
「へへ、ご立派な黒光りじゃねぇか……」
「ウナギじゃーん今晩のおかずにしよ」
など状況がよくわかっていないものどもから声があがり、ひとりは素手でつかまえようとしてきたものの、ウナギ特有のぬるぬるを利用しにゅるりん! とみごとに避けてみせる。
海中から見える景色で、サメが残忍に人々を喰らいまわっている姿が、見てとれる。
それなりの人数が砂浜にまであがったようであるが、押し合いへし合いしているせいで逃げ遅れているものもまだまだいる。
「ほうれ、おぬしの好物でござる」
人々から少し離れた位置にまで移動し、いつのまにやら術を解いて人の姿にもどった
ここまで人が密集していては、あまり大がかりな忍術はつかえない。
そう判断し、サメが好む血液を海にたらし、ひきつけようと考えたのだ。
「
群衆にもまれながら、ようよう顔を出したおヒメは、仁王立ちに立つ
海から、サメが飛び出す。
不敵に笑う
「なんてこと、そんな……」
砂浜にひざをつき、悲嘆に涙をにじませるおヒメであったが、しかし、見よ。
その喰われたはずの
よく見れば、先ほど切ったはずの傷も腕にない。
そうして、昨日も聞いたあの
「忍法・分身の術」
その言葉とともに、サメの腹が横一文字に切り裂かれ、ブシャアアアとすさまじい血が
村人たちからは見えない奥側に
その勢いのままに陸へとうちあげられたサメは、びくんびくんと
目立つのをきらった
しかし、自身のあやつる「サメ神さま」をやられたはずのエッチ
「あの忍法、
どういう意味かは定かでないものの、彼らが考案した〈ばすと〉などの隠語(もし読者が似た単語をご存じであれば、それは奇跡にも似た偶然にすぎないことを指摘しておきたい)にて指示を出しつつ、野盗どもはあやしく笑いながら夜の闇へまぎれてゆく……。
「親分、あっし的には〈ばすと〉が最強だと思うんですが……」
といううっかり
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