No.10「無限ポキポキ」
1. スキル名
「無限ポキポキ」
2. 能力
指をポキポキと鳴らした際のクールタイムが完全に無くなる。一度鳴らした指を、間髪入れずに何度でもポキポキ鳴らし続けることができる。
3. 残念ポイント
・何の役にも立たない: 戦闘や生産、日常生活のあらゆる場面において、一切の実用性がない。
・周囲に迷惑: 静かな場所(図書館、会議中、試験中など)で鳴らせば、ただの騒音となり、周囲の人々から白い目で見られたり、注意されたりする。
・指の健康への不安: 疲労を感じないだけで、実際に指の関節に負担がかかっていないかは不明。長時間鳴らし続ければ、将来的に何らかの関節の病気を引き起こす可能性も否定できない。
・癖になりやすい: クールタイムがないため、無意識のうちに鳴らしてしまい、やめるにやめられなくなる可能性がある。
・悪用できない: ギャンブルでイカサマに使う、敵を撹乱するなど、悪いことにも使えない。
4. 使用例(ショートショート):
「集中を奪う音」
ルークは、生まれつき奇妙なスキルを持っていた。彼の指は、一度ポキポキ鳴らした後も、すぐさま何度も鳴らすことができるのだ。スキル名は「無限ポキポキ」。周りの友人からは「何の意味があるんだ、それ」と呆れられ、ルーク自身も、なぜこんなスキルが自分に宿ったのか理解できなかった。
ある日、ルークは王立図書館で勉強をしていた。魔術師の卵として、膨大な魔導書を読み解く必要がある。しかし、静まり返った館内で、彼はつい癖で指をポキポキと鳴らしてしまった。
「ポキッ、ポキッ、ポキポキポキッ!」
一度鳴らせば止まらない。隣に座っていた学者は眉をひそめ、向かいの席の魔導師は集中を乱され、魔導書を閉じてしまった。館内の誰もが、ルークに向けられる視線は冷たかった。ルークは慌てて指を止めようとするが、一度鳴らし始めると、なぜか指が勝手に動いてしまうように感じた。
別の日は、騎士団の入団試験に挑んだ。試験官は厳格な騎士団長だ。面接の最中、緊張したルークの指が、また無意識に鳴り始めた。「パキッ、パキッパキッ!」
騎士団長はピクリとも動かない。ルークは必死に指を隠すが、音は止まらない。
「……貴官の指鳴らしスキルは、一体何のためのものだ?」騎士団長が静かに問う。
「いえ、その、これは……」ルークは言葉に詰まった。
結局、ルークは不採用となった。「騎士たるもの、いかなる時も冷静沈着であるべし。その指鳴らしでは、敵に集中力を乱されるだろう」
ルークは打ちひしがれた。このスキルは、自分から集中力を奪うだけでなく、他人の集中力までも奪ってしまう。まさに、何の役にも立たないどころか、邪魔にしかならない「残念スキル」だった。
今日も、ルークはカフェで一人、熱心に勉強する隣の客の指が、ふと鳴るのを見た。「ポキッ」。その瞬間、ルークの指が無意識に動き出し、止められない。「ポキポキポキポキッ!」
隣の客がギロリと睨む。ルークは申し訳なさそうに頭を下げた。
今日もまた、彼の「無限ポキポキ」は、静かな空間に、残念な音を響かせている。
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