No.7「薔薇の美貌(一時的)」
1. スキル名
「薔薇の美貌(一時的)」
2. 能力
口に生きたバラをくわえている間、誰の目から見ても完璧な「イケメン」(または「美人」)に変貌する。肌は滑らかになり、瞳は輝き、顔のパーツは黄金比に整い、見る者を魅了するオーラを放つ。
3. 残念ポイント
・バラの供給問題: 常に生きたバラを調達し続けなければならない。枯れたバラでは効果がなく、バラが手に入らない場所や季節では全くの無力。
・物理的な制約: 口にバラをくわえている間は、まともに会話ができない。滑舌が悪くなり、大事な交渉や告白の場では致命的なデメリットとなる。食事もできない。
・飲食物の制限: バラをくわえたまま飲み物を飲んだり、食事をしたりすることは不可能。
・状況を選ぶ: 日常生活で常にバラをくわえている姿は、奇妙で不審者に見られる可能性がある。
・花粉症の危険: バラの花粉症持ちの場合、スキルを使うたびに苦しむことになる。
・外見のみの変化: 性格や能力、知性など、内面的なものは一切変わらない。外見とのギャップに苦しむこともある。
4. 使用例(ショートショート):
「バラの花束と沈黙の英雄」
ある街に、普段はごく平凡な青年、レオがいた。彼のスキルは「薔薇の美貌(一時的)」。口にバラをくわえると、世界中の誰もが振り返るほどの美丈夫に変貌する。しかし、その間、彼はまともに話すことすらできない。
レオは恋をしていた。街一番の歌姫、セレナに。彼女は美しい歌声と、人を惹きつける明るい笑顔の持ち主だった。レオは何度も告白しようとしたが、いつも勇気が出なかった。そんなある日、彼はスキルに望みを託す。
セレナのコンサートの日。レオは最高級のバラを一本手に入れ、コンサートホールの最前列に陣取った。セレナの歌声が響き渡る。素晴らしい歌に、レオの心は震えた。そして、コンサートが終わると同時に、彼はバラを口にくわえた。
会場の誰もが、レオの姿に息をのんだ。そのあまりの美しさに、セレナさえも目を奪われる。レオは、最高の笑顔でセレナに手を差し伸べた。そして、言葉にならないかすれた声で、精一杯の愛を伝えようとする。
しかし、バラをくくわえているため、その声は「もごもご…」としか聞こえない。セレナは戸惑いの表情を浮かべた。周囲の観客は「何だ、あいつは。カッコいいのに変なやつだな」とひそひそ話す。
その時、突然ホールの天井から、謎の魔物が現れた!会場はパニックに陥る。人々が逃げ惑う中、レオはバラをくわえたまま、ただ立ち尽くしていた。この美貌は、魔物には何の効果もない。しかも、口が塞がっているため、ろくに助けを呼ぶこともできない。
絶体絶命の状況で、レオは決断した。彼は口からバラを抜き取った。途端に、彼の顔はいつもの平凡な姿に戻る。だが、彼は叫んだ。「みんな、逃げろ!セレナ、君はそっちだ!」
そして、魔物へと走り寄る。もちろん、彼に戦う力などない。ただ、魔物の注意を自分に引きつけ、人々に逃げる時間を与えるためだった。魔物は嘲笑うかのように、平凡な男に襲い掛かる。
人々が避難し、魔物が倒された後、セレナはレオのもとに駆け寄った。
「あ、あの…さっき、バラをくわえていたのは…」
レオは照れくさそうに頭をかいた。
「俺だよ。なんとか君を、みんなを助けたかったんだ」
セレナは、バラをくわえた完璧な美貌よりも、人々のために身を挺した平凡な彼の姿に、真の「イケメン」を見た。その後、二人がどうなったかは、また別の話。だが、あの夜、バラをくわえたままでは何もできなかった彼が、バラを外したことで真の勇気を見せたことは、街の人々の間で静かに語り継がれることになった。
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