No.5「マルチリンガル鑑定(ランダム3種)」
1. スキル名:
「マルチリンガル鑑定(ランダム3種)」
2. 能力:
自身のスキルリスト、または鑑定魔法によって表示される他者のスキル説明が、常にランダムな3種類の言語で表示される。元の言語(例:日本語)での表示は保証されず、最低でも3種類、最大でも3種類しか表示されない。
3. 残念ポイント:
・内容理解の妨げ: 肝心なスキル内容を理解する前に、どの言語で表示されているのかを判別し、翻訳する手間が生じる。知らない言語が表示された場合、全く意味が分からない。
・混乱を招く: パーティーで連携を取る際、自分のスキルが突然「Fireball (English) / Feuerball (Deutsch) / 発火玉 (繁體中文)」などと表示されたら、即座に理解できず混乱する。
・日本語が表示されない可能性: 母国語であるはずの日本語(あるいは使用者の共通言語)が、必ずしも表示されるとは限らないため、自分のスキルですら理解に苦しむ場合がある。
・無意味な情報: 1つのスキルに対して3つの言語が表示されるため、情報量は増えるが、実際に役立つのは理解できる言語の1つのみ。残りの2つはただのノイズ。
・国際的ギルドでの足かせ: 多数の言語が飛び交う国際的なギルドや商談の場では、逆に情報の伝達速度が落ちる原因となる。
4. 使用例(ショートショート):
「ギルドマスターの頭痛の種」
国際都市ミナト。この街の冒険者ギルドを束ねるマスターのルイスは、今日も頭を抱えていた。原因は、新人冒険者エディだ。彼のスキルは「マルチリンガル鑑定(ランダム3種)」。エディが視認するスキルリストや、彼が鑑定した魔物の能力が、常にランダムな3つの言語で表示されるという、全くもって意味不明なスキルだった。
「エディ! 君の『剣術』スキルは、今何て表示されているんだ!?」
「えーっと……『Schwertkunst (Deutsch)』と、『Art de l'épée (Français)』、あとは『검술(한국어)』でございます!」
「韓国語だと!?なんでだ!ここは日本語圏だろうが!」ルイスは頭を抱える。「つまり、いつもの『上級剣術』なのか!?」
「たぶん……でございます!」
ある日、難解な古代文字で書かれたダンジョンの地図が持ち込まれた。鑑定を依頼されたエディは、集中してスキルを発動した。
「マスター! これは……『秘宝への道程 (日本語)』と、『Path to the Treasure (English)』、そして……『Njia ya Hazina(Swahili)』でございます!」
ルイスは地図を奪い取るように覗き込む。スワヒリ語⁉ なぜここでアフリカ大陸の言語が⁉ 他の鑑定士たちが唸る中、エディの鑑定だけがやたらと丁寧語かつ多言語なのだ。ルイスは、内容が合っていることだけは確認できたものの、毎回こんな調子では仕事にならない。
極めつけは、強力な魔物『ワイバーン』討伐の依頼だった。危険な魔物だ。
「エディ! ワイバーンだ! 奴のスキルは何と表示されている!?」
エディは震える手で鑑定水晶を構えた。
「ええと……『토해내는 겁화 (한국어)』……『炎のブレスでございます (日本語)』……そして、『نفس نارى (العربية)』……アラビア語でございます!」
「アラビア語だと!?ふざけるな!そんなことをしている場合か!」
ルイスが叫び終わる前に、ワイバーンの炎のブレスがギルドの壁を焦がした。
「ああ、もういい!君はもう、鑑定しなくていい!ただ、後ろにいてくれ!」
ルイスは叫んだ。エディのスキルは、決して役に立たないどころか、緊迫した状況をさらに混乱させる、ギルドマスターにとって最高の「頭痛の種」だった。
今日もミナトのギルドでは、エディの周囲でスキル表示がランダムな多言語に変わり、そのたびにルイスの叫び声が響き渡るのだった。
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