No.3「隠しスキル(真の能力は非表示)」
1. スキル名
「隠しスキル(真の能力は非表示)」
2. 能力
スキルリストや鑑定魔法など、いかなる手段をもってしてもスキルの真の能力が他者には表示されない。表示されるのは、ごくありふれた、あるいは全くのハズレに見えるダミーのスキル名と説明だけ。持ち主自身も、真の能力を完全に把握しているとは限らない。
3. 残念ポイント
・初期評価が最低: スキル鑑定で見ても「【なし】」「【雑草育成】」「【石ころ生成】」など、価値のないスキルと認識されるため、パーティーへの加入を拒否されたり、差別されたりする可能性が高い。
・真価に気づきにくい: 持ち主自身も、表示されるダミーの情報に惑わされ、自分の真の能力に気づくまでに時間がかかる、あるいは一生気づかないこともあり得る。
・使い方が分からない: 真の能力が不明なため、いつ、どのように使えば良いのか分からず、宝の持ち腐れになる。
・誤解されやすい: ダミーのスキル名がそのまま能力だと思われ、周囲からバカにされたり、期待はずれと見なされたりする。
・不意の能力発動: 意図せず真の能力が発動し、予期せぬ事態を引き起こす可能性がある。
4. 使用例(ショートショート):
「最弱鑑定士の真実」
辺境の街で、ロイドは「最弱鑑定士」と呼ばれていた。彼の鑑定スキルは「【真実看破(ゴミ限定)】」と表示され、文字通り、道端の石ころや折れた木の枝がどれだけゴミであるかを正確に言い当てることしかできなかった。誰も彼に仕事を依頼せず、ロイドは肩身の狭い日々を送っていた。彼の本当のスキルは、誰にも表示されない「隠しスキル(真の能力は非表示)」だったが、彼自身もそのことに気づいていなかった。
ある日、彼の幼馴染で剣士を目指す少女、リリアが傷だらけで戻ってきた。彼女は、王都のギルドで「鑑定士」のスキルを持つパーティーに加入しようとしたが、「君の持つ剣には何の加護もない。ゴミだ」と断られたという。
ロイドは悲しむリリアの剣を預かり、いつものように鑑定スキルを発動した。
「【能力:切れ味ゼロ。耐久度:紙。備考:ただの鉄屑】」
表示されたのは、いつものように剣を徹底的に貶す、最低な結果だった。だが、その時、ロイドの指先が剣に触れた瞬間、彼の頭の中に、これまで見たことのない文字列が閃いた。
『真の能力:【概念強化(武器限定)】』
『備考:使用者の「信じる力」に応じて、対象武器に最も欠けている概念を付与する。対象が「切れ味がない」なら「切れ味」を、「防御がない」なら「防御」を。』
ロイドはハッとした。これは鑑定結果ではない。彼の頭に直接響く、奇妙な「声」だった。
「リリア! この剣は、ゴミなんかじゃない!」
半信半疑のリリアに、ロイドは懸命に説明した。「俺がこの剣を『最強の剣だ』と信じれば、そうなるんだ!」
リリアは混乱しながらも、ロイドの言葉を信じてその剣を握りしめた。次の日、リリアは再びギルドの試験に挑んだ。以前と同じ、何の変哲もない鉄の剣を手に。
彼女の相手は、重装の騎士。騎士の剣がリリアに迫る。リリアは恐怖に震えながらも、ロイドの言葉を思い出し、剣を信じて振り抜いた。
ギィィィン!という甲高い音と共に、騎士の重い鎧が、豆腐のように両断された。試験官も観客も、目を疑った。あの「ただの鉄屑」の剣が、どうして?
ロイドのスキルは、いかなる鑑定でもその真の能力を示さない。彼自身も、まだその全貌を理解しているわけではない。しかし、彼は気づき始めていた。自分のスキルは、**「ゴミをゴミと鑑定する」ことではなく、「ゴミに隠された真の可能性を見出し、引き出す」**能力なのではないか、と。
今日もロイドは、街に転がるゴミを拾い上げる。それは誰の目にも何の変哲もない石ころだが、ロイドの目には、その中に秘められた、まだ見ぬ真の力が輝いて見えているのだった。
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