No.2「逆立ち健脚」
1. スキル名
「逆立ち健脚(さかだちけんきゃく)」
2. 能力
逆立ちして歩行している間は、どれだけ歩いても疲労を感じない。肉体的な疲労が蓄積せず、スタミナが無限に続く状態になる。
3. 残念ポイント
・そもそも逆立ちが難しい: 逆立ちを維持すること自体に高度な体幹とバランス能力、そして慣れが必要。一般的な人が簡単にできるものではない。
・人目につく: 街中や人前で逆立ち歩行をするのは非常に奇異に見られ、精神的な疲労や恥ずかしさが伴う。
・手足への負担: 肉体的な疲労は感じないが、手のひらや手首、肩には体重がかかり続け、腱鞘炎や関節痛のリスクがある。また、長時間の逆立ちによる血流の変化も懸念される。
・移動速度が遅い: 普通に歩くよりも移動速度は格段に落ちる。
4. 使用例(ショートショート)
「逆立ち巡礼者アルス」
アルスは、とある辺境の村に住む変わり者だった。彼のスキルは「逆立ち健脚」。疲労を感じずに歩けるという、聞けば一見とんでもない能力だが、条件は「逆立ちして歩くこと」という残念極まりないものだった。普通の人間は、逆立ちを数分維持するのも困難だというのに。
当然、彼は村人から「何の役にも立たないスキル」「見ているだけで首が痛くなる」と嘲笑されていた。しかしアルスは、ひっそりと毎晩、誰もいない裏山で逆立ち歩きの訓練を続けた。手のひらは豆だらけになり、肩は悲鳴を上げたが、スキルのおかげで肉体的な疲労感はない。やがて彼は、何時間でも逆立ち歩きを続けられるほどの体幹とバランスを手に入れた。
ある年、遠く離れた聖地にしかない秘薬が、村の重病人を救う唯一の望みとなった。しかし、聖地までの道は険しく、通常の旅人では数ヶ月、ベテランの冒険者でも一ヶ月はかかるという。しかも、聖地周辺は魔物の跋扈する危険地帯で、疲労困憊の状態ではとても踏み込めない。
誰もが諦めかける中、アルスが名乗り出た。「俺が行きます」
村人は馬鹿にした。いくら疲れないと言っても、逆立ちでこの道のりを?正気の沙汰ではない。
だが、アルスの旅は誰も予想しないものだった。昼間は普通の巡礼者のように休み、体力を温存する。そして夜、人気のない道を、彼は逆立ちで進んだ。手のひらに感じるアスファルトの冷たさ、夜風に揺れる木々のざわめき。視界は逆さまだったが、疲労は一切感じない。魔物が現れれば、とっさに普通の姿勢に戻り、剣で応戦した。戦闘で消耗しても、少し逆立ちで歩けば肉体的な疲労はリセットされた。
数日後、痩せこけ、服はぼろぼろになったが、その瞳には疲労の色が一切ないアルスが、聖地の門を叩いた。彼が持ち帰った秘薬は、村の病人を救い、アルスは「奇跡の逆立ち巡礼者」として、伝説の男になった。
それでもアルスは、普段は相変わらず村の隅でひっそりと暮らしている。彼の強靭な体幹とバランスは健在だが、滅多に逆立ちをすることはない。ただ、たまに子供たちが「逆立ちのおじさん!」と声をかけると、にこりと笑って、少しだけ逆立ちしてみせるのだった。
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