おつかれ同居生活~世話焼き幽霊に癒され、果てには憑依ヒーリング~
弓葉あずさ
01 突然の出会い
時刻:深夜
一人暮らしの自宅にて
//SE 玄関のドアが開く音
//SE スイッチを押し明かりをつける音
玄関(あなた)より少し離れた位置から、おそるおそる
「は、はわ……おじゃましてます……なんて……」
//SE 荷物を落とす音
//SE 後退り、玄関に背中をぶつける音
駆け寄るが、気を遣い、触れられない距離を保ったまま
「わわ! すみません、大丈夫ですか?」
「というか、もしかして……まさか、なんですけど……そのー……」
「お兄さん、わたしのこと、見えてます……?」
//あなた、おそるおそるうなずく
心底安堵したように
「そ、そうなんですね……! 良かったぁ……っ」
我に返って
「あ、良かったって言うのはお兄さんには失礼でしょうか……」
「すいません、でもわたしのこと見える人、初めてで……嬉しくって……」
「というか今までもここにいたのに、どうして急に見えるようになったんでしょう……?」
//あなた、「ゆ、幽霊……?」と呟く
はにかみながら
「あ、はい。わたしはお察しの通り……幽霊、ってやつです……えへへ……」
慌てて
「あっ! あの、危害を与えたりとかはしないんで……だ、大丈夫です、安心して……って言われても難しいですよね。どうしよう……」
しゅんと落ち込み
「わたし、あまり生前の記憶はなくて……長いことこの家で幽霊をやっていたんですが、話せる人なんていなくて、ずっと一人で……」
「だからほんとに、嬉しくて……今までずっとさびしかったから……それだけなんです……」
「驚かせて……迷惑をかけてしまってすみません……」
//害意は感じられず、「信じるよ」と告げるあなた
「……え……信じてくれるんですか……?」
「あ、ありがとうございます……っ」
「あの、玄関に立ったままだと疲れると思うので……中にどうぞ……ってわたしが言うのはおかしいですね」
「すいません。嬉しくて浮かれちゃってます」
//SE 靴を脱ぐ音
//SE 廊下を歩き、居間のドアを開ける音
近づいてきて
「お兄さん、お仕事だったんですよね」
「こんなに遅くまで……お疲れ様です」
「無理、しないでくださいね」
ためらいながら
「それと、あの……」
「迷惑はかけないようにするんで……このままここにいても大丈夫ですか?」
「あっ、もし嫌なら、わたしは自力では出られないので、霊媒師さん? 霊能力者さん? そういう専門の人に除霊を頼むとかになっちゃうと思うんですけど……」
「なんだかすみません……」
//あなた、少し迷うが、疲れ切っており「いいよ」と答える
「い、いいんですか……!? 自分から言っといてなんですけど、本当に……!?」
「ありがとうございます……!」
「あの、あの、本当に迷惑はかけないので……! むしろお力になれるように頑張りますね……!」
//主人公、「先住民はそっちみたいだしね」とおどける
コロコロと笑って
「ふふ、先住民って。お兄さん、面白い言い方しますね。でも、確かにそうなるんでしょうか……一応わたしの方がここにいる歴は長いですもんね……」
「それでは……不束者ですが、よろしくお願いします」
「あ、本当にお疲れみたいですね……眠っちゃいそう」
さらに近づき、囁いて
「でも、そのまま寝たらスーツが皺になってしまいますよ。着替えましょう……はい、がんばって……」
//SE スーツを脱ぐ音
//SE 脱いだスーツが床に落ちていく音
「大丈夫ですか……? スーツはわたしが掛けておくので、そのまま眠って大丈夫ですよ」
「あ、『幽霊なのに?』って顔をしてますね。大丈夫ですよ。ポルターガイストを応用すればどうにかできます。これくらい朝飯前ですよ」
//あなた、「そりゃすごい」と感心する
「ふふ。そう、器用なんですよ、わたし」
//SE 言葉に甘え、ベッドに倒れ込む音
//あなた、寝落ちする寸前「おやすみ……」
微笑み、優しく
「はい……お疲れ様です。お兄さん、おやすみなさい」
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