第4話 欠点と「グランフィール」
「魔術師は弱いのに、どうして対等な主従契約を結ばないのかな。ねえ、ブラン」
魔術師は一般的に、従魔契約を結ぶ。こちらは、主が強く、使い魔が弱い。
アステロッテに問われたブランは、顔をひきつらせた。
「それは、魔力のみならず、性格や思考なども引っ張られるからだと思いますよ」
「ああ~……」
アステロッテとカノンは、ブランと私を交互に見た。
「つまり、ブランはジョセフ化して、残念イケメンになったのね!」
「ん?」
私は、首を捻った。ソファの上で、弟のリシャールが顔を伏せている。
「泣いているのかい?」
「だって、人を愛したことで、他人に迷惑をかけるんだよ。身に覚えがありすぎる……」
弟は、手で肘をおさえ、ガタガタ震えていた。
「私に覚えはないのだけれど。ジョセフ時代だよね?」
「はあ~!?」
ブランに、にらまれる。あなた、私に自分の公務を押しつけましたよねと詰めよられる。
「それはそれ。公務より、リーデンと遊んでいるほうが、楽しいからね。代理はいる訳だから、放棄はしていない」
「それでいいの? 一国の王子様が?」
カノンが、真顔で尋ねてくる。
「私、理解した。つまり、ジョセフがリーデン様と主従契約を結び、城下町スタイルになった。その影響で、高貴なはずのブランが、そこらへんのお兄ちゃんみたいになってしまったのよ」
そこらへんのお兄ちゃんって。私は、ふきだした。
「リーデン様って、頭は良いのに、割と本能で動くタイプなのよ。私が小さい頃、みどり目目当ての輩がやって来たでしょう。誘拐するそぶりを見せたら、問答無用でボコっていたもの」
私は、昔のリーデンを思い出し、胸をときめかせた。
「そうそう。リーデンって、そういうところあるよね」
リーデンには、王立魔法学園に入学後、剣術と体術の教師をつけた。
「何故か、やたらと血を見たがってさ。木剣とか、わざと切れないようにしている剣を、密かに研いでいたよね。まあ、そんなこんなで、あまりにもリーデン・フィールという半ズボンはいた美少年が悪名高くなってしまって……」
「それで、グランフィールという名字をたまわって、その他の授業では、女装して過ごしたんですよ。リーニー・グランフィールとしてね」
ちなみに、当時の国王陛下曰く、「ブランに公務任せすぎ。ふくろうなんだから、狩りをたくさんさせなさい!」とのことだった。
その後、魔物討伐を公務に採り入れてもらうようになったのは言うまでもない。
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