檸檬は恋をまだ知らず
ササキタツオ
第1話 檸檬は恋をまだ知らず
凛子のMO「画材店の売り場。沢山の油絵具が陳列さ入れている棚の間を、私は身を縮め、隠れるようにして歩く。黄色い小さな檸檬を握りしめて、慎重にあたりの様子をうかがう。タイミングが肝心だ。店員さんから見えない、絵の具売り場の隅に素知らぬ顔で滑り込む。ここに決めた。私は檸檬を置いて、スマホで写真を撮った」
SE スマホのシャッターの音。
凛子のMO「作戦完了。その時だ、私は見知らぬ男子高校生とぶつかった……!」
翔琉「何よそ見してんだよ」
凛子のMO「同じ高校の制服。やばっ!」
翔琉「おい、待てよ。逃げんのか!」
凛子「ごめんなさい……!」
凛子のMO「全力ダッシュで画材店から飛び出す。檸檬爆弾・大成功!」
走る凛子の息遣い。
止まって、呼吸を整える。
凛子「逃げ切ったあ」
翔琉「おい。そこの女子!」
凛子「えっ……!?」
凛子のMO「振り返ると、私のあとをさっきの男子が追いかけてきていた。その男子の手には檸檬が……私の爆弾が握られていた」
翔琉「これ、お前のだろ」
凛子のMO「そう言って、男子は私に檸檬を突き出した。私は受け取るのを拒否した」
凛子「わ、私じゃありません……!」
翔琉「いや、お前のだろ」
凛子「ち、違います」
翔琉「うちの新入生だろ。しかも文芸部志望」
凛子「違います……!」
翔琉「迷惑だ」
凛子「迷惑って何ですか?」
翔琉「はあ?」
凛子「私、あなたに迷惑かけていません。それ、元に戻しといてください!」
翔琉「お前な」
凛子「サヨナラ」
走る凛子の息遣い。
凛子のMO「私は逃げた。今度は、男子は追ってはこなかった。全く、なんて日だ!」
M 軽快な音楽、入る。
凛子のMO「小説家・梶井基次郎の作品に『檸檬』という話がある。青年が丸善の商品棚に爆弾に見立てた檸檬を置いて立ち去る、という話だ。この奇妙な話が私は好きだ」
音楽、終わる。
凛子のMO「翌日。放課後。私は文芸部の部室で、例の檸檬爆弾の画像を部長の悠真先輩と副部長の真昼先輩に見せた」
真昼「あの、菊本さん……これ……本当にやったの?」
凛子「はい! だって、文芸部伝統の入部テストですから」
悠真「梶井基次郎の小説にあやかった、画材店に檸檬を爆弾のように仕掛けるっていうのは、確かにうちの伝統ではあった」
凛子「私の姉も文芸部のOBなんです。檸檬爆弾のことはいつも話してくれてて」
悠真「昔は、そうだったかもしれない。でも、今は事情が変わったんだ」
凛子「え……?」
真昼「まあ。でも。これで菊本さんも正式な文芸部員ね」
悠真「そうだけど……」
凛子「ありがとうございます! 先輩たちに続けて嬉しいです」
悠真「檸檬は置いてきちゃった?」
凛子「はい! ばっちりです」
真昼「そっか……また問題になったりして」
凛子「また問題って、なんですか?」
SE ドアのノックの音。
悠真「どうぞ」
SE ドアが開く。
凛子のMO「入ってきたのは、昨日、画材店で私の檸檬爆弾を持ってあとを追いかけてきた、あの男子だった!」
真昼「早見君……!」
翔琉「よっ」
悠真「翔琉、どうした?」
翔琉「これ。返しにきた」
凛子のMO「そう言って、この早見翔琉と呼ばれた男子は、檸檬をポケットから取り出して、私の前に置いた」
翔琉「昨日、そこのバカな新入生が駅前の画材店に仕掛けようとした、バクダンだ」
凛子「私、この人知りません……!」
翔琉「は? 昨日会っただろ」
凛子「し、知りません」
翔琉「とにかく、また美術部のせいにされるのはご免だから」
悠真「それで、わざわざ?」
翔琉「ま。そういうこと」
悠真「問題は未然に防がれたわけか」
真昼「よかった……。早見君、ありがと」
翔琉「じゃあな!」
凛子のMO「そう言って、早見翔琉は去って行った」
真昼「よかった」
悠真「ほんと、よかった」
凛子のMO「先輩たちの安堵が私を不快にさせた。問題って何? 私は伝統を守っただけなのに!」
凛子「あの、わたし……不合格ですか?」
悠真「大丈夫。檸檬爆弾のこと知っていただけで合格だよ」
真昼「菊本さん。よろしくね」
凛子のMO「先輩たちは優しくそう言ってくれた。けど、私はモヤモヤした気持ちを抱えながら、机の上に置かれた檸檬を手に取った」
走る凛子。
凛子のMO「私は再び檸檬を持って画材店へ向かった。尊敬する、梶井基次郎様。私は任務をやり遂げてみせます」
凛子のMO「再び、画材店の絵の具売り場に侵入する。鞄に忍ばせた檸檬を取り出して、そっと棚に置く。よし。だが、その時、私は腕をつかまれた。腕をつかんだのは早見翔琉だった」
翔琉「犯人逮捕」
凛子「(小声で)な、なにするんですか」
翔琉「しかも現行犯逮捕」
凛子「わ、わたしは……ただ……」
翔琉「とにかく、出るぞ」
凛子のMO「早見翔琉は爆弾を解除するかのように、そっと檸檬を持って、そして、店を出た。私は仕方なく、彼のあとについていった」
凛子「檸檬、返してください」
翔琉「お前、自分のしていることがわかってるのか? 大問題になるんだぞ。そんなに文芸部に入りたいのか?」
凛子「問題って何ですか?」
翔琉「それは……」
凛子「私、高校では、文芸部に入るって決めてたんで。爆弾を仕掛けるのは、私の任務なんです」
翔琉「お前馬鹿か」
凛子「は?」
翔琉「だったら交換条件だ。檸檬をまたバカみたいに仕掛けようとしたこと黙っておいてやる代わりに俺の絵のモデルやれ」
凛子「は、はあ……!?」
翔琉「それが嫌なら、学校に報告する」
凛子「卑怯です……」
翔琉「なんとでも言え」
凛子「絵のモデルやれば、見逃してくれるんですか?」
翔琉「交渉成立だな」
凛子のMO「早見翔琉は檸檬を私に向かって放り投げてきた。私はどうにかキャッチする。なんなんだ、この男子……!」
翔琉「俺、早見翔琉。2年。よろしく」
凛子「菊本です。菊本凛子。1年です!」
凛子のMO「翌日。文芸部の会合があるというのに、さっそく早見翔琉に呼び出された。旧校舎の薄暗い長廊下の先に、美術室はあった。がたついたドアをそっと開ける」
SE 美術室のドアを開ける。
翔琉「おそい!」
凛子のMO「早見翔琉がイーゼルにカンバスをセットしていた」
凛子「道がわからなくて」
翔琉「旧校舎、授業じゃ来ないもんな。そこ」
凛子「えっ……?」
翔琉「そこ。イーゼルの前に立って」
凛子「その……本当に私、絵のモデルやるんでしょうか……?」
翔琉「ん?」
凛子「その……モデルって、私などでよろしいんでしょうか……?」
翔琉「グズグズ言ってないで、はやくしろよ」
凛子「別にグズグズなんて……」
凛子のMO「ホント文句多いし、マジでむかつく……! なんなの!」
翔琉「あれは?」
凛子「あれ、じゃわかりません!」
翔琉「檸檬だよ」
凛子「え? 持ってませんよ」
翔琉「梶井基次郎ファンじゃないのか?」
凛子「え。知ってるんですか?」
翔琉「そんなもん、常識だろ」
凛子「常識……じゃあどんな話か言ってみてください」
翔琉「精神脆弱な青年が檸檬を手に、丸善に立ち寄る、で、売り場に檸檬を置いて逃げる。檸檬が爆弾で、丸善を吹っ飛ばす想像をする。そんな話だろ」
凛子「そ、そうです……」
翔琉「今日は檸檬はなしでいいや」
凛子「立っているだけですからね。服は脱ぎませんからね!」
翔琉「なんだと思ってんだ。楽にしていればいい。適当に腰に手当てて。そう。そんな感じで。実物見るとやっぱ描きやすいわ」
凛子のMO「そう言いながら、早見翔琉は大きな画用紙に木炭で描き始めた」
凛子「あのう……」
翔琉「何だ?」
凛子「なんだかみられるのって、すごく恥ずかしいんですけど……」
翔琉「檸檬爆弾。あれでうちの部がどれだけ迷惑したか」
凛子「美術部に迷惑って……それ、私のせいじゃないですよね? 問題って何なんですか……?」
翔琉「動くな」
凛子「……ほかに部員はいないんですか?」
翔琉「喧嘩売ってるのか?」
凛子「い、いえ」
翔琉「去年、檸檬を大量に画材店に置いたことで学校にクレームが入ったんだ。通称、檸檬騒動。その罪を文芸部が嘘ついて、その結果、美術部のせいになって、色々あって、今の3年生は、受験勉強に専念するって理由で全員退部になったんだ」
凛子「え、それじゃ……」
翔琉「美術部2年は俺しかいない。自主トレ」
凛子「そんな」
翔琉「動くな」
凛子「す、すみません」
翔琉「とにかく、もう二度と、檸檬置いたりするなよ。お前の大好きな文芸部も廃部になるかもしれないんだからな」
凛子「私、知らなかったから……」
翔琉「ってか、お前、美術部入れ」
凛子「えっ……嫌ですよ」
翔琉「兼部すれば問題ない」
凛子「わ、わたしは文芸部員です。それに、絵心は皆無でして」
翔琉「つべこべ言わず、画描いてみろよ」
凛子のMO「私は早見翔琉に言われて、絵を描いた。これが私の実力だ!」
翔琉「(爆笑して)なんだよこの画。宇宙人よりひどいな」
凛子「先輩です!」
翔琉「はあ? 俺を異世界の住人にするなよ。お前どんだけ画の才能ねえんだよ」
凛子「私の中では、結構いい出来だと思いますけど……」
翔琉「画がこれだと、文章の方も、期待できないな」
凛子「私、中学校の作文コンクールで賞とってるんです! バカにしないでください」
翔琉「へえー」
凛子「私の数少ない自慢なんです!」
翔琉「鬼才は奇才を求めるか……」
凛子「なんです、それ?」
翔琉「変な才能を見せてくれてありがと。続き。やるからモデルに戻れ」
凛子のMO「約束したのだ。仕方ない。私は、もう一度、早見翔琉の前に立って、先程と同じポーズをとった」
翔琉「お前さ。さっきの話だけど」
凛子「先輩が宇宙人だって話ですか?」
翔琉「お前をうちの新入部員にしてやってもいいって話だ」
凛子「いや。私、文芸部所属なんで」
翔琉「だから掛け持ちしろ」
凛子「結構です。文芸部だって忙しいんですよ。読書会に同人誌制作だってあるんです」
翔琉「モデル続けるのとどっちがいい?」
凛子「今回で終わりじゃないんですか?」
翔琉「誰が一回限りって言った?」
凛子「え……。だ、だまされた!」
翔琉「じゃあ、お前の二度目の檸檬爆弾の件、文芸部の奴らにばらしてもいいのか?」
凛子「そ、それは困ります……! 先輩、ずるいですよ!」
翔琉「お前の画才に惚れたんだよ」
凛子「それだけは、絶対ウソですよね?」
翔琉「どうする?」
凛子「……モデル続けるのは、嫌です!」
翔琉「じゃあ、決まりだな。よろしく美術部員!」
SE 電車に揺られる。(電車内)
凛子のMO「夕方。やっと解放された私は、帰りの電車で梶井基次郎様の小説『檸檬』を読み返した。不気味な青春の葛藤……。あ、不気味なのは私も同じか……。ホントなにやってるんだろ……」
SE 電車の音、消える。
凛子のMO「翌朝。文芸部の真昼先輩と高校までの一本道で一緒になった」
真昼「菊本さん。おはよ」
凛子「真昼先輩」
真昼「今度の読書会の本、決まった?」
凛子「まだいろいろ迷っているんです。先輩は?」
真昼「私はね、武者小路実篤にしようかとおもって読んでるとこ」
凛子「そうなんですね!」
凛子のMO「反対方向から早見翔琉がやってくるのが見えた。私は思わず、真昼先輩の陰に隠れた」
真昼「早見君!」
翔琉「よっ。真昼と、その後輩」
凛子「菊本です」
真昼「早見君も、そろそろ文芸部戻ってこない?」
翔琉「俺はそのつもりないから」
凛子のMO「早見翔琉はそう言って、正門をくぐって校舎へ先に入っていった」
凛子「……あのう。あの、早見って人……」
真昼「ああ。早見君は、元文芸部員なの。去年の檸檬事件で美術部ともめた時に板挟みになって、責任感じて文芸部辞めちゃったのよ。でももう時効かな、って」
凛子「そうだったんですか……」
真昼「早見君、すごく文才あったから惜しいなって、ずっと思ってるんだけどね」
凛子のMO「そんな事情があったなんて。知らなかった。青空が嫌に眩しい、と私は思った」
SE 美術室のドアを開ける。
凛子のMO「放課後、美術部を訪れる。早見翔琉はまだのようであった。私は美術室をぐるりと見て回ることにした。無造作に石膏デッサンが並べられている。そのとなりに宇宙人と評された私の早見翔琉の肖像画も置かれていた」
翔琉「来てたのか」
凛子のMO「いきなり声を掛けられビックリした私を早見翔琉は笑った」
凛子「(ムッとして)来てやったんです!」
翔琉「今日は、石膏デッサンでもするか?」
凛子「え?」
翔琉「いい文章を書くには、観察が大事だろ。観察力はデッサンで鍛えるんだ」
凛子「は、はあ……」
翔琉「石膏デッサンからだな。好きな石膏像、選べ」
凛子のMO「そう言って早見翔琉が石膏像にかかっていた布をとった。ギリシャの神々を模した石膏像たちの登場である」
凛子「無骨な方々ですね」
翔琉「マルスとか、いいんじゃないか。しゅっとしてて」
凛子「いかにも優男って感じですね」
翔琉「お前にはお似合いだろ」
凛子「どういう意味ですか!?」
翔琉「いいから描いてみろ」
凛子「結局。言われた通り、私はマルス像を書いたけど、その精悍な顔たちからは想像できない、なんだか不気味な男の姿に仕上がった」
翔琉「傑作だな」
凛子「笑わないでください!」
翔琉「お前の眼にはそう見えてるのか。どういう世界が見えているのやら」
凛子「そんなにおかしくないですよね?」
翔琉「いや、変だ」
凛子のMO「美術部から解放され、私はようやく、文芸部にやってきた。兼部は無理だ。文芸部の部室では、真昼先輩と悠真部長が本を読んでいた」
凛子「遅くなりました」
悠真「菊本さん……」
凛子「は、はい?」
悠真「言って欲しかったな」
凛子「何をです?」
悠真「美術部も入ったって先生から聞いた」
凛子「あっ……それは……体験的なあれで」
悠真「翔琉のやつに脅された、とか?」
凛子「い、いえ。私、絵もうまくなりたくて。それで……」
真昼「でも、知ってるでしょ? うちの部と美術部は、もめてる仲だって」
凛子「なんとなくは……」
悠真「だから、入るなら、どちらかにしてもらいたいな。悪いけど」
凛子「わ、わかりました……」
凛子のMO「私は文芸部の部室をあとにして、校舎を出て、早見翔琉が出て来るのをじっと待った」
翔琉「何やってんだ? 変わった眼を持った後輩」
凛子「お疲れさまです。先輩を待っていました」
翔琉「待ち伏せか……不気味だな」
凛子「私……」
翔琉「暇なのか?」
凛子「違います……!」
翔琉「暇なら。付き合え。暇じゃないならまっすぐ帰れ」
凛子「ちょ、ちょっと待ってください!」
凛子のMO「私は早見翔琉のあとをついていった。向かった先は例の画材店の絵の具売り場であった」
凛子「あ、あのう……私……」
翔琉「新入部員。好きなの選べ」
凛子「で、でも……」
翔琉「いいから!」
凛子のMO「私は早見翔琉に当てつけのつもりで、レモンイエローの絵の具を手にとった」
凛子「その……先輩って、文芸部だったんですよね?」
翔琉「悠真か?」
凛子「真昼先輩です」
翔琉「真昼か……」
凛子「先輩も文芸部復帰すればいいじゃないですか」
翔琉「そう簡単な問題じゃないんだ」
凛子「文章、書きたいんじゃないんですか?」
翔琉「去年の檸檬騒動で、文芸部の上級生たちが悪ふざけをして店にたくさんの檸檬を置いて逃げたって話したけど。それが学校で問題になって、美術部の先輩たちも巻き添え食らって、全員辞めさせられたんだ。俺、美術部に責任を擦り付けた文芸部の先輩たちが許せなくて喧嘩して、それで文芸部からは締め出されたんだ」
凛子「そんな……! 高校生活は一度きりなんですよ! 一度きりの部活動なんですよ! もったいないですよ!」
翔琉「お前はおせっかい小母さんか?」
凛子「もったいないです!」
翔琉「とにかく、今日は、画材買うの付き合ってくれてありがとな。あっ。このレモンイエローは、お前の特別報酬だな」
凛子のMO「私はレモンイエローの絵の具を見つめた。美術部を辞めるはずだったのに、辞められないと思っている自分がいた。この感情は何だろう……」
凛子のMO「翌朝、通学路で真昼先輩と一緒になった。私は手に持っていたレモンイエローの絵の具を鞄に隠した」
真昼「美術部は、ちゃんと辞めれた?」
凛子「は、はい。もう昨日辞めてやりました」
真昼「よかった」
凛子「はい! 辞めてせいせいしました」
真昼「これからは文芸部員としてよろしくね」
凛子「あの……」
真昼「ん?」
凛子「早見先輩も文芸部に戻してあげたらいかがでしょう?」
真昼「それは……部長が許さないよ」
凛子「そんなに仲悪そうには見えませんでしたけど……?」
真昼「あの二人は中学からの親友だから。仲はいいのよ。でも、大事にしたいことが違うって言うのかしら。曲げられない二人だから」
凛子「私にはそういうの、よくわかりません」
真昼「あ。今日の勉強会までに課題図書決めないとだけど。決まりそう?」
凛子「あっ!」
真昼「昼休みまでじっくり考えてね」
凛子「は、はい……!」
凛子のMO「その時、スマホにメッセージが届いた。『急いで美術室へ来い』!?……早見翔琉め!」
走る凛子。その息遣い。
凛子のMO「私はダッシュで美術室へ向かった。そうだ。このレモンイエローの絵の具を突き返そう。そうすれば心のモヤモヤも晴れるに違いない……!」
SE 美術室のドアを開ける。
翔琉「廊下、走ると転ぶぞ」
凛子「呼び出したのは先輩ですよね?」
翔琉「まあな」
凛子「急に呼び出さないでください。私、暇じゃないんです」
翔琉「画。できた」
凛子「本当ですか?」
凛子のMO「早見翔琉がそう言って見せた、絵は、檸檬を持った、いかにも腹黒そうな顔をした私の姿であった」
凛子「これ、私……ですか?」
翔琉「モデルだからな」
凛子「こんな不細工じゃありませんし、こんな悪そうな人間でもありません!」
翔琉「ありのままを描くのが芸術じゃないからな」
凛子「じゃあ、何を描いたんです?」
翔琉「内面」
凛子「私、こんな根性曲がってません!」
翔琉「檸檬爆弾仕掛けるくらいだから。かなり曲がってるだろ」
凛子「全く……。でも、ちょっと感動しました。さすが先輩。美術部です。上手いです」
翔琉「まあな」
凛子「あの……先輩」
翔琉「ん?」
凛子「私……美術部辞めます!」
翔琉「いきなりだな」
凛子「私、考えました。考えた結果、高校生活、自分のやりたいことやりたいので」
翔琉「結局、文芸部の言いなりか」
凛子「違うんです……。私、姉が文芸部で青春を送ったっていう話、聞いてて、高校生活は文芸部だって、ずっと憧れだったんです。私の青春は文芸部にあるって。だからレモンイエローの絵の具、お返しします」
翔琉「わかった。もう何も言わない。檸檬爆弾の件も二度と持ち出さない」
凛子「約束ですよ」
凛子のMO「その時、真昼先輩が入ってきた」
凛子「ま、真昼先輩!」
真昼「菊本さん。ここで何してるの?」
凛子「ええと……先輩こそ……」
真昼「美術部辞めたって、嘘だったの?」
凛子「ち、違うんです……これは……」
翔琉「真昼、そんなにコイツを責めるなよ」
真昼「早見君!」
翔琉「コイツはただ律義に貸した画材を返しに来たんだよ。レモンイエローの。なっ」
凛子「は、はい……」
真昼「そう。じゃあ菊本さんは文芸部の部室に戻ってて」
凛子「真昼先輩は……?」
真昼「早見君と、話あるから」
凛子「し、失礼します!」
凛子のMO「私はその場の空気に耐えられず、慌てて美術室を出た。でも、なんだか心がざわついていた。なんだろうこの感覚……」
SE 学校のチャイムの音。
凛子のMO「お昼休みになった。私は文芸部の部室を訪ねた」
凛子「失礼します」
悠真「菊本さん。課題図書は決った?」
凛子「悩んだんですけど、『檸檬』にしようかなって思ってます」
悠真「梶井基次郎。定番だね。でも新入部員には挑戦し甲斐があっていいかもね」
凛子「悠真先輩。変なことを聞きますけど、真昼先輩って、早見先輩の事……」
悠真「『得体のしれない不吉な塊が私の心を終始おさえつけていた』」
凛子「えっ……」
悠真「『檸檬』の冒頭。ちゃんと読み込んでこないと、僕と真昼は中途半端な奴には手厳しいからね」
凛子「はい……」
凛子のMO「放課後、正門前で、私は真昼先輩を待ち伏せした。一日ずっとくすぶり続けた感情のはけ口を探していた……」
凛子「真昼先輩!」
真昼「あっ。菊本さん」
凛子「……あの。今朝。早見先輩と……」
真昼「気になる?」
凛子「え?」
真昼「告白したの」
凛子「こ、告白!?」
真昼「ウソ。早見君の事、気になるの?」
凛子「ぜんぜん全く世界がひっくり返っても気になんて……そんな」
真昼「そう」
凛子「そうですよ……からかわないでくださいよ」
真昼「じゃあ、言うけど。美術部、廃部になることが決まったの」
凛子「えっ!?」
真昼「今度はホント。先生から聞いて。速水君に知らせに来たの」
凛子「ホントに本当なんですか!?」
真昼「私たちには関係のないことだけどね」
凛子「あ、あの! わ、私、忘れ物を思い出しました! ここで失礼します!」
凛子のMO「私は、真昼先輩にお辞儀して、急いで走り出した。そんな。美術部が廃部だなんて。そんなことになったら、早見翔琉は、早見翔琉は、きっと悲しむ!」
走る凛子の息遣い。
凛子のMO「旧校舎の長廊下を走って、美術室のドアを開けた」
SE ドアを開ける音。
翔琉「足音でわかるのな。お前だって」
凛子「なに冷静なこと言って」
翔琉「なんだよ」
凛子「廃部になるってどういうことなんですか?」
翔琉「お前、情報早いな」
凛子「どういうことなんです!?」
翔琉「新入部員が入らなかったら、活動休止中の部活はそうなる決まりなんだよ」
凛子「じゃあ……私のせい? 私のせいですか?」
翔琉「いや。お前のせいじゃない」
凛子「でも。私がいれば! 私が!」
翔琉「最後に。いい画がかけてよかった」
凛子「……受け入れるんですか!? 戦わないんですか!? そんなの先輩らしくないですよ! 戦ったんじゃないですか? 去年は! 檸檬爆弾!」
翔琉「はあ?」
凛子「だって……先輩はなんていうか、こんなことに屈しない人っていうか……」
翔琉「文芸部のお前には関係ないだろ!」
凛子「戦ってください!」
翔琉「もう決まったことだから。じゃあな」
凛子「逃げるんですか!?」
翔琉「俺、もう戦うとかいいんだ」
凛子のMO「私を残して、早見翔琉は美術室を去って行った。残された私は、一人、彼の描いた絵を見つめた。檸檬を持った腹黒い私の姿がそこにあった」
凛子「『得体の知れない不吉な塊が私の心を終始おさえつけていた』……」
凛子のMO「私は、覚悟を決めた。そして翌日。文芸部の部室へ向かった」
凛子「菊本凛子、美術部に入ります!」
悠真「美術部は廃部になるんだよ?」
真昼「昨日言ったこと気にしてるの? 美術部行くなら、前にも言ったけど、うちの部を辞めてもらうことになるし。それにあなたが入っても、廃部は……」
凛子「決定なら覆して見せます! 私、美術部に入りたいんです! だから文芸部、辞めます!」
走る凛子の息遣い。
凛子のMO「私はどうかしている。どうかしている。でも。だけど。そうなんだけど。とにかく走って。全力ダッシュで美術室を目指した」
凛子のMO「美術室では、早見翔琉が、石膏像に布をかけていた」
凛子「早見先輩!」
翔琉「お前……何しに来た?」
凛子「先輩が心配だったもので」
翔琉「何の心配だよ。俺はお前の孫か?」
凛子「とにかく心配だったんです!」
翔琉「憧れの青春はいいのか? 文芸部が逃げてくぞ」
凛子「よくないですけど、でも、いいんです」
翔琉「意味わかんねえ」
凛子「私を美術部員にしてください」
翔琉「はあ? ふざけてんのか?」
凛子「退部は撤回します!」
翔琉「お前な!」
凛子「その代り、文芸部を退部してきました!」
翔琉「言うことコロコロ変わるヤツなんか信用できるか」
凛子「でも。私が入れば、廃部回避できますよね? できるんですよね? 戦えますよね?」
翔琉「それは……」
凛子「私、美術部に入ります。先輩と。一緒に絵を描きたいんです!」
翔琉「どこをどう考えたら、そうなる……? バカかお前!」
凛子「頭は悪くないです」
翔琉「そういう意味じゃねえよ。俺は……このままでいいんだ。沈む泥舟でも……。お前まで一緒に乗ることは……」
凛子「私も乗せてください。泥船でもなんでもいいです!」
翔琉「お前、変だ」
凛子「私、変なんです!」
翔琉「はあ?」
凛子「とにかく。これで美術部は存続決定ですね!」
凛子のMO「そう言って、私は石膏像にかかった布をとった」
凛子「私、沢山練習するんで。いっぱい教えてください!」
翔琉「お前、やっぱ、変」
凛子「今日は、誰を書こうかなー」
翔琉「お前なあ」
凛子のMO「そう言って、早見翔琉は、棚から油絵の具の入った道具箱を取り出して、私に持たせた」
翔琉「これ」
凛子「え?」
翔琉「お前にやる」
凛子「えっ、そんな! いただけませんよ!」
翔琉「部員が、絵を描く道具箱の一つも持ってないんじゃあ、可笑しいだろ」
凛子「先輩……」
翔琉「それともう一つ」
凛子のMO「そう言って、彼は自分の道具箱からレモンイエローの絵の具を取り出して私に渡した」
凛子「これ……」
翔琉「お前色の絵の具だから。持ってろ」
凛子「あ、ありがとうございます!」
凛子のMO「私は手のひらの中の、レモンイエローの絵の具を見つめた」
SE 校舎に響くチャイムの音。
凛子のMO「そうして、早見翔琉と、一緒に絵を描くことを決めた、帰り道。真昼先輩が私たちを、いや、私を待っていた」
凛子「真昼先輩!」
翔琉「なんか用か?」
真昼「私、菊本さんに話が合って」
翔琉「そうか。じゃあ、菊本。また明日な」
凛子「は、はい……!」
凛子のMO「早見翔琉が去ると、真昼が見たこともない表情で私をにらんでいた。私はただ困惑していた」
真昼「あなた、まさか早見君のこと好きなの?」
凛子「えっ……」
真昼「どうなの?」
凛子「ち、違います……! 全然全くそんなんじゃありません!」
真昼「じゃあ、同情?」
凛子「そういうわけでもないですけど……」
真昼「だって、可笑しいじゃない。あなた、あんなにうちの部に入りたがってたのに」
凛子「それは……よく考えた結果です」
真昼「でも、あなたのせいで……早見君は行き場を失ったままになったのよ!」
凛子「どういうことですか?」
真昼「彼のいるべき場所はあんな埃まみれの美術室じゃない! わかるでしょ? 早見君。本当は文芸部に戻りたいの」
凛子「……それは……間違うと思います」
真昼「……違うって?」
凛子「早見先輩。画を描くの、すごく好きなんです。真昼先輩は見たことあるんですか!? 早見先輩の画。それはそれは上手なんですから!」
真昼「あなたね……」
凛子「私は美術部の早見先輩についていきます。そう決めたんです!」
真昼「変な正義感はやめて、文芸部に戻ってきなさい。それがあなたのため。早見君のため。もう一度、よく考えてみるのね」
凛子のMO「真昼先輩は去って行った。私は足が震えていることに気づいた。なんなんだ。この感じ。夕焼け空が真っ赤に泣いているように染まっていた」
凛子のMO「翌日。私が美術室の掃除をしていると、悠真先輩が訪ねてきた」
悠真「菊本さん。本当に美術部員になったんだね」
凛子「悠真部長、すみません……」
悠真「僕はいいけど。菊本さんはそれで本当にいいの? 文芸部で活動することが夢だって言ってたから」
凛子「すみません……」
悠真「いや、いいんだ。翔琉は?」
凛子「まだ、みたいですけど……」
悠真「そっか……」
凛子「あの……何か?」
悠真「いや。真昼が今日休んでて、何かあったのかなって。翔琉ならわかるかなって」
凛子「早見先輩と真昼先輩って親しいんですか?」
悠真「まあ……そうだな」
凛子「付き合ってる、とか?」
悠真「そうじゃないとは思うけど……」
凛子「どういうことなんですか?」
悠真「いや。俺、余計なこと言ったね。忘れて」
凛子のMO「そこへ早見翔琉がやってきた」
翔琉「悠真。珍しいな」
悠真「廃部、撤回になるみたいだな」
翔琉「お前も、情報早いな。ここにいる、元文芸部員・現、新人美術部員のおかげだ」
凛子「恐縮です……」
悠真「そうか……」
翔琉「で? どうしたんだ?」
悠真「いや。様子見に来ただけだ」
翔琉「御覧の通り。ちゃんと活動してるから安心しろ」
悠真「わかった。今度またゆっくり話そう」
凛子のMO「悠真先輩は去っていった」
翔琉「何しに来たんだ。アイツ」
凛子「あの! 早見先輩。つかぬことをお伺いしますが……」
翔琉「なんだ? 嫌な予感しかしないな」
凛子「その……真昼先輩の事、好きなんですか!?」
翔琉「はあ? 悠真が言ったのか?」
凛子「ち、違いますよ!」
翔琉「嘘が下手すぎ! アイツまだ」
凛子「でもでも。ど。どうなんですか!?」
翔琉「真昼のこと好きなのは、悠真だ」
凛子「え。じゃあ、早見先輩は、真昼先輩のこと好きだけど、親友の悠真先輩の為に、わざと嫌いなフリを? それで美術部やってるんですか?」
翔琉「どうしてそうなるんだよ。お前の頭の中はカオスか?」
凛子「どう考えても。そうなりますよ」
翔琉「頭、恋愛に汚染されたか? 脳内バイオハザードだな」
凛子「こんなこと……私だって、空気読むくらい簡単にわかります」
翔琉「……美術部がなくなったら、俺の居場所がなくなるところだった。だから、お前が戻って来てくれてよかったと思ってる」
凛子「やっぱり三角関係のもつれ!」
翔琉「違うって言ってるだろ!」
凛子「じゃあ、私が先輩の事、好きって言ったら、先輩どうします!?」
翔琉「丁重にお断りだ。お前みたいな根性曲がったやつ!」
凛子「根性は曲がってません!」
翔琉「話は終わりだ。黙って片付けするぞ!」
凛子のMO「本当はこんなこと言いたかったわけじゃないのに」
凛子のMO「私は帰りに、花屋で今度描く絵の題材にミニヒマワリを買った」
凛子「好き、嫌い、好き、嫌い、やっぱ嫌い、大嫌い……! ああ、もうわかんない!」
凛子のMO「翌日。真昼先輩と通学路で鉢合わせた」
凛子「真昼先輩!」
真昼「菊本さん……。あなた。戻ってくる気はもうないのね」
凛子「……はい」
真昼「その言葉がきけてすっきりした」
凛子「ごめんなさい……」
真昼「翔琉はあなたには渡さないから」
凛子のMO「ねじれていく糸のもつれがほどけなくなるように、私の心はぐちゃぐちゃに絡まっていた……」
真昼「私、早見君が好き」
凛子のMO「放課後。美術室の中から、そんな言葉が聞こえてきて、私はドアの前で立ち尽くした。間違いない。真昼先輩が、早見翔琉に告白しているんだ……」
真昼「私、早見君が好きなの……!」
翔琉「ごめん……前も言ったけど、俺はそういう気ないから」
真昼「私、文芸部、辞めてもいい! それで私も美術部入る。それなら問題ないでしょ?」
翔琉「お前がそんなことしたら、俺が美術部辞める」
真昼「……そんなに私の事嫌いだったの?」
翔琉「俺は……別にそんなんじゃねえけど」
真昼「じゃあ、あの子?」
翔琉「菊本の事か? あいつは何の関係もないだろ」
真昼「もういい!」
凛子のMO「隠れる場所のない私は、飛び出してきた真昼先輩と鉢合わせた」
凛子「真昼先輩……」
真昼「立ち聞きなんて最低!」
凛子のMO「私は、真昼先輩に平手打ちされた。なんだか。それは仕方ないことのような気がした……」
翔琉「お、おい、菊本……大丈夫か?」
凛子のMO「早見翔琉が私に駆け寄る」
凛子「私、美術部辞めます……」
翔琉「お前はオオカミ少女か?」
凛子「私、本気です!」
翔琉「……」
凛子「自分でもこんな状態、嫌なんです。わけわかんないんです。心がグチャグチャして。苦しくて。でも、考えるのやめれなくて……だから辞めます!」
翔琉「辞めたいなら辞めろ。俺は止めない」
凛子「……辞めます! どうぞ勝手に廃部にでもなってください!」
翔琉「お前な……」
凛子「私、もうここにはいられません!」
凛子のMO「早見翔琉の顔がどんな表情をしていたのか。見ることができなかった。でも、私が、きっと壊してしまったんだ。早見翔琉と、真昼先輩と悠真先輩の三角形を。バランスを。私が……私さえいなければ!」
走る凛子の息遣い。
凛子のMO「私は、レモンを買って、画材店へ突撃した。そして、檸檬爆弾を絵の具売り場にセットする。ダッシュで逃げる。店の外に出る。ドカーン! 全てを吹き飛ばす爆発が起こった。そんな気がした」
SE 爆発音。
凛子「全部、壊れちゃえばいいんだ……!」
そして、静寂。
凛子のMO「私は泣いていた。悲しくて、苦しくて、そして恋しくて……」
翔琉「菊本!」
凛子のMO「声の方を振り返る。そこに早見翔琉が、手に檸檬を持って、私の檸檬を持って、息を切らして、立っていた」
凛子「早見先輩……!?」
翔琉「これ。仕掛けたの、お前だろ」
凛子「……その檸檬」
翔琉「また問題を起こすつもりだったのか?」
凛子「わ。私じゃありません!」
翔琉「お前の他に誰がいる!?」
凛子「それは……」
翔琉「正直に言ったら、返してやる。お前か?」
凛子「……そ、そうですよ。私が犯人です。私が……」
翔琉「……なんでだ? なんでこんなこと?」
凛子「また問題になればいいって! そうなれば、早見先輩は、真昼先輩のところに行ける……そう思ったから……」
翔琉「バカかお前」
凛子「……私、何が正解か、グチャグチャで」
翔琉「お前やっぱりバカだな」
凛子「そんなにバカバカ言わないでください」
翔琉「俺は、お前が心配だ」
凛子「なんなんですか、それ」
翔琉「心配するのもダメなのかよ」
凛子「だって……。早見先輩こそ、根性曲がってるんじゃないですか?」
翔琉「お前こそ、結局何がしたかったんだよ」
凛子「私はただ……(超小声で)早見先輩の事が……」
翔琉「はあ? 聞こえねーよ」
凛子「好きです! 好きなんです!」
凛子のMO「そう叫んだ私の口を、早見翔琉は、檸檬でふさいだ」
翔琉「お前、少し黙れ!」
凛子「な、な、何てことするんですか!?」
翔琉「バカな宇宙人がうるさいからな」
凛子「……早見先輩」
翔琉「帰るぞ」
凛子のMO「そう言って、早見翔琉は、檸檬を私の手に置いた」
凛子のMO「私は両手で檸檬を包んだ。檸檬は、ほんのり冷たくてひんやりしていた」
凛子「翔琉先輩!」
翔琉「ん?」
凛子「いきますよ」
凛子のMO「歩き出した彼に向かって、私は、私の心を届けるように、檸檬を投げた!」
【終】
檸檬は恋をまだ知らず ササキタツオ @sasatatsu
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